改造詩人参拾陸号「目が覚めたら消えるもの」
アリゾナを囲む大蛇の口から吐き出されたシスターを巡って
バチカンとコスプレマニアの戦争が始まる
一方、実家暮らしのOLは
枯れることのないサボテンにいいかげんうんざりしつつあった
売れない役者の男は、アルコールでぼやけた意識の中
知らない人間と話しているときが一番うまく芝居をしていると思う
知らない男に求婚されたゴスロリ女は
一重まぶたに人生を呪いながら
「私は誰にも愛されない」と嘆いた
冬の朝の切るような冷たさに
徹夜明けの三文文士は、未来の嫁を思うが
スニーカーに空いた穴に吸い込まれてしまった
ナイフと血のロマンスに酔った女子高生の一本の髪の毛が
多摩川の水面に乗り
ぱきっとした青空を眺めながら
東京湾に流されていく
泥まみれの蟹は説明のつかない苛立ちにまかせて、汚い泡を吐く
泡の表面を滑る銀河に
一つの星が生まれた
その星の名前は「ないものねだり」
幾度目の輪廻から目覚めた迎えた少女は
母親のやかましい声が聞こえてくるそのときまで
ノルウェージャンフォレストキャットと戯れる夢を見る