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ソーシャルワーク専門職のグローバル定義

ソーシャルワークは実践に基づいた専門職であり学問です。ソーシャルワークの任務や原則を国際的に定めたものが「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」です。

<ソーシャルワーク専門職のグローバル定義>

ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。

社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。

ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。

この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。

(IFSW;2014.7)


世界中のソーシャルワーカーには、ソーシャルワークのグローバル定義に表現された価値や原則を守り、高め、実現する責任があります。定義は、ソーシャルワーカーたちが積極的にその価値やビジョンに関与することによってのみ意味を持ちます。

2014年に改定されるまでの経緯

現行の定義は、2014年メルボルンで開催されたIFSW(国際ソーシャルワーカー連盟)とIASSW(国際ソーシャルワーク教育連盟)の総会で採択されました。

前の定義が2000年にモントリオールで採択されたとき、10年後の2010年に改定する付帯決議がなされていました。

しかし、急速なグローバリゼーションが社会、経済、環境等へ多大な影響を与えたためソーシャルワークの枠組みにも大きな転換が求められたこと、また、各地域から「社会変革に対する焦点が強すぎる/弱すぎる」、「西欧主義、個人主義に隔たりがあり人権の視点が必要である」、「先住民に関する理論の評価がなされていない」などの批判があったため、当初の予定より遅れた2014年の改定となりました。

ソーシャルワーク専門職の中核となる任務・原則・知・実践についての概念

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義には、ソーシャルワーク専門職の中核となる任務・原則・知・実践についての概念が示されています。

中核となる任務は、社会変革、社会開発、社会的結束、人々のエンパワメントと解放であり、中核となる原則は、社会主義、人権、集団的責任、多様性尊重です。

また、ソーシャルワークは複数の理論・学問分野をまたいだ知識・価値・技術の上に成り立つ科学的な活動であり、従来のような特定の実践環境や西洋の諸理論だけでなく、過小評価されてきた世界中の先住民たちの声に耳を傾け学ぶことにより、地域・民族固有の知を認めるものと表現されています。

ソーシャルワークの実践については、人々が主体的に生活課題に取り組みウェルビーイングを高められるよう、人々に関わりながら、人々やさまざまな構造に働きかけるものとしています。

世界各地における定義の展開

なお、ソーシャルワーク専門職のグローバル定義は世界各国および各地域で展開してもよいとされています。

2016年には「アジア太平洋地域における展開」が採択されました。

地理的・文化的・人種的にも多様で、経済的格差や環境保全における問題などの諸課題を内包するアジア太平洋地域では、人々のストレングスとレジリエンスが繰り返し示されています。

アジア太平洋地域のソーシャルワーク専門職は、人権と尊厳が守られることにより適切な社会的保護が提供されることを保障するためのケアと共感、信仰、スピリチュアリティまたは宗教の重要性の容認と様々な信念体系の尊重、多様性の賞賛と平和的な交渉、ソーシャルワーク実践におけるクリティカルなアプローチと民族固有の知・ローカルな知と営みの肯定、環境保全において革新的で持続可能なソーシャルワークと社会開発実践の推進を重視するとされました。

日本における展開」は2017年に採択されました。

<ソーシャルワークのグローバル定義>「日本における展開」

ソーシャルワークは、人々と環境とその相互作用する接点に働きかけ、日本に住むすべての人々の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を実現し、ウェルビーイングを増進する。

ソーシャルワークは、差別や抑圧の歴史を認識し、多様な文化を尊重した実践を展開しながら、平和を希求する。

ソーシャルワークは、人権を尊重し、年齢、性、障がいの有無、宗教、国籍等にかかわらず、生活課題を有する人々がつながりを実感できる社会への変革と社会的包摂の実現に向けて関連する人々や組織と協働する。

ソーシャルワークは、すべての人々が自己決定に基づく生活を送れるよう権利を擁護し、予防的な対応を含め、必要な支援が切れ目なく利用できるシステムを構築する。

高度経済成長を経て世界に先駆けて少子高齢社会を経験した日本の社会は、個人・家族内の問題に留まらず政治・経済にいたるまで多様な課題に直面しています。

このような社会情勢の中で、日本におけるソーシャルワークが重要視する取り組みとして、人々と環境とその相互作用する接点に働きかけ、人々の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を実現しウェルビーイングを増進することと、差別や抑圧の歴史を認識し、多様な文化を尊重した実践を展開しながら平和を希求することが示されました。


まとめ

「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」は、2014年に国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)および国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)のメルボルン総会において採択された。

グローバル定義では、「ミクロな個人の問題解決」よりも「マクロな社会変革」を強調しており、「多様性の尊重」・「西洋中心主義・近代主義への批判」などがその特徴となっている。

ソーシャルワーク専門職の中核となる任務として、「社会変革・社会開発・社会的結束の促進、および人々のエンパワメントと解放」を位置づけている。

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義の「アジア太平洋地域における展開」・「日本における展開」がある。


(専門)ソーシャルワークの基盤と専門職


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