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コラム:ひな祭りの時に女の子の家で雛人形を見た話

経営者とエンジニアの属性をもつ私が、精神分析を独学で学ぶ中で思い出した実体験に関して書いています。

小学校3年生の時に、席が隣の女の子の家に、友達と雛人形を見に行った。たぶん、誘われたか、その女の子が雛人形の話をして私が興味を持ったのだと思う。小学校の時の私は、隣になった女の子とよく喋って仲良くなりがちだった。
確かに、大変立派な雛飾りで、7段くらいあって牛車や籠など道具もしっかりしていて、見ごたえがあった。お母さんが、お菓子やお茶を持ってきてくれて、たしか4人くらいでワイワイ見た。

次の年もひな祭りの時に、雛人形をその子の家に見に行くことになった。どんなきっかけだったか思い出せない。呼ばれたのは私一人だったが、私は本当に雛飾りを見るのが気に入っていて、自分一人が呼ばれたことに何の疑問も持たずに、精巧な作りの道具や、よくできた人形たちを夢中で見ていた。

日本人形の顔は抽象化されていて漫画みたいなのだが、道具や着物は本物そっくりで、目を閉じるとその間だけ動いてそうな不思議さがあった。

そんな思いに浸っていて、ふと振り向くとその女の子は、雛飾りの正面より少し右に正座してこちらを見ていた。私を見ていたのか、雛飾りを見ていたのか分からないが、私は瞬間的に、雛飾りにイタズラしないか見張っている、と思ってしまった。あまりに熱中して見ていたので、お飾りを手に取っていたかもしれない。少し恐縮した気持ちになってしまって、出されたお菓子とお茶を頂いて帰った。

時々、あの雛飾りの置いてある和室で私が夢中で雛飾りを見ていて、それを少し遠くから見ている女の子の情景を思い出す。3月の昼間の薄曇りの光が、女の子のいる部屋だけにあって、雛飾りが置いてある部屋は薄暗かった。私はそちらにいた。

女の子は何を思っていたのだろう。時々思い出すのは、複雑な気持ちに触れた感覚として残っているのかもしれない。それは今も消化できていない。


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