繊細さんVS賞味期限
繊細な私が料理を作る際、1番重要視しているのは食材の賞味期限だ。
食材が傷んでさえいなければ、味は二の次三の次である。薄ければ醤油をかければいいし、濃かったら食後に水を飲めば良い。
もちろん夫にしてみれば「美味しいものを食べたい」と思うだろうが、誰が何と言おうと私の方程式は【美味しいもの<お腹を壊さないもの】なのである。
それに、私が作る料理は「褒められるほど美味しくないが、怒られるほど不味くはない」ので、これ以上の事を求められると一気に疲弊して自律神経がぶっ壊れてしまう。
自分が作った料理でお腹を壊したくない私は、魚や肉を焼きすぎる傾向がある。
新婚時代、夫の弁当に焼き魚を入れたところ、焼きすぎて魚が硬くなり「お箸が折れるかと思ったよ」と、笑われた事がある。
笑って済ませてくれる優しい夫で本当に良かったと思いつつ、それからは弁当に魚を入れる時は、焼き魚をほぐしたものを入れる事が多くなった。
魚をほぐして米に乗せてしまえば硬さなど感じないし、夫にしてみれば「骨も抜いてくれて食べやすいな」と、妻の愛情を感じることもできて一石二鳥だ。
肉を調理する時は「今日が賞味期限の肉」でも鼻を近付けて犬のようにまんべんなく臭いを嗅ぎ、少しでも変だなと思ったら使わない。
厚めの肉やハンバーグを作る時は、登別温泉の地獄谷のごとくボコボコと煮込む。
「煮沸消毒」という調理法は、私にとって安心安全以外の何物でも無い。
私の父はよく「腐りかけの肉が1番旨い」などと言っていたが、私にしてみれば全く理解できない。
腐りかけの肉を食べる位なら、水をがぶ飲みして早々に寝た方が百倍マシだ。
仕事が忙しくて休めない時期や大切なイベントがある時は、数日前から寿司や生ものを食べないようにするなど徹底している。
だが結局の所(繁忙期を無事に乗り越えれるだろうか)などとクヨクヨ心配し、どちらにしても胃が痛くなって漢方薬を飲んだりするので【病は気から】という言葉は、昔の人が私のために遺してくれた金言であろう。
そんな私は数年前にフト、盲点の食材に気付いてしまった。
それは「調味料」である。
調味料類は賞味期限が長いので、期限中は冷蔵庫に入れておけば大丈夫だと思い使っていたのだが、その日たまたま目にした商品の裏面に小さな文字で書いてある【開封後はお早めにお使い下さい】の言葉に、私の頭は一気に混乱した。
…この「お早めに」とは、具体的に何日間もしくは何週間を示しているのだ?
人の口に入るものなのに、こんなにも曖昧でフワッとした指示で良いのか?
こんな大切な注意書きは、商品名の横に太字で大きく書くべきではないか!老眼の人とかなら、絶対気付かんぞ!
一体どうゆう事なのか説明してくれメーカーの皆さま!…と1人で紛糾した私は、すぐさまネットで【調味料】【開封】【賞味期限】【早めとは】などの文言を検索しまくった。
結果的に、ソースやケチャップ類は1ヶ月前後で食べきれば体に不調をきたすことは無さそうだと判明。
ようやく落ち着きを取り戻した私は、素晴らしいアイディアを思い付いた。
それは【開封した日】を、調味料に書いておくことである。
そうすればソースやケチャップを使うたびに(これ、いつ開けたやつだっけ?)と不安にならずに済むし、1ヶ月前後をめどに使いきる事で調味料を無駄に廃棄しなくて済む。
そして「この量は、我が家は一ヶ月で使い切らないな」と分かれば、次からは小さいサイズの商品を選べば良い。
こんなにも簡単で合理的な方法は、全人類に対して通達し、義務化するべきではないかと私は思う。
ちなみに、冷蔵庫に100均のマグネット付きの小物入れをセットし、そこに油性ペンを一本入れておけば、開封したその場で書き込めるので非常に便利である。
冷蔵庫内に「開けた日付」が書かれた調味料が並ぶ光景を見るたび、私はなんて賢い主婦なんだろう…と、少しだけ自画自賛している。
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