見出し画像

開放弦の響きは神からの贈り物

「開放弦はなるべく使わない方が良い」とよく言われますよね。
それって本当でしょうか?
開放弦を使うメリットとデメリットです。

メリット
楽器の構造上、ナットに直接振動が伝わるので最も響きが強い
押弦した場合は指が振動を吸収してしまいます。
現長を最も長く確保できるので最も響きが強い
振動部位が最も長いのでネックから駒まで全てを振動させられます。
運指をラクに出来る
全く押さえないので運指がラクできますよね。
離した瞬間に次の音への準備時間が稼げます。
音程が正確
正しく調弦されている事が前提ですが、最も正確な音程は開放弦です。

デメリット
ビブラートが掛からない
掛ける方法が無い訳では有りませんが、押弦している場合と比べたら
ほとんど掛かりません。
響きが良すぎて悪目立ちする
押弦している音に比べて響きが良すぎるというのは
音の繋がりが悪くなり、開放弦の音だけ浮いて悪目立ちしてしまいます。
音が裏返る
E線で起きる現象ですが、開放弦の音は裏返りやすいです。

メリットとデメリットの両方ありますが意外にメリット大きくないですか?
バロック奏法では可能な限りローポジションと
開放弦を多用し弦長を確保した響きを優先します。
バロック時代はそもそもビブラートを掛けないです。
E線にもスチールがほとんど使われていなかった時代なので
裏返りもなかったでしょう。
肩当ても顎当ても無かった時代なのでポジション移動も少なく
指板も短かったのでハイポジションはあまり使われていませんでした。
ロマン派になるに従いハイポジションを多用する様になりますし
ビブラートを深く掛ける様になります。開放弦を使われるのも減りました。
またアイリッシュやブルーグラス等のジャンルの
フィドル奏法でも開放弦は意図的に多用します。
開放弦の音を鳴らしっぱなしで伴奏とし
隣の弦で重音としてメロディを弾く事が多いからです。
またビブラートを掛けない開放弦多用のぶっきらぼうな弾き方が
民族舞曲のような曲調では相性が良かったりする場合もありますよね。

要は曲調や時代に合わせ弾き方を変えるので
開放弦が善なのか悪なのかはケースバイケースなのですが
私は時として積極的に開放弦を使う判断をする場合があります。
速いパッセージ内で戦略的に利用する
開放弦を使っている間で時間を稼ぎに事前に跳躍をしておいたり
移弦を済ませておく場合です。
音程感覚をリセットする
長い時間、ハイポジションで高音域を弾いていると
音程感覚が少しずつ高くなっていきます。コレは弦楽器の宿命で
少し高めに取らないと響きが不自然になってしまうのです。
ピアノも高い弦は少し高め、低い弦は少し低めに調弦されます。
コレをインハーモニシティ(不調和度)といいますが
長くなるので、この説明は別の機会にいたします。
このズレを時折、開放弦を敢えて織り交ぜる事で修正しています。

とはいえ開放弦の響きが良すぎる事をデメリットととらえて
他の響きの悪い音の方に合わせるというのはマイナス思考だなと感じるので
他の音の響きを開放弦に近づけていく努力をするプラス思考で行きたいな
という気持ちもあり意図的に開放弦を使う場面も有ります。
え?それ開放弦使わなかったら移弦無しで弾けてむしろラクじゃない?
っていう場面でも敢えて使う事もあります。
私の師匠の言葉です。「開放弦の響きは神からの贈り物なんだよ

いいなと思ったら応援しよう!