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第13回:ちょっぴり残念なお知らせ・・・万能の店舗BGMはありません

前回、アップテンポのBGMを再生した日に比べてスローテンポのBGMを流した方が32%の売上アップを記録した、というお話をしました。


「お店のBGMで売り上げアップ!イイネ~!じゃあ万能のBGMってある・・・?」

残念ながらありません。ソニック・アーキテクトのような専門家が「お店や施設全体の音の環境を科学的に構築する」しかないのです。

そうすることで、お客様の滞在時間が長くなり、売り上げアップに貢献できます。なぜでしょうか?

サウンド・スケープという言葉があります。空間には様々な音があるということ。

逆に言うと、この地球上に無音の場所は人工的に創らない限り存在しません。人の声、歩く音、低周波を発する機器、BGM、館内放送、調理音、動物の鳴き声、波の音、風の音、工事の音、電車や車の音。筆者の独身独居のアパートにしたって、冷蔵庫が「ぶーん。」と言ったり、お風呂場の乾燥機の音がしていたり、肉球がついているというのになぜか猫がスタスタ歩く音もしますし、お風呂を沸かせばお風呂自ら「♪お風呂が沸きました。」と教えてくれるし、インコだって歌いもすれば喋りもする。外からは首都高を車が走る音が漫然と聞こえ、公園で子供たちが遊ぶ声が聞こえ、隣人に宅配便が届けられた音がする。

わたしたちは様々な音に囲まれているのです。

騒音、雑音、心地よい音。

ソニック・アーキテクトは、空間に存在するあらゆる音やサウンドを改善し、有効活用します。オフィス、商業・自治体施設、飲食店、交通機関、工場、病院など空間に存在する複数の音やサウンドを分析・適切に設計し、居心地良い空間を創り、その場所の価値を高めるご支援をします。

というわけで、一口にBGMのテンポが遅ければ良いとか、速ければ良いとか、どんな種類の音楽を流せばよい、とかいう単純なお話ではないのです。

こんな具体例をご紹介しましょう。

バロック音楽がバッチリ効くとき。

たとえばある酒屋さんで(注¹)BGMの種類でお客様の購入金額がどう変化するか調査した研究があります。バッハのようなバロック音楽が流れていた日はそうでない日よりお客様のお店での滞在時間が長くなり、より高価なワインが売れたそうです。Jazzでもなく、シャンソンでもなく、モーツァルトでもなく、オペラでもなく、バロック音楽なのだそうです。ここのポイントは、「安いワインがたくさん売れた」ではなく「いつもより高い価格帯のワインが選択された」です。バロック音楽が店内をリッチな雰囲気の空間にし、お客様の心もリッチな感覚に導く「プライミング効果」がばっちり効いた、というわけですね。

じゃあ、レストランでもバロック音楽を流しましょうか?

いいえ、ちょっと待ってください。

期待した効果はそれじゃあ得られないかもしれませんよ。次回はレストランでのシチュエーションを少し解説してみますね。

(注¹)Areni, C.S. and Kim, D. (1993). The influence of background music on shopping behavior : classical versus top-forty music in a wine store. Advance in Consumer Research. 20. pp.336-340. 


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