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第21回:うるさいレストランはリスク食堂?

筆者はSonic=音は機会やチャンスにもなりうる、マネタイズの手段として活用もできるというお話を継続してお伝えしつつも、前回の投稿では、Sonicは形容詞であり、機会やチャンスだけではなく、Sonic Risk、Sonic Issueとしてリスクや課題、コストにすらもなりうるのだというお話をいたしました。

本日はその具体例をご紹介しましょう。

BGN(Background Noise):高バックグラウンドノイズ空間は快適ではないのでビジネスチャンスを失うことがある

法令に触れるほどの高デシベルではないものの、ヒトは不愉快なノイズに取り囲まれています。例えば騒がしいレストランっていかがでしょう?

ヒトが円滑に会話をできるBGNレベルは55-65デシベル(シャワーの音程度)ですが、今流行りのレストランのノイズはひどい場合、80-90デシベルにもなります。90デシベルって工事現場レベルです。

工事現場レベルの騒音の中でどんなに美味しいお食事が出てきたとしても、楽しめませんよね。ですから、すでにニューヨーク、ロンドン、ロサンゼルスなどではグルメ評論家が飲食店評価サイトなどにBGNレベルの記載も始めています。事実、2018年のザガットの顧客調査ではレストランに対するクレームとして「うるさい」=BGNが筆頭にあげられていました。(注¹)

翻って日本ではいかがでしょうか?うるさいレストランや居酒屋はいやだなあと思われる方は少なくないはず。グルメランキングサイトや予約サイトなどにBGNレベルが記載される日もそう遠くないのではないでしょうか?そう、ソーシャルディスタンスが保たれているかどうか説明されているように。

味も違って感じてしまう

更に重要なことには、味覚と聴覚は連動していますので、80ー85デシベルの騒々しい環境では、味覚が正常に機能しなくなります。音が味を変えてしまい、例えば、甘さ・塩分の感じ方が鈍くなる、うま味を強く感じてしまう、食べ物がパリパリ!シャキシャキッ!カリッ!人によっては「乾燥している」と感じる方もおられるかもしれません。

結果として、どんなに素晴らしいレストランでも音の環境が正しく構築されていないと、シェフの意図する味とは異なった味のお料理を食べることになってしまいます。ちなみに、騒々しいお店ですと、お酒のグラスを空けるまでの時間が短くなり、より多くの種類のお酒がオーダーされることになりますが(注²)、言ってみればこれは騒々しいのでお酒をがんがん飲んで、早食いするということですから、高BGNレベルが原因のストレスだと考えられます。結局のところ、騒々しさがお客様のクレームの上位にあること、うるささが味覚を変えてしまうこと、更に、会話もし辛く大変不便であると考えると、「再訪したいレストラン」とは言えないですよね・・。言うまでもなく、これは何も高級レストランだけのお話ではなく、カフェ、フードコート、居酒屋、ファミレス、ファストフード、すべて同じことです。今、飲食店の経営者の皆様は大変なご苦労をなさっているかと思います。飲食店の音の環境づくりを正しく行うことは、Sonic riskをSonic opportunityへと転換し、収益を増加するアイディアの卵になりうるのです。

例えば高BGNのレストランだと、仮に同じテーブルで同じ人数で会話するのであっても、必然的に声が大きくなります。従って、当然飛沫もより多く飛び、コロナウィルス等への感染リスクも高まります。もちろん、法令等に従った対策や、クリアパネルの設置といった目に見える対策も必要ですが、大声で飛沫を飛ばしまくった会話をしなくていいようにBGNレベルを下げたり、空間のサウンドコントロール(反射・反響・吸音・マスキング等々)設計を試みるお店が、「居心地が良いだけではなく、優れた感染対策をしている優良店」と考える風潮ができていくべきではないか、とソニック・アーキテクトは考えるのです。

(注²)Zagat Releases 2018 Dining Trends Survey., (2018. )
(注³)Gueguen, N., et al., (2008). Sound level of environmental music and drinking behavior : a field experiment with beer drinkers. 


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