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戯曲「別れの戦記」における対比構造

戯曲「別れの戦記」には、多くの対比が描かれている。ここでは、作品の三つの命題である〈戦争によって引き裂かれた騎士たち〉〈夢によって結ばれた絆〉〈運命によって紡がれた別れ〉における対比について触れたい。
(こういった媒体に投稿するのが初めてのため、読み苦しい点や不快を与える表現があるかもしれないが、ご容赦いただきたい。)

二つの命題の対比

一番分かりやすいのは、戦争によって引き裂かれ、を交わしたマリアヴェーラとカタリーナの物語と、によってを結び、約束を交わしたエイラとフィオナの物語だろう。別れ出会いの綺麗な対比と言える。
また、この四者は個人での対比も描かれている。剣を置かず親友と相対したマリアヴェーラと、剣を置き敵と友になったエイラ。親友に何も告げなかったカタリーナと、友に敵は太陽王であることを告げたフィオナ。

このように、本作品の主人公である二人が〈戦争によって引き裂かれた騎士たち〉を、アニメ版の主人公である華恋とひかりが演じる二人が〈夢によって結ばれた絆〉という作品の命題をそれぞれ担っている。
(まさあめポイント:今作の主演である真矢と香子はもちろん、華恋とひかりもしっかり立てており、まさあめの舞台創造科としての矜持が感じられる。)

命題と裏命題

前記した通り、戦争と別れ、夢と絆という二つの命題の対比が印象的だが、各命題の対となる裏命題がある。
まず、〈戦争によって結ばれた絆〉はロイスとクラウディアの関係である。この二人は最強(マリアヴェーラ)への執着が強く描かれている。軍事演習の交戦中に現れたマリアヴェーラに対する各々の反応を見ると、ロイスは敗北したことを恥じ、合わせる顔がないといった様子。一方、クラウディアは強さの意味を問う。そこで最強の騎士にはともに高め合ったライバルがいることを知る。彼女は湖のほとりでひとり修行していたり、主題歌の歌詞からも孤独であったことが分かる。そんな彼女が、戦場でロイスを探し、戦った相手を諭すように話す姿から、敵国の騎士であるロイスをライバルとして認めていることが伝わる。そして、クラウディアを追いかけていったロイスもそれは同様だろう。
この二人は、戦争の象徴である剣を交わすことで絆を結んだと言える。現騎士団長亡き後、お互いを高め合いながら両国の軍を率いる姿は想像に難くない。これは、前記したマリアヴェーラとカタリーナの結末と対となっている。
(まさあめポイント:裏命題を担う二人が、主人公の相方二人というのが素晴らしい。まさあめは舞台創造科の誇り。)

そして、〈夢によって引き裂かれた騎士たち〉はマリアヴェーラとカタリーナである。二人のはマリアヴェーラの手紙から騎士になることであることが分かる。二人の目指す騎士とは「剣に生き、剣に死ぬ」ってやつである。上記は剣を戦争の象徴としたが、二人にとって剣とは夢なのである。城で再会し真実を知った後も、己が正義のため剣を取った騎士たちは別れの結末を迎えることになった。これは、前記したエイラとフィオナの結末と対になっている。

戦争と夢と運命

では、なぜ命題と裏命題の対比が描かれているのか。私は、この対比によって三つ目の命題である〈運命によって紡がれた別れ〉を表現するためと考えている。戦争だけを別れの原因とするならば、主人公の二人はエイラのように剣を置き、戦場から逃げ出せば良かったのかとなるがそれは違う。二人が逃げ出せば、この戦争で犠牲になった命が無駄になるだけでなく、太陽王の悪政によって国が滅ぶか、そうでなくとも新たな革命の先導者が現れるだろう。国に忠誠を誓うマリアヴェーラが、国が滅ぶのを見過ごせはしないだろう。すべてを一人で背負い、戦争を終わらせようとしていたカタリーナもまた同様である。さらに、二人のである騎士も捨てることになる。夢を失うということは舞台少女がキラめきを失うことに等しいだろう。

戯曲「別れの戦記」で描かれた対比は、戦争の中で絆を結んだロイスとクラウディアや、夢によって絆を結んだエイラとフィオナを描くことで戦争や夢自体が別れや出会いを意味するわけではなく、マリアヴェーラとカタリーナたちの戦争や夢が別れに向かう運命であったことを強調している。

あとがき

最後までお読みいただきありがとうございました。至らぬ点があればご指摘いただけますと幸いです。また、ご意見や感想もいただけますと大変嬉しいです。

運命と別れは、アニメ版や劇場版、そして戯曲「スタァライト」の中で最重要と言っても過言ではないテーマです。その辺りとの関連性があることは間違いないと思いますが、筆者は2023年から舞台創造科に入学しているため、コンテンツ発表の時系列が曖昧なためここでの言及はしないでおきます。


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