エンタープライズ飲食企業100社超にCamelシリーズが導入されるまでの失敗と乗り越え方
昨今、SaaSプレイヤーのエンタープライズシフトに注目が集まっています。バーティカルSaaSが取るべきエンタープライズ戦略とはどのようなものなのでしょうか?
はじめまして!株式会社tacomsの共同創業者 / COOの杉田 (@Sugita_Sho) と申します。
2019年5月に代表の宮本と共にtacomsを創業し、現在はビジネスサイド全般に責任を持っています。学生時代に起業したこともあり、様々な試行錯誤をしながらエンタープライズ・SMB両軸のGTMを担っています。
この度、tacomsは9.5億円の資金調達を実施いたしました。今後はこの資金を使わせていただきながら「Camelシリーズ」の拡大を目指しています。
今回の資金調達で、多くの株主様からご評価いただいた点の1つに、エンタープライズ飲食企業への実績があります。学生起業でスタートしたtacomsでは、当時BtoBビジネスへの解像度が低く、Camelリリース当時はエンプラ商談勝率は目も当てられないほどでしたが、現在はエンタープライズ飲食企業にCamelシリーズをお選びいただけることも増えました。
本記事では、バーティカルSaaSの初期トラクションを構築する営業戦略をテーマにtacomsで取り組んできた事例を公開し、1つのユースケースとしてみなさまの営業活動の参考としていただけると嬉しいです。
目次
1. Camelシリーズとは
Camelシリーズは、デリバリー・テイクアウト一元管理「Camel」や自社デリバリー・テイクアウトサイト立ち上げ支援「Camel Order」を中心に、飲食店のオペレーション改善や売上向上を支援するソリューションです。(最近リニューアルした製品サイトです!)
2. PMFへの焦りからの失敗〜商談敗北の日々〜
ターゲットフォーカスのない状態による提案の質の低下
私たちのファーストプロダクト「デリバリー・テイクアウト一元管理サービス Camel」は、コロナ禍で多くの飲食店様とご面談させていただく機会をいただきました。当時の素人が作成したような弊社のホームページからお問合せをいただけたり、テレアポとコールドメールをお送りし、ご連絡いただけた飲食店様と面談を繰り返す日々でした。
一方で、とにかくPMFをしたいという焦りもあり、反応がいただけた飲食店様全てに均一な対応となっていました。注力するべき飲食店様を決めきれておらず、いつのまにか競合に決まっていることや、お断りいただくことも多々。やっとの思いで初回商談に漕ぎ着けるも、競合に決まっていたこともありました。
(もちろん全てのお客様に対して全力で取り組むのですが、限られたリソースの中で優先順位を決めて対応することもお客様のために必要だったと反省しています。今後は全飲食店様にさらに向き合えるように組織を拡大いたします!)
大きな事業成長を目指す上でのエンタープライズ展開の必然性
前提として、tacomsは、飲食業界向けSaaSで少なくともARR100億円を目指そうと考えています。
ARR100億円を個人飲食店向けのソリューションとして達成するとなると、月額10,000円のサービスを10万店舗に販売する必要があります。また、個人店のサービスへの支出は基本的に「集客ツール」と「POSレジ」です。その他への支出は業態にもよりますが、多くても月5万円前後でしょう。また、閉業率も高く、アンコントローラブルのチャーンが発生する可能性が高いです。
一方で、日本のトップ飲食チェーン店様は年間システム予算が数十億円規模であることも少なくありません。また、個人店向けに比べて参入障壁が高いため、プレイヤーも少ない状況です。ARR100億円を達成しその先も成長し続けることを考えると、一気にエンタープライズ企業のシェア獲得し、マルチプロダクト化によってARPAを高めていこうと考えました。
4. エンタープライズシフトの実行
エンタープライズシフトに向けた3ステップ
上記の背景・戦略感からエンタープライズシフトを進めていくことを決め、そのために以下の3つのステップを取っていきました。
社内リソースを目標企業に集中投下するためのターゲットセグメントの設定
継続した商談獲得をし、業界未経験メンバーでもクロージングが達成できる構造、仕組み作り
プロダクトのエンタープライズ対応
3点目については、CTO井上が詳しく解説していますので気になる方は以下をチェックしてみてください!
本記事では1点目と2点目をどのように進めていったのか、より詳細について紹介します。
①社内リソースを目標企業に集中投下するためのターゲットセグメントの設定
まずは、tacomsが集中するべきターゲット選定として、社内の分散していたリソースをエンタープライズ企業に集中しようと決めました。
そして、エンタープライズ領域でも注力セグメントを可視化します。
みなさまもよく聞く「Must have」と「Nice to have」。まずお客様目線でCamelが解決するペインの深さの定義を明確にして、なくちゃ困る!と感じているであろう飲食店様によりCamelを届けようと考えました。
X軸の定義に関しては、社内データを様々な指標から分析しまし、デリバリー売上が高い企業が、商談化率の高さや解約率の低さと高い相関があると判断しました(デリバリー売れているところは困っている)。
具体的には、売上が〇〇万円以上の店舗は解約率が異常に低く、〇〇万円を下回ると一気に解約が増えるというものでした。ですので、この〇〇万円を基準に顧客のペインを区分することにしました。
そこからはUberEats上の情報をクラウドワークスなどを使用して収集し、評価と評価数からおおよその店舗あたりの月間デリバリー売り上げを予測します。それをまた全飲食店で検証します。そうすると、チェーン店の中で「〇〇万円以上の売上がある店舗数(=must have状態と社内で定義)」と「〇〇万円以上の売上がない店舗数(=nive to have状態と社内で定義)」の割合が分かるので、〇〇万円以上の売上がある店舗数割合が高いチェーン店からアタックすることとしました。
②継続した商談獲得をし、業界未経験メンバーでもクロージングが達成できる構造、仕組み作り
セグメントが決まり、注力企業に社内リソースを割り当てることとなりました。結果的に、商談進行率や受注率が向上しましたが、目標の水準にはまだ足りません。
Camelはサービス特性上、飲食店に導入されている他プロダクトのインテグレーションやオペレーション全体を考慮して最適なシステム全体像を定義する必要があります。
一方で当時は、業界未経験のメンバーが多く、特に知識面、特に業界知識やシステム解像度が不足している状態でした。そのため、飲食店担当者様とのコミュニケーションに負荷をかけてしまったり、信頼の獲得に時間がかかってしまう事態となっていました。ですので、業界未経験で知識が少なく、そもそも営業経験が経験が少ないtacomsでどう乗り越えるかを徹底的に考えました。
なぜこの結論に至ったか、それは「お客様から全てを学ばせていただいた」からです。どのような戦術にするか考えあぐねて際、導入いただいたお客様を中心にインタビューを行いました。
その中で、システム構成や受注要因などのナレッジを蓄積できましたが、1番の発見は「お客様の与信を集めているプレイヤーを特定できたこと」です。大手飲食店向けソリューションの中で1番飲食店様が信頼しているのは「POSベンダー」でした。
何か困ったことがあればまずはPOSベンダーの担当者に相談をするという慣習が見えてきました。また、提案時にただサービスを提案するベンダーが多く、実際に導入する際のシステム連携や想定リスクを考慮できていない営業が多いという声もいただきました。
そこで、まずはPOSベンダーとの信頼関係構築スタートさせました。
POSベンダーに対して、Camelを「単にプロダクト連携しているサービス」から「お客様に価値を発揮でき課題解決に加えて、導入することによってお客様もPOSベンダーもwinがあるビジネスパートナー」と捉えていただき、商談推進に向けての連携を強化することにしました。
このような取り組みの中で飲食店店内システムに関しての解像度がぐんぐん上がりました。また、POSベンダーと商談推進することで、チェーン店毎のパワーチャートや接し方の解像度も上がり、営業推進の質も向上し、チェーン店の担当者様からお褒めいただくことも増えてきました。
結果的に、「デリバリー・テイクアウトにとても詳しく、飲食店店内のシステム構成にも詳しいい営業マンが、現場・本部オペレーションにとって最適なシステム構成を議論できる」状態になり、お客様が安心して発注いただける回数が増えました。
エンタープライズシフトの結果
現在は、大手チェーン企業を中心に9000店舗を超える飲食店様にご導入いただいています。結果的に
受注率や商談勝率が2倍以上に改善
「POSベンダー」紹介企業が200%以上増加
エンタープライズセグメントのARPAが50%以上向上
となりました。
チェーン店を100社以上の多種多様な顧客基盤を保有していることで、新規事業開発も進めやすく、今後の更なるアップセルやクロスセルを創出できる環境も整っています。
Camelにご興味を持っていただいた方へ!!!
Camelシリーズは今後
オンライン注文:様々な注文〜会計のオペレーションをデジタルの力でセルフ化・省人化し、サービスの品質を落とさずに少人数での店舗オペレーションを実現させる
CRM/マーケティング:オンラインの注文体験と、密に連携した顧客管理・マーケティングソリューションの提供
の2つの軸でマルチプロダクト化をガンガン進めます!(なぜこの軸か気になった方は、CEO宮本のnoteをぜひご覧ください)
ということで、一緒にマルチプロダクト化でARR100億円を超える事業を作っていただける方、ぜひ会社HPやHERPから、ご連絡いただけると嬉しいです!カジュアルにお話ししましょう!
特に、以下のポジションがまだまだ足りておらず、お力を貸していただける方を積極的に募集中です!
業界特化SaaSとしてのマルチプロダクト化を支える事業開発(BizDev)・プロダクトマネージャー
マルチプロダクトのGTM戦略をリードできるビジネスサイドのミドルマネジメント層、まだまだ試したいことが山ほどあります!(VP of Business・VP of Marketingを特に注力して採用強化中です)
ぜひ会社HPやHERPから、ご連絡いただけると嬉しいです!カジュアルにお話ししましょう!
募集中のポジション:https://herp.careers/v1/tacoms
杉田のSNSからでも!:https://x.com/Sugita_Sho