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僕の夏休み〜足柄山の深い森の中でととのう〜
本当に、こんな山奥にあるのだろうか。
「おんりーゆー」に初めて訪れる人は、きっとそう不安に思うに違いない。神奈川県の西の果て、南足柄市。金太郎が熊やら猪やらを従えて、お山の大将を気取っていた場所だ。途中からは、本当に一軒の民家もない山道となる。
大丈夫。間違っていない。山深い中にあるからこそ、関東随一の、深く濃厚な外気浴を味わう環境が待っている。
本当に、森の中にある温浴施設だ。
受付ロビーのエントランスを抜けると、圧倒的な夏の匂いに包まれる。そこはすでに、半分屋外の様相を呈していて、子供の頃、ワクワクしながら虫取りに興じた雑木林が広がっている。エントランスに1番近い一本のクヌギの木には、盛夏の象徴の様な樹液がたっぷりと溢れ出ていて、多くの昆虫が競って群がっている。羽音や、甲虫類同士のぶつかり合う乾いた音が、ひと夏の生命力を際立たせている。
この温浴施設、山奥にあり、車でないと来ることが難しいこと、さらに、そこそこの料金に設定されていることもあり、俗に言う「激混み」状態になることがほとんどない。特に、平日の昼間であれば、大きな露天の湯船を独り占めできる。38℃の温度設定で、本当にいつまでも入っていることができる。そこから見上げる澄んだ青空や、木々の間から、本当にこぼれるように差し込む光が水面で踊る様子を、まどろみの中で感じることができる。アルカリ泉特有の優しい肌触りで、全身、新しい皮膚を纏った様な、そんなフレッシュな湯だ。私はいつも、サウナ前、この風呂でのこのまどろみを楽しみにしている。大人が、自然と一体となれる空間がそこには広がっている。
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5人程度のキャパのサウナは、室内は仄暗いライティングで、天井からは、数束のヴィヒタが吊るされている。周辺の樫の木の小枝で作ったものだそうだ。ほんのりと甘い香りが、優しく包み込んでくれる。オートロウリュ付きの電気ストーブで、温度計は90℃を示しているが、体感的にはそれより10℃程度は低く感じる。普段他のサウナでは6分程度しか入らない私でも、12分計が一周するのを見た!ずっと入っていられそうだ。
温湿度ともに、少々物足りないのが正直なところ。しかし、それを補って余りあるのが、水風呂と、外気浴スペースの素晴らしさだ。
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まずは、水風呂。
きんらん水と呼ばれる、天然の井戸水。掛け流し。サウナ室を出ると、1人用の小さな水風呂。水温は18℃といったこころか。痛くなる冷たさとは無縁の、どこまでも柔らかい水風呂だ。ずっとはいっていられる。おんりーゆーは、この、ずっと、がポイントなのかもしれない。もちろん、消毒臭は皆無で、ごくごくと飲みたくなる衝動に駆られてしまう。ご安心ください。脱衣所と露天風呂スペースには、このきんらん水の飲料スペースがある。口に含むと、さらにこの水の柔らかさを、体の内側で感じることができる。
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そして、何と言っても、ここ「おんりーゆー」一番の場所は、ととのいスペースにある。
この温浴施設は、深い森の中にあるため、露天スペースに設けられたととのいの場が、そのまま極上の森林浴スペースとなっているのだ。
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露天風呂の入口側、奥側の2箇所に設置されており、奥側はリクライニングチェアで木漏れ日を感じ、入口側では、すぐ脇を流れる沢のせせらぎに耳を澄ますことができる。
サウナ後のリラックスタイム×森林浴が、これほどまでに相乗効果があろうとは。
今回は、夏の盛りに訪れたが、この施設は四季の変化を全裸で感じることができる、というのもひとつの魅力であることも間違いない。
春の芽吹きの時、紅く包まれる秋、そして、静寂の冬の森。それぞれに違った音を、訪れる人それぞれの脳内に奏でてくれることだろう。
今回、深く腰掛けたチェア、広葉樹の隙間からこぼれる陽の光に目を細めながら、私の脳内に自然と再生された曲は、井上陽水『少年時代』だった。
この名曲の様に、抒情的な場所、それが「おんりーゆー」だ。
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ここは、四季だけでなく、1日の移ろいを感じるのも、また一興。
夜は夜で、深い森が、また違った色気を見せてくれる。
それを、全裸で体感できるところが、この施設最大の魅力である。
森を、浴びる。