見出し画像

彼が好きだったのは私じゃなくてママ

2024/04/18


腐れ縁の男

私には、人の誕生日を忘れられないという嫌な特技がある。
いい関係の人なら忘れないに越したことはないが、関係が悪化したり、私から離れていったりして、関係が悪くなった人の誕生日も忘れることができなくて少し厄介な特技だ。
これから物忘れが増えてくるのだから、その小さなスペースは無駄に使いたくないものだ。

忙しくて書けなかったけれど、16日に誕生日を迎えた男がいる。
彼とは19歳の時に、当時まだ安全だった出会い系サイトで知り合い、付き合った。
『元カレ』というやつで、遠距離恋愛も含めて3年ほど付き合った。

19歳はまだ子どもなのだろう。
今の3年なんてあっという間なのに、あの頃の3年はもっと長く一緒にいたような気もするし、たくさんいろいろなことが起こったなと思う。
高校生の恋愛はもっと短命なので、高校を卒業して1人の人と付き合う日数も増えたな、とは思った。

その彼だが、実はつい最近まで、何らかの経路で連絡が取れる状況にあった。
別れた時も、
「俺は唁のことを1番よく知ってるんだから、何かあったら頼ってこい。友達でいよう」と言うので、連絡先は消さずにいた。

久しぶりの会話は文字だった

15年以上にわたり、お互いの誕生日にはメッセージを送るようになっていた。
最初はメールでのやりとりだったが、そのうちFacebookのメッセンジャーでチャットをするようになった。

「電話をしようよ。」
彼は昔と変わらない様子でそんなことを言ってくる。
でも、正直私は彼とはもう話したくなかった。
15年間、お互いの誕生日に送るメールで少しやり取りが続くのだが、内容が毎年変わらないからだ。

「あの頃はこんなことがあったよね」
「お前はバカだったよな」
「今そんな仕事してるんだ! 想像つかないね」
そんな、女性軽視な発言もいつも変わらないし、最終的には下ネタに発展して、嫌気がさして私から返信しなくなるパターンだ。

私も若かったので、彼とは付き合っていた仲だし、体の関係ももちろんあった。
でも、その話を蒸し返されてもなにも嬉しくないし、むしろ今は恋人ではないし、お互いに結婚しているのだから、気持ち悪くさえなる。
「Sちゃん(現在の相手の奥さん)はマグロだから、あまり夜の関係がないんだよね。あの頃は楽しかったよね。あまりにつまらないから、この間大人のおもちゃを買ったんだ」
何だその話題。
そんな話題しか提供できないしょぼい男になったのか。

「あの頃唁が遊びに来た部屋だよ。もうなくなっちゃったけど」と写真を送られたこともある。
正直、嬉しくも懐かしくもない。
私はその家に遊びに行っただけなので、思い出もなにもない。
むしろ、心の状態が最悪な時に行って、最悪になって帰ってきた思い出しか残っておらず、そんな写真はありがた迷惑で、保存もせずに流した。

当時浴びせられた不適切にもほどがある言葉

そんなタイトルのドラマが最近あって面白かった。
二十歳前後の私はどうして彼に夢中で、他に目を向けられなかったのだろう。
いつ思い出しても最低だと思う言葉を、たくさん浴びせられた。
それでも一緒にいたくて、別れると言われれば泣いて、バカみたいだ。

「お前はバカなんだから、俺の言うことだけ聞いてればいいんだよ」

いつか喧嘩をした時に、仲直りをした直後に言われた言葉だ。
当時の私は彼に可愛く思われ、捨てられないことに全てを捧げていた。
彼の前ではぶりっ子だったし、性格も女々しくなり、そんな自分が好きだったのはあの時だけで、彼と別れてからはそんな自分が存在していたことをもみ消したいほど嫌いだった。

今考えると、ものすごく女性軽視な言葉だし、自分がどれだけすごい男だと思っているのか、アホらしい。
このセリフを吐きながら、DVをしたりそういったことはなかった(1度だけ殴られたことはある)。
きっと、自分の手の内に女を転がしていた父親の影響で、自分もそうなれると思っていたのだろう。
確かに彼の父は少し偉大だった。
けれど、彼は今となっては至って普通に会社に所属して働いているので、彼自身にすごいところはこれといってない。

「食器洗うの遅いよね。ママはひとつ流してる間に次の皿を持って、もっとスピードは速いよ」

彼に可愛い、いい女、いい嫁さんになると思われたい一心で、自炊も頑張っていた。
彼とは半同棲というかたちだったので、ずっとうちにいるわけではなかったけれど、彼はどちらに帰っても「おかえり」と言ってくれる相手がいる、いいご身分だ。

私もアルバイトだったが働いてから自炊をしていたので疲れていて、洗い物を頼んだら断られたことがある。
どれだけ甘やかされて育ったんだよ。
少々不機嫌になりながら洗い物をしていたら、言われた言葉だ。

言われた瞬間、どう思ってどういう行動に出たのかは覚えていないが、彼はきっとこの言葉を発したことなんて覚えていないので、喧嘩になったりはしていないと思う。
でも、後から考えると、いくら年数が経ったとはいえ怒りしかない。

私は彼の母親じゃないし、一人暮らしにも不慣れな女だ。
疲れて帰ってきてご飯を作ってあげて、洗い物を頼んでも断られて、ダラダラと洗っていた私にその言葉だ。

多分この人は、結婚した後に親と私がうまくいかないことがあったとしても、親を養護して私を攻める典型的なマザコンタイプだろう。
それにどうして、その時に気付かなかったのか。
気付いて、さっさと振ってやれば少しはスッキリしたかもしれないのに。

ちなみに今の奥様は彼の両親ととても仲がいいようで、「一緒に温泉に入りたい」と言うらしい。
それが彼の求めてた嫁ならば、私には一生不可能だ。
もっと早く気付くべきだったと思う。
「お母さんステキです~!」「一緒にお風呂に入りたいです~!」「すごく似合ってます~!」なんて、口が裂けても言えないや。

私と彼は同い年だが、奥様は確かかなり年下だ。
若くて従順な女の子と一緒なれて、それでマグロだとかいう文句を昔の彼女である私にぶつけてくるような女々しい男は本当に無理なので私の前から、そして記憶から消えてほしい。

2年前に全連絡先をブロック

私が引っ越したのを機に、全連絡先をブロックした。
SNSのDMでメッセージをやりとりしていても、必ず奥様にバレて消去させられるらしい。
本当か嘘かはしらないが、毎回そう言っていた。

メールやLINEでやりとりしたらバレるからといって、SNSのDMを使ってくるあたり、本当に嫌いだ。
奥様が私のことを相当嫌っているのに、それでも連絡を取りたいものかね。
それって、奥様を大事にしていない証拠だと思う。
やめてと言っているのにやる。
書けば書くほど嫌いになる男だ。

私は彼と別れてから、見た目も性格もだいぶ変わった。
変わったというか、素の自分になった。
洗脳から解けたような感じだ。
その変わった私を見て、
「俺は昔の唁が好きだよ」とよく言われた。

どうして今、あなたの趣味に合わせる必要がある?
どうして今、自分の好みの見た目や性格になってほしい?

なにより、私自身が嫌いな昔の自分には戻りたくない。
という、私の気持ちは一切無視した発言に、毎度嫌になっていた。
ブロックしてからは素の自分で生活できていて、かなりストレスが減った。


#この経験に学べ

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集