国債の意義について考えてみたことのまとめ
国債とは何か、そして国債を発行することの意義とはいったい何なのかについて考えたことをまとめてみたいと思います。
金融的な意味での国債
国債についての金融的な説明は様々な金融機関が説明していますが、その中でも最もわかりやすく正確な説明に近いのがSMBC日興証券の説明ではないでしょうか。
一部を抜粋すると、
つまり、国(政府)が政策に基づいた財源を確保するために発行する債券です。
また財務省のホームページでも国債について解説されていますね。
経済的な意味での国債
国債の経済的な意味を理解するために知っておく必要があることが二つあります。
それらは、
貨幣には様々な種類がある
貨幣は借金によって生み出され、返済によって消滅する。
簡単に解説してみましょう。
貨幣には様々な種類がある
貨幣得とは何かといわれて思い浮かぶものはというと、普通は現金ですよね。
しかし、実際はお金の種類は、マクロ的に見ても少なくとも4種類あるわけです。
それらは、
政府発行の硬貨
日銀発行の紙幣
日銀当座預金といわれる日銀預け金
銀行の預金残高といわれるマネーストック
そしてこれらのうち、1+2+3の合計がマネタリーベースといわれます。
では国債はどうなのかというと、国債も貨幣といえます。
国債は政府が発行する貨幣であり、唯一金融資産の担保を必要としない貨幣なのです。
つまり政府が発行する気になれば、いつでも発行できるのが国債という貨幣といえます。
貨幣は借金によって生み出され、返済によって消滅する。
一見何を言っているのか混乱しますが、実は結構単純です。
まず個人が借金をする場合を考えてみましょう。
個人が借金をする場合の手順として、
まず銀行に借用証書を差し入れます。
個人の信用に基づいて、預金通帳に借入額が記帳されます。
銀行にとっては負債であり、借入人にとっては資産である預金通貨が発生します。
返済が済めば借入金(預金通貨)が消滅しますね。
会社が銀行から借金する手順も同じですね。
まず銀行に借用証書を差し入れます。
会社の信用に基づいて、預金通帳に借入額が記帳されます。
バランスシートの左側には資産が増え、右側には負債が増えます。
返済が済めば、左側の資産も右側の負債も消滅
では国が国債を発行した場合はどうなるか。
この部分は、中野剛志氏の富国と強兵―地政経済学序説の102ページから抜粋し、三橋貴明氏の解説を交えて説明(※印:三橋氏)していきます。
つまり、
政府の国債発行により、政府の負債が増えると同時に、日銀当座預金が増える。
公共事業などの財政出動により業者に日銀当座預金担保の政府小切手で代金が支払われる。
政府小切手が銀行に持ち込まれると、業者の口座に記帳(民間預金の増加)。
日銀は政府保有の日銀当座預金を銀行保有の日銀当座預金に振り替える。
バランスシートで説明すると、政府が右側の負債を拡大させることで、左側の民間資産が増えることになります。
しかし、政府が右側の負債を消そうとした場合、当然左側の国民資産も消えてしまいますよね。
もっと簡単に言うと、誰かの負債は誰かの資産、誰かの資産は誰かの負債なので、政府が負債を増やしてくれることで私たちの預金が増えるということになります。
参考資料:
国債の意義について
国債の意義とは何かについて中野剛志氏はその著書「保守とは何だろうか (NHK出版新書)」の中で、イギリスの天才経済学者コールリッジの言葉を用いて、以下のように説明しています。
さらには「マネタリーベースつまり金融部門の不活動貨幣をマネーストックつまり産業部門へ移転し、階級を超えて国民経済全体の所得を増やすことができる」と述べているのです。
国民の所得が増えることで需要牽引型のインフレを喚起、その需要に応えるために国内生産を増やし経済活動を促進させさらに所得が増えるという、好循環が生まれるのです。
国民統合の重要性
コールリッジの時代になぜイギリスが、発達した金融システムを持ちえた理由は、中野剛志氏によると、
国民のために資源の再配分を行うには、国民の統合が必要となります。
国民統合がなされていなければ、つまり、地域や階級などの違いを超えて共有される国民として同朋意識があればこそ、隣の困った人を「同じ国民だから助けよう」という気になるでしょう。
金融緩和だけでは機能しない
金融緩和とは何かについて、多くの金融機関が説明しています。
ちなみに下記の引用はSMBC日興証券からの引用です。
ニュースなどでよく聞くのが、金利の引き下げやマイナス金利の実施、量的緩和などですが、これらの政策は、景気が低迷する日本で継続して行われた政策。
しかし日本の景気は上向くどころか、世界最低水準まで落ち込んでいるのです。
それもそのはずで、金融政策は財政政策と対になって行われなければならないのです。
というのも金利の引き下げやマイナス金利は民間が金を借りて投資しようとするときに、お金を借りやすいようにする政策。
つまり、民間が「投資をすればもうけが出る」と考えなければ、いくら金利を下げてもマイナス金利にしても、お金を借りてくれることはありません。
量的緩和も日銀当座預金を増やしただけで、民間へは資金が回らず経済効果はそれほどありませんでした。
つまり国債を発行し民間の需要を喚起することなくして、金融政策に効果は見られないのです。
コールリッジの言葉を借りれば、
まとめ
一つの言葉に受け取り方によって様々な意味があるように、国債一つとっても金融的な意味や経済的な意味といったように、様々な意味があります。
しかし本来国債とは、経済環境を構築するための重要な一部であるにも関わらず、金融商品の一部としてしかみられていないように思います。
また、国債は借金であるという虚偽の一面のみが信じられるようになり、本来意義について一部の経済学者や言論人以外には深く論じられることはありませんでした。
しかし新型コロナによる世界の変化によって、国債の意義とそれを積極的に用いた財政出動への関心が高まってきているのです。
そして国債を発行する意義とは、国民の統合をより強固にし、迫りくる困難へと立ち向かうための後押しになるのではないかと考えるのです。