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靴下。

ペアでひとつの機能を果たすモノに靴下があります。長い靴下、短い靴下、アンクル丈、シューズインに五本指などが主なところかと思いますが、人が足に装着する特質上、おのずとカタチは決まってきます。色や柄、素材、それに付加効能の加減乗除で選択肢を膨大に増やしているのでしょう。メーカーも、ブランドも、それに価格の振れ幅も大きいため、私のこの一本を決めづらいのも、靴下の特長かと思います。つまり必要になって買いに行くと、都度、気に入った靴下を選んでしまうのです。さらにまとめ売りが多いのも靴下の特長です。サイズについてはone size fits mostですので、衣料品にしては珍しく、あまり気にする必要がありません。選び放題です。そしてたいてい、3つの異なる色、異なる柄を手にします。ブラックとネイビー、それにストライプ、といった具合。ここには手頃なモノ選びの楽しさがぎゅっと詰まっています。新しいソックスに足を通した時の清潔感、爽快感は、歩くことを愉しませ心のリフレッシュをもたらします。しかしそんな気持ちのいい靴下に限って、はやばやとつま先やかかとに穴が空いたり、片方が行方不明になったりします。後者の原因はしっかり引き出しを探検すれば解決しますが、前者の原因は履くことそれ自体ですので、道具としての宿命だと思っていたのですが、これは違う意味で理の当然でした。なぜなら気持ちのいい靴下とは結果的に頻繁に着用する靴下ですので、単に登板回数が多いのです。さらにいまタイプしながら気づいたのですが、わたし、足の爪が長い。小まめに爪切りをしていないのです。硬い爪とシューズの内壁にはさまれ、もまれ、終日こすられる、柔らかな靴下の布地に対して耐えろという方が無茶というものでしょう。爪は手入れし、足の清潔と、ほんのすこしの気配りさえあれば愛用の靴下はぐんと長持ちするはずです。アンダーウエアも似たような売り方、選び方かと思いますが、それが着用時には他人の目につかないことと比べると、靴下は裾からチラっと顔をのぞかせます。このチラっが、履く人の深層の嗜好を露わにするように感じられてなりません。靴下は、実は恐るべきアイテムなのです。ピッピとかサンタクロースとか連想している場合ではないのです。

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