ロシアでスリにあいパスポートも盗まれたけれど、なんとか無事に帰国した話
こんにちは、旅ユニットTABTABのノンコです。
タイトルで内容がバレバレなのですが、まだロシア旅行が自由にできた頃、旅先でスリにあったエピソードを紹介します。
2019年5月 サンクトペテルブルク
被害にあったのは、2019年5月。
ロシア旅行の旅も折り返し。前日の夕方からサンクトペテルブルクにやってきました。
ランチをしていたレストランでお会計を済ませ、店を出て、目の前の停留所からトラムに乗り着席。
おや?ミリコのバックの口が開いている。
大事なポーチがない!
中身はパスポートに現金にクレカ。そう、それはミリコの旅の全財産(!)
店を出てトラムに乗るまでの時間は、ものの5分。
その時はまだスリとわからなかった私たち。トラムへはPodorozhnikと言うICカードで乗っていて、お財布は出していないから、店に忘れてきたのかもしれない。
レストランに戻り、お会計をした時と同じスタッフの女性に話しかけました。彼女は日本語を習っていて、支払いの際に勉強のノートやテキストを見せてもらったりしてひとしきり盛り上がり、Facebookの交換をするくらい打ち解けていました。ケイティも数分後に再会できるとは思っていなかったよね。また来たよテヘ。
忘れ物がないか店内を確認してもらったところ、なし。座席とクロークとくまなく探してくれたけど、出てこない。ケイティとドアマンのじいさんとマネジャーっぽい女性もやってきて、フロントはスタッフだらけになってきました。
「もしかして、スリにあったのかもしれませんよ。」
ででーん。出ちゃったそのワード。なんかみんながしかめ面になってんなと思ったの。一番想像したくない展開に腰が抜けそう。って、横見たらミリコ真っ青!
ケイティがテキパキと日本領事館の場所を調べてくれて、住所をメモに書き写してくれました。ありがとうケイティ、あなたが日本語ができて本当に助かった。Facebookの投稿には必ずいいね!する!
日本領事館へ
サンクトペテルブルクの日本領事館は、エルミタージュ美術館へ続く通り沿いにありました。
呼び鈴を押すと、白髪のロシア人の綺麗なおじさんが出てきて、その後に日本人の担当者を呼んできてくれました。名前はKさん。ひとしきり状況を説明すると、まずはクレジットカードを止めましょう、その後に警察に被害届を出しに行きましょう、ということになりました。
被害届は保険がおりる都合で、必要な書類。パスポートの再発行は、海外ではできなくて仮発行をしてもらう形になるそうです。必要なのは戸籍謄本。これを入手すればすぐにでも再発行は可能だそう。けれども、今の時期はゴールデンウィークのため役所によっては2週間ほどかかるかもって…。
クレジットカード会社に連絡をしたのは、サンクトペテルブルク時間で午後3時くらい。カード会社のあるアメリカはまだ夜中らしく、なかなか通じない。繋がるまでひたすら電話をかけまくるミリコ、私はこの状況をどうしたらいいか分からずおろおろしていました。
今思えば、日本の会社に電話すればよかったのだけど、当時はそんな冷静になれない。
一本の電話が
1時間位した頃、旅用の携帯電話が鳴りました。
電話に出てみると、パスポートを拾ったと言う人。
パスポートあったの?
拾ったの?
誰か届けたの?
盗んで警察に届けたの?
つたない英語であなたはどこにいるんですかって聞いたけど、先方も英語が達者ではないようでなかなか会話が進まない。
「ロシア語がしゃべれる人がいないか?」と聞かれ、領事館のロシア人スタッフの女性に代わってもらいました。
すると、とあるレストランのゴミ箱にパスポートが入ったポーチが捨てられていたそうで す!
パスポートあったよーーー!!!!
これはとても珍しいことだったそうで、領事館の人も驚いていました。
歓喜に小躍りしていると、そこへ1人の日本人女性がやってきた。
警察へ行くのにあたり、通訳してくれる人を手配してくれていたのでした。名前はTさん。NPO団体で旅行客等を相手に通訳をしているのだそうです。
領事館のKさんからTさんに簡単に状況を説明してもらい、一刻も早くそのレストランに向かいましょうということになり、後は話ながらということで外に出ました。
ネフスキー通りを目指しながら、状況を説明したり、ロシアのスリ事情を聞いたりしていました。やはりロシアはスリが多いそうで、日本人がターゲットになることも少なくないそうです。
けれども、スリのハイシーズンは夏だそうで、この春先の時期に出たスリというのは、Tさん曰く
「冬眠から覚めたスリ」。
暖かくなり、みんなが外に出始めたところで活動開始。あまり気合も入ってないだろうということなのです。
腕慣らしに使われたなんて頭にくる!
話している間にレストランのある辺りに到着。そのレストランと言うのは、偶然にも前日に泊まっていたホテルの裏。
そこで、私はちょっと嫌な予感がしました。なぜなら、その通りは飲み屋街。朝散歩で通りかかったところ、まだ飲んだくれた若者が溢れているカオス状態だったので、足早にその通りを抜けたのでした。そこで拾ったなんて、なんか変な話。もしかしたら全員グルなんじゃないか、みたいな疑いも出てきました。。
ところが、そんな心配はよそにレストランの人も拾ったと言うシェフもとてもいい人たちでした。疑ってごめんなさい!
シェフの話によると、キッチンの外にあるゴミ箱にゴミを捨てに行ったらポーチが落ちていたそうです。中を開けたらパスポートが入っているし、一緒に入っていたSIMの抜け殻のカードに携帯番号がちょうど書いてあったので、そこへ電話をしてくれたとのこと。
あってよかったSIMカード!
ミリコの顔からもやっと笑顔が出てきた。お礼もそこそこに、次に向かわなくてはいけないので。
ロシアの警察へ行くだけなのに
次の目的地は警察。
ちょうどお店の前がタクシー乗り場だったので、Tさんはドライバーさんと交渉しタクシーに乗り込みました。
と、ここまでがスリ被害にあってからの3時間。こんなにめまぐるしく状況が変化する3 時間は経験したことがなく、もうぐったり。
ところが、もう一つ予想外の展開が待っていたのでした…。
警察に向かう道中、タクシーの運転手さんと助手席に座ったTさんがずっと喋っている。何の話をしてるのかと思ったら、彼女が振り向いて
「事情を聞いたドライバーさんが、俺も一緒に行って協力してやる!と言っていますがどうしますか?」
と聞いてきた。
いやいや、このおじさん誰?ジーパンはよれよれだし、髪もいつシャンプーしたんだかベトベトしている。歳の頃は50代半ばぐらいなんだろうか、不精髭も生やしてとにかく汚らしい。
ロシアにも寅さんみたいな人情に厚い人がいるのか、それはありがとうだけど、このおじさんが一緒に来るなんて、何を協力してもらえるのか全くわからない。普通なしでしょ。聞く前に断るでしょ。それなのに、Tさんはまんざらでもない様子。
Tさんて、さっきの「冬眠から覚めたスリ」発言もだけど、なんか独特。人のこと言えないけど、海外で生活するのにアメリカやイギリスではなくロシア選ぶあたり、ちょっと変わっていそう。
この状況を「渡りに船」と言い張るTさんに反論するのも面倒になってきて、結局、ドライバーのおじさんも一緒に、4人で警察署に行くことになったのでした。
サンクトペテルブルクも中心から離れると、かつての時代を思い起こさせてくれるような街並みになってきました。
警察署は本当に無機質な建物で、薄ら寒い感じ。間違えて射殺されたらどうしよう。
セキュリティゲートをいくつかくぐり、通されたのはいわゆる取調室。日本でも入ったことないのに、ロシアで取調室に入ることになるなんて、親には絶対言えない。
向かい合った机に卓上ライト、照らされるミリコ。反対の壁には、私とTさんと髪がベトベトのロシア人のおじさんが横並びで椅子に座り、授業参観のようにミリコが書類を埋めていく様子を見守っている。なんだろうこの光景。あまりにもシュールで、記念撮影してストーリーに投稿したい。
基本的な書類への書き込みが終わった後は、Tさんがロシア語で事情を説明。相槌を打っていたおじさんも、いつの間にか会話に入り混んでいる。
だんだんおじさんがヒートアップしてきてベラベラ喋るもんだから、イライラしていた警官がとうとう怒り出した!
「いちいち話の腰を折る、お前はいったい誰なんだ!」
「わしは、ここまで送ってきたタクシードライバーだあ!」
「出てけ〜!」
おじさんだけ外に追い出されてしまいました。
その後も事情徴収はしばらく続き経緯を見守っていたけど、領事館にいた時からずっと我慢していた尿意がいよいよ限界値に。
「トイレ行っても良いですか!?」
トイレに向かうため警官に連れられて長い廊下を歩いていると、突き当たりのベンチにベトベトのおじさんが腰掛けているのが見えた。 警察署内の出入り口にはロックがかかっているのでむやみに外に出ることもできず、事が終わるまで廊下で待つことになったらしい。ごくろうさん。
その後のやりとりは15分ほどで終了。Tさん曰くすごい真面目な警官だったので、とても丁寧に書類を作ってくれたそうです。 よかった!
外に出たら、辺りはもう真っ暗。ベトベトさんにホテルまで送ってもらいました。タクシー代とわずかな謝礼を渡したけど、車内でガンガンたばこ吸ったから500ルーブル返して欲しい。
長い一日だった
部屋についてからカード会社とも連絡がとれたけど、すでに被害総額80万(死)。保険でカバーできたので、実被害は現金の3万ほどで済みました。
本当にパスポートが戻ってきてよかった。
戻って来ていなかったから?と思うと、今でも冷や汗がドバッと吹き出ます。
それにしても、Tさんは不思議な人だった。今回のようにスリの被害にあった人のお手伝いをしたことは何度もあるそうで、エピソードもいくつか聞かせてくれました。他にもホテルの浴槽で滑って転んでしまった老人の観光客を病院まで運んだこともあったそう。 その話をしてる時の田中さんが少し嬉々としていて、この人もしかして他人のトラブルを楽しんでる?家政婦は見た?我々のこともブログに書かれているかも。。 そんなことを考えているうちに眠りこけてしまいました。
領事館職員の意外な面々
翌日の予定はエルミタージュ美術館。今回の旅で1番楽しみにしていた場所。なんたって池田理代子先生のエカテリーナ2世を熟読してきたのだから。昨日もなんでか近くまで来たけど、今日は中に入れるもんね。
見学を終え、気がつけば日本領事館の前に出ました。
そうだ、昨日のお礼をKさんに言おう!再び日本領事館の扉をたたく私たち。昨日の白髪のロシア人の男性が出てきて、Kさんを呼んできてくれた。
「お礼を言いに来る人は初めてです。」
とKさんは喜んでくれて中に通してくれました。
なんと、あれから3軒も同じようなスリの被害があったそうで、加藤さんはてんてこ舞いだったらしい。おつかれさまです。
「パスポートが戻ってくるなんて、本当に運がいいですよ。」
ちょっと挨拶にいったつもりが、領事館のお仕事の話や家族のこと、日本でのKさんの仕事のことなど、さんざん談笑してきました。
そんな訳で、一件落着。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
これからは、バッグの扱いは慎重にしないと。あと海外旅行のお供に戸籍謄本。
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