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給食支援の届く先―ルワンダ バンダ村
TABLE FOR TWOは、飢餓と飽食という世界規模で起こっている相反する食の不均衡を同時に解決することをミッションに掲げ、2007年に日本で立ち上がったNPO法人です。以来、多くの法人・個人の皆さまにお力添えをいただき、今年の10月に設立15周年を迎えます。
15周年を記念して、TABLE FOR TWOとして初となるnoteの公式アカウントを開設しました。2022年9月~12月の間、設立後15年を振り返り、TABLE FOR TWOが歩んできた道のり、現在、そして今後について発信してまいります。
TFTの支援先の一つ、ルワンダのバンダ村。TFTはここで10年以上に渡り支援を続けてきました。
電気・水道・ガスのない小さな農村 バンダ村
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ルワンダは、穏やかな丘陵と段々畑が広がる風景から「千の丘の国」と呼ばれています。1994年に起きた「ルワンダ虐殺」で経済は一度崩壊しましたが、現在は「ICT立国」を掲げ、都市部を中心に若手起業家を多く輩出するなど、急速な発展を見せています。
TFTの支援先のひとつは、ルワンダ南西部に位置する、山々に囲まれた農村「バンダ村」です。この地域は、インフラが整っていないために経済的な発展が難しく、平均世帯収入は1日あたり1ドル以下で、国内で最も貧困率が高い地区です。
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貧しい家庭の子どもたちにとって家業を手伝うことは、学校にいくよりも優先度が高く、TFTが支援を始める前は、3人に1人は小学校を中退してしまう状況でした。
支援開始以降は、小学校の就学率が100%近くまで向上し、2018年には村で初めての大学進学者が現れました。その後も輩出されている大学進学者たちは、村のヒーローです。
村で初めての大学進学者
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ジェラルドくんは2018年、奨学金を得て、村で初めて大学へ進学する事ができました。
「学校給食のお陰で、食べるために働きに出ることなく勉強に集中できるようになり、人生が大きく変わりました。給食提供が始まったばかりの頃、すぐに支援は終わってしまうだろうと思っていました。しかし、支援は継続し、自分たちの成長を遠く離れた日本の人たちが見守ってくれていると実感しました。今度は自分たちの世代が、貧困から抜け出す原動力となりたいです。」
ジェラルドくんは小学生の時に一度、経済的な事情から学校を中退して街に出稼ぎに行っていました。給食提供をきっかけに学校に戻る事ができた一人です。未来に向け、力強い言葉を語ってくれました。
バンダ村の学校給食
バンダ村では、現在幼稚園3園と小・中学校2校の生徒2,345人に給食を提供しています。
ルワンダのおかゆ「ソソマ」
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バンダ村では、ソソマと呼ばれるおかゆを提供しています。きび、大豆、トウモロコシの粉に砂糖や牛乳を加えて作ります。
大きな釜が並ぶ村の給食室では、村の学校へ提供する給食を効率よく作ることが可能です。
大釜をかき混ぜる様子(力仕事です!)、給食を運ぶ「ポーター」の様子(頭に載せる姿はアフリカならでは)、給食を受け取りうれしそうな子どもの笑顔、どれも給食があってこその風景です。
バンダ村の特別食プログラム
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バンダ村では、学校給食プログラムに加え、栄養失調と診断された子どもに対する特別食プログラムもサポートしています。貧困率の高いこの地域では栄養失調の子どもが多く、常時60名ほどの子どもが特別食の支援の対象となっており、通常の給食で提供しているお粥に加えて、緑黄色野菜や豆類、卵などを含む特別食を週に3回提供しています。
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こうした給食には、コミュニティ菜園で収穫された野菜や、給食室の近くに設置された小規模な養鶏場でとれた卵を使っています。
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このプログラムはルワンダ政府の保健センターと共に実施しており、保健師がプログラムに参加している子どもたちの健康状態を定期的にモニタリングしています。また、保護者に対して、家庭でも栄養のある食事を提供できるよう、栄養に関する知識や家庭菜園についても指導しています。
プログラムが始まった当初は、最も深刻なレベルの栄養失調と診断される子どもが多くいましたが、最近は軽度の栄養失調と判断される子どもが増え、改善の傾向が見られます。
栄養失調の原因のひとつは…
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2021年、新たに特別プログラムの支援対象となった子ども向けの健診と検査で、約6割の子どもの栄養失調の主な原因が寄生虫と分かり、必要な処置が施されました。バンダ村を担当する保健師は子どもたちの健康を妨げるものとして、寄生虫にも注意を払っています。
支援から自立に向けて
ゴミを再利用した固形燃料(ブリケット)
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給食の調理に薪を使う代わりに、おがくずなどのゴミを再利用して作った固形燃料(ブリケット)を使用し、森林の伐採を防いでいます。バンダ村では、ブリケットを作り始めてから薪の使用を3分の2の量に削減でき、環境保全につながっています。
ペレット状にするため圧縮する機械にかけますが、電気の無い中での作業は力仕事です。※動画は音声が付いています。ご注意ください。
菜園での工夫
菜園では収穫量を増やす為に様々な工夫をしています。例えば、盛り土で栽培すると、土地面積に対して多くの作物を作り、水の浸透をよくすることができます。栽培・収穫したものは学校給食に活用するだけでなく、村の人に菜園指導を行い苗を提供しています。
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手元にある資源をいかに活用するか、自立に向けてより良い手法やサイクルが模索されています。こうした姿勢は、日本の私たちも日々刺激をもらい、学びを得る部分です。
その日を生きるのがやっとの状況では、金銭的にも精神的にも、先々のために何かをするというのは大変難しいことです。将来のために勉強をする、収穫量アップのために様々な栽培を試すなど、「今」だけでなく「将来」を考えるために背中を押す、TFTは給食支援を通じてそんな役割を担いたいと思っています。今後もバンダ村の伴走を続けて参ります。
9月に発行した最新の支援先レポートでは、より時事性の高い内容をお届けしており、アフターコロナを生きる子どもたちについても触れています。よろしければ合わせてご覧ください。
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