飢餓や肥満をめぐる世界の現状(2024年版)
SDGs達成目標まで残り6年と迫る中、世界の飢餓人口は依然として高い水準にあり、約15年後退した2008〜2009年のレベルだと考えられています。SDGs目標2「飢餓をゼロに」の達成に対しては依然として大きく遅れをとっています。
2024年7月に国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)は「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」報告書を発表しました。
本記事ではこの報告書の内容を抜粋してお伝えします。
飢餓の現状
栄養不足蔓延率(※)は2019年から2021年にかけて COVID-19パンデミック等の影響で急増した後、過去3年間はほとんど変わっていません。
2023年には全世界で9.1%、つまり11人に1人が飢餓に苦しんでいます。推定で7億1300万人から7億5700万人が飢餓に直面しているとされ、これはCOVID-19パンデミック前の2019年に比べ約1億5200万人も増加しています。
地域別に見ると、アジアではほぼ横ばいである一方で、アフリカでは飢餓が今もなお増加しています。アフリカでは人口の20.4%(約5人に1人)が飢餓に直面しており、この割合は他の地域よりも圧倒的に高い状況です。
TFTの主な支援先である東アフリカは、28.6%(3〜4人に1人)とアフリカの中でもさらに高い水準となっています。
さらに、2030年までには約5億8200万人が慢性的な栄養不足に苦しむと予測されています。これは COVID-19パンデミック前の予測と比較して約1億3000万人多い数値となっており、SDGs目標2「飢餓をゼロに」の達成への課題が浮き彫りとなっています。
また、2030年の飢餓人口の半数以上(約3億800万人)がアフリカに集中すると見込まれています。
飢餓の主な原因としては、気候変動、貧困、紛争、そして経済的不均衡が挙げられます。特にアフリカでは、これらの要因が複合的に影響し、飢餓の問題を一層深刻化させています。
肥満の現状
一方、肥満の問題も深刻です。2022年には世界の成人の43%(約2.5人に1人)、約25億人が肥満または過体重(BMI25以上)であり、1990年の25%(約4人に1人)から急増しています。
成人の肥満率はさらに増加すると推定されており、2035年までに世界の成人の半数以上が肥満または過体重になると見込まれています。
肥満の問題は高所得国に限らず低・中所得国でも深刻化しており、アフリカなどの国々では感染症や栄養不足といった問題に加えて、肥満や過体重などの非感染性疾患のリスク要因が急速に増加しています。これを「栄養不良の二重負荷」と言います。
同一国、同一コミュニティ、同一家庭内、さらには個人内で、栄養不足と肥満が同時に存在するという事態が生じているのです。
肥満の増加原因としては、高カロリー食品の普及、不十分な運動、そして都市化に伴う生活環境の変化が挙げられます。
低・中所得国では、栄養価の低い高脂肪、高糖、高塩分の食品が安価で入手しやすくなっており、これが「栄養不良の二重負荷」を引き起こしています。
TABLE FOR TWOは飢餓や栄養失調の問題と肥満などの生活習慣病に関する問題を同時に解決することを目指し、今後も取り組みを続けてまいります。
参考
The State of Food Security and Nutrition in the World 2024
https://www.fao.org/publications/home/fao-flagship-publications/the-state-of-food-security-and-nutrition-in-the-world/en
世界の飢餓人口、3年連続で高止まり: 国連報告書
https://ja.wfp.org/news/SOFI2024_report
Obesity and overweight
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/obesity-and-overweight
World Obesity Atlas 2023
https://www.worldobesity.org/resources/resource-library/world-obesity-atlas-2023
The double burden of malnutrition: policy brief
https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/255413/WHO-NMH-NHD-17.3-eng.pdf?sequence=1