ベンチャー投資家が教える『イケてるスタートアップ・サービス』を見極める質問リスト〜資金調達をしたい方へ〜
どーも、SHUNです。
ベンチャーキャピタルの投資家として、日々様々なスタートアップの社長・経営陣と打合せをしつつ、投資支援すべきかどうかを判断させて頂く生活ですが、もちろん見させて頂くポイントというのがございます。投資家に興味がある方だけでなく、これから資金調達をしたいスタートアップの方々の想定質問・サービス検討のポイントとして、個人的な事業デューデリジェンスの観点をメモ書きします。日本から良いサービスが生まれればという想いで書きました。興味ある方はご参考ください~。
※一度書いたデータが全て消えたので、やる気出ずに書き直して4割くらいの文量になってしまいましたが、、、悲しい。。
※事業デューデリジェンス(事業DD)・・・投資対象企業の価値・成長性やリスクなどを評価する試み。他に、財務DDや法務DDなど多角的に評価する
■投資家側のスタンス
・質問は短く誘導はしない。ベンチャー側に回答させる
-気になった点の質問やアドバイスは実施する
・論理的かつ簡潔に素早く回答できるかをウォッチする
-聞いていないことを脈絡なく、ぐだぐだ回答しているのはNG
-質問の意図の理解と想定される疑問への丁寧な補足
-結論→理由、大(概要)→小(詳細)だと聞きやすい
-専門用語への気遣い
-データドリブンでの回答(CEOの事業数値の理解とスラスラさ)
-互いの時間の尊重
・事業を理解しつつ、赤信号・黄信号を探知する
・知らないことは素直に質問する
・仮説検証の速度、広さと深さをみる
-そのベンチャーだけが知るインサイトや驚きがあるか
・都合の良い事実に焦点を当てるのは仕方ないが、バランスが重要
-不都合な事実のOPENさ・誠実さはGood
-都合の良い事実の誇張のし過ぎ・ミスリードはBad
・社会的意義=そのサービスが本当に世の中を良くするか
・資料のわかりやすさとデザイン性の良さ
-何をアピールしているのか、何を書いていないのか≒書けないのか
・スタートアップと投資家は対等
-与えられる価値は何かも伝え、スタートアップが成長するための良い選択肢となった場合に投資実行となる
-自立した経営ができること。投資家の支援に依存するスタンスはNG
・出資に必要な情報、リターンをイメージしながら、ヒヤリング
・もちろんステージ(シード、アーリー、ミドル、レイター)によって、見る観点は異なります。ステージが上がると出資時の時価総額も通常上がり、取得できる株式のシェアが下がることで投資家のリターンも減少するので、それなりの時価総額に応じた事業数値を当然求めます。時価総額の高さで投資見送りのパターンは本当にあるある。適正な時価総額の数値は、起業家や投資家NWで先んじて仕入れておきたいところ
・スタートアップはその不確実性から、仮説の上に仮説を重ねて希望的な推測に近づきやすいので、論理的繋がりや根拠、それ以外の可能性については見定めないといけない。例えば、下記の認知バイアスは注意するところ
075 擬似確実性効果(pseudocertainty effect)|関連|
多段階の意思決定において、先行した選択肢の不確実性を無視し、後続の段階でのみ確実性の高い選択肢を選ぶ傾向
142 仮説適合バイアス(congruence bias)|結果|
仮説の反証は考えず正しさのみを証明しようとする傾向
以下、項目別の想定質問です。
■事業概要(問題と解決方法)
・誰のどのような「問題」をターゲットにしていますか?
// 鎮痛剤(must to have)なのか、ビタミン(nice to have)なのか?
=切実なニーズなのか、あったらいいものなのか問題の質を見極める
// その問題はなぜ発生しているのか=構造・原因の根深さ・前提の脆さ
// 売上が伸びている=市場ニーズがあるという結論は注意
(売上構成の大部分&非特需が想定ニーズと一致してPMFといえる)
// 技術や商材ドリブンだと質が低くなりがちなので注意
・どのように問題を「解決」しますか?
-なぜ、その解決方法が良いのですか?
// 他の方法ではだめなのか。仮説検証や論理から導かれているか
// 特定のPFに依存しているサービスはあまりよくない。
自分で価値を作り出し、コントロールできるビジネスか
-その解決方法は、どのように世の中や行動を変えますか?
// 与える影響や発展性・変化の精緻なイメージ
// 生まれるメリデメ。導入を阻害するハードルの乗り越え方
・なぜ今、このサービス(製品)が適しているのですか?(Why now)
// 市場の変化を熟知し、活用できていると良い
・事業は固まっていますか、それとも模索中ですか?
// 単なるアイデア+検証段階なのか、後は伸ばすだけなのか?
// 商材や技術が当てはまる問題を探しているのは要注意
・本事業において、仮説や前提が実際と違い驚いた経験はありますか
// 事業をしているからこそ分かった重要なインサイトは何か
-今まで重要だと思って実施していたが、実はそうでなかったものは?
// 当たり前を疑う姿勢と、不可逆的な判断からの脱出と適正化
・なぜ、あなたがするのですか?(原体験、動機、本気度。Why you)
// その問題への深い理解があるか。困難や他の魅力的な機会で去らないか
// 熱量や想い、ドメイン知識と洞察の深さは大事
// 金儲けの色合いが強いとコミット・組織作りでBad
// かっこいい、有名になりたい、起業したかった、自分を試したいもBad
■Bizモデル(ステークホルダーと収益モデル)
・ステークホルダーと、お金の取り方、お金の流れを教えてください
// 主要関係者は誰なのか。各役割は何なのか
// 課金はいくらで、年間契約なのか月次契約なのか。自動更新なのか随時更新なのか。従量課金なのか定額なのか。イニシャル費用もあるのか等
// 高単価であることは重要。低単価なら、なぜそんなに安いのか
// キャッシュ・インはサービス提供前なのか後なのか
// 原価は何で、粗利はいくらなのか。改善の余地はあるのか
// 関係者それぞれが適切なメリットとリスクを持っているか
// 提携先との力関係や依存関係は問題ないか
■経営陣・組織
・各役割と経歴について教えてください
・なぜ経営陣は貴社にジョインしたのでしょうか
・強みは何でしょうか
・弱み・不足している役割は何でしょうか
・大切にしている価値観は何でしょうか
・経営で参考にしている社長や企業はいますか
・最大のミスはなんでしょうか
・現在の組織人数・体制を教えてください
- 外部に委託している業務はありますか?
・開発が外部の場合、内製化は実施する予定ですか
// コストやステージ見合いであるがBizDevOps内製化が望ましい
・指示系統や意思決定はどのようになっていますか
// 社長の目の届かないところでも統制があるか、スピード感はあるか
・CEOは普段どのような稼働配分で仕事をしていますか?
■実績、集客、収益性
・直近の月次売上、ユーザ数と平均単価を教えてください
// ユーザ数は課金ユーザ数で答えて欲しい。課金ユーザ数が少なくてもログインしたことのある無料会員等で大きく見せない方が良い
// 平均単価は一部の顧客の支払いが大きいだけではないのか、キャンペーンで少額の課金ユーザが多いだけではないのか等、ユーザ状況を正しく理解できるように補足いただけるとありがたい
・直近の月次売上推移・ユーザ推移を教えてください
// 成長しているか+その理由、またはなぜ成長していないのか
// 成長率の開始時点や期間の設定は恣意的でないか
// グラフや数字の見せ方、強調の仕方に謙虚さがあるか
・あなたの作る物は何でも購入したいというファンはいますか?
-その理由は?(心理的(感情的)価値、行動的(論理的)価値は?)
・顧客の声の収集頻度と手法は何ですか?
-どのような良い意見と悪い意見が上がってきてますか?
-どのようなデータを取得し分析できていますか?
-月にどの程度顧客の意見・データから改善をできていますか?
-社内にはどのようにして顧客の声が共有されていますか?
// 顧客を起点に製品開発・改善ができているか、顧客との関係性
・集客チャネルとそれぞれの獲得割合を教えてください
// アウト・インバウンドの割合、各要素内の割合で聞くと分かりやすい
// 把握していないはBad。広告依存過ぎはBad。オーガニックはGood
-代理店活用の場合、どのような料金形態で契約していますか
・代理店があなたの商材を積極的に販売するメリットは何ですか
・顧客が接する代理店において、その代理店の影響力はどの程度ですか
// 顧客数だけなく、営業・導入ができてこそ販売チャネルの価値あり
-CAC(顧客獲得単価)はいくらですか?
// 過去どのように変化し、今後どのようになる変化する想定ですか
-機能した集客・機能しなかった集客は何で、今後必要な検証は何ですか
// 集客、CACを下げるためにPDCAはどんどん回すべき
-(法人Bizの場合)商談率、成約率、契約までのリードタイム、季節変動有無、導入・運用までのスムーズさについて教えてください
// ズレがちな定義。計算式は補足が必要
-断られる理由、ためらう理由はなんですか。克服方法は何ですか?
// 改善・コントロールが難しい致命的な課題ではないか
・LTV(顧客生涯価値)はいくらですか?
-解約率は何%ですか?何年使う計算ですか?
// データなくてもそれはないだろうという利用年数は避けたい
-解約理由Top3は何ですか?(料理Bizでまずいとか根本否定はBad)
-何割が正しい(狙い通りの)顧客ですか?
// 解約しないがズレた顧客は対応コストや品質改善的にも避けるべき
-低解約率にするための戦略=やめづらい仕組みは何ですか?
(データ囲い込み、多数関係者巻き込み、解約予兆検知等)
・ユニットエコノミクスは何倍ですか?
// 少なくとも3倍以上は欲しい
・CACの回収は何ヶ月ですか
// 初月回収はGood
・現行のコスト構造を教えてください
// 何に費用がかかっているのか。固定費が高すぎないか
-コスト削減のKPI、予定、工夫について教えてください
■市場規模と成長性
・市場規模はどの程度ですか?
// TAM、SAM、SOMのどれについて話しているのか明確化すること
// 算出の情報源とロジックが適切であること&複雑に過ぎないこと
// 1,000億円以上は欲しい。○兆円は絞って欲しい
// 市場の1%でもとれば、というロジックは誤り。
その1%にあなたのみを選択する明確な理由があるのかが重要
・市場成長はどの程度であり、伸びる要因は何ですか?
・市場が成長しない場合、何が要因だと考えられますか?
// 外部要因への耐性があるか(法律変更への弱さ等)
・追加で拡大できる市場と規模はどの程度ですか?
// 市場が小さい場合には特に重要
■競合環境と真の強み
・どのような競合環境ですか?
// 具体的な競合名と違いは何か?ピッチ資料でも直接競合に全く触れないベンチャーもいるが、調べれば分かるので隠さない方がよい
// 2軸で分けるのは良いが、その2軸である必要性は何か。恣意的でないか
-競合と比較した場合の差別性と強み(参入障壁)は何ですか?
// 大資本を持つ企業が参入してきた場合でも勝てるのか?
// 海外企業が参入してきた場合でも勝てるのか?
// 魅力的な市場には必ず競合が現れるという前提で考えられているか。
他に選択肢がないからでなく、他があっても使われる理由はあるか
// 自身の強みを分かっていない企業も多い。
ユーザからみた差別性とその裏側の模倣困難性は分けて考えること
-競合のユーザ数、平均単価はどの程度でしょうか?
-競合の良さ、強み、絶対勝てない部分は何ですか?
// 競合の良い点は積極的に言わないのが通常だが、冷静な分析がみたい
-競合はどのような戦略をとっていますか?
-競合に一番されたくないことは何でしょうか?
・された場合の影響と対処は?
-ユーザはどのようにあなたの製品にたどり着き、選択されますか?
・他社でなくあなたの製品が良いと初期判断される点はなんですか?
// ユーザは違いをぱっとみても分からない。その工夫は何か
// 同時比較をしたり、差異に詳しいから価値を感じるのではなく、
初期的な価値のわかりやすさは重要
086 区別バイアス(distinction bias)|基準|
2つのものを同時に比較すると差異による価値を過大評価する傾向
■事業計画とEIXT
・売上10億円、当期利益1 億円規模になるのはいつですか?
-そのために必要なKPIと具体的な目標数値は何ですか?
(顧客数●万人や顧客単価●万円など)
-どのようにして、その数値を達成する計画ですか?
// 妥当な具体的なロジック、蓋然性はあるか。無理がないか
・過去、株主に提示した事業計画の予実のズレの程度とその理由は何ですか
-現在の最も大きな課題は何ですか
・再現性が確保できていることとそうでないことは何ですか
・現在の組織人数・体制が将来どのように変化するか教えてください
-どのように採用を進めますか?採用の魅力付はなんですか
・あなたの事業が失敗するとしたら、その理由Top3は何ですか?
-1、2、3年後にあなたが抱えている重要な問題はなんですか?
・EXITは何ですか(IPO or M&A?)
-それはいつですか?
-EXIT時はどの程度の時価総額を想定していますか?
// PER・PSR、類似企業、エクイティストーリーは?
・主幹事証券・監査法人はいますか?状況・課題とスケジュールは?
■ファイナンス
・残キャッシュとバーンレートを教えてください
// ランウェイの確認
・前回はいついくら調達しましたか?
-現在の社長・経営陣の持株比率、主要株主の名前と比率は何ですか?
// ベンチャー側に十分な持株があるか、微妙な株主が入っていないか
-Pre時価総額はいくらでしたか?
・今回の調達金額はいくらですか?
-Pre時価総額はいくらですか?
// 高すぎないか。実績やEXIT踏まえ適切な数値感か。具体的に何を達成したのか。時価総額の根拠は何か
-リード及び調達状況を教えてください
// 必要資金は集められるのか。他からみて魅力的なのか
-契約と入金時期はいつですか?
-資金使途は何ですか?
// 開発や借金返済でなく、事業成長=売上UPに使って欲しい
・今後の調達計画はどのような想定ですか?
// 必要資金の想定&持株の希釈化はどこまで進むのか
・借入はどこからいくらしていますか?
-返済計画はどのような予定ですか?
-今後の借入計画は何ですか?
■参考になりそうな書籍など
下記も参考になるかと思います。
日本には余りこのような投資家サイドからの質問集はないですが、海外のWebにはDDの質問リストが多く公開されています。良いリストはストックしていたのですが、データが消えてしまったので、各自色々検索してみてください。参考になる点も非常に多いかと思います。
ニーズがありそうでしたら、また書いていきたいと思います。
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