苔を意識するということ
ルーペを持って最初の旅先はたまたま盛岡だった。
盛岡で苔が見られそうなところを探してみると、市内では城跡公園ほかいくつかの庭園が見つかった。遠野まで足を伸ばす予定もあったのでそちらも調べておいた。
実際に苔を意識して歩きはじめて気づいたことは…苔って本当にそこらじゅうに生えてて、どこででも見つかるということ。そして、市街地の身近なところで見つかるような苔は、おそらくありふれた数種類のみだろうとたかを括っていたのだが、どうもそうでもないみたい。そして、とにかく種類を特定することが、実はものすごく難しい!
実際に目でみるのと、図鑑に載ってる写真とを見比べても、よくわからない。図鑑に載ってる写真は、かなり寄った写真だからか、苔というより草みたいに写っているし、本が文庫サイズなので写真も小さいし…。成長具合によって様子が結構違うみたいで、すべての季節や条件の写真が出ているわけではないためにわかりづらい。
本体をルーペで見てみても、何か特によくわかったという気がしない。そもそも、どれもこれもをルーペで見るには大変なくらい、そこらじゅうに苔は生えてるし。
正直いってここまで種類の特定が難しいとは思っていなかった。
とはいえ、初めて苔を意識して歩いてみたことで、収穫もあった。苔の生え方って実はいろいろだということに気づいたのだ。
まず、生えている場所がいろいろ。道路脇のアスファルトの目地みたいなところに生えてたり、土の上に生えていたり、石の上に生えていたり、樹木の表面に生えていたり。すぐそばであっても、違う種類(に見える)が生えてたりする。
生え方もいろいろ。こんもりと生えているもの、コロニーが点在するもの、びたーっと平たく生え広がるもの。。。
『ときめくコケ図鑑』によれば、生える場所や生え方が、種類を特定する手がかりになるらしい。つまり種類によって生育環境を選んでるらしいのだ。同じような種類のものが、たまたま環境が揃ってあちこちにいろんな生え方になっているというわけじゃないらしい。
もうひとつ気づいたのは、そもそも旅に出なくても、自分の生活圏にもたくさん苔があるなということ。外で苔を見ながら、そういえばうちの近くのあそこやここに生えてたな…というのをたくさん思い出した。帰宅後、あれらをまずじっくり観察して、種類の特定を試みよう。
さて、盛岡の旅で特に興味深かった苔をいくつか。
城跡公園の石垣にたくさんみられた、水玉状に点在して生えてる苔。苔といえば「みっしり」生えるもので、こういうのはあまり見たことがなかった。
これはたぶん、「クロゴケ」というやつじゃないか。というのを、2日めくらいになってやっと気づいた。図鑑には、こんな生え方のは他に出てないし。高山の苔だそうだが、城跡公園は高山でもないのにね…盛岡の気候が高山ぽいのかなぁ。
同じ石垣でも、違う苔が生えてる面もあった。
向かって右の面はクロゴケ(?)のみ、左の面はクロごけの他にもっと広範に広がるタイプのが生えている。日当たりとかの条件で違ってくるのか。おもしろい。
その城跡公園からほど近い、「賢治の井戸」の近くにある「下の橋」は木でできていて、風情のある橋なのだが、その欄干に苔発見!
欄干の丸太が裂けて、その隙間にだけ苔が生えてるの!カワイイ!
モコっと盛り上がって生えているところもあれば、赤いものがニョキニョキ出ているところもある…これはいわゆる「蒴」という、胞子が入ってるところか?
この特徴的な赤い蒴は「ヤノウエノアカゴケ」かなぁ…緑色のモコっとした方は違う種類かも。うーん、難しい。苔の世界はかなり奥深そうである。
つづく。
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