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「不安な気持ちも大事にしてあげてくださいね」はたらく言葉・インタビューvol.1 りつこさん

…そんなこと言われたら、泣きそうだよね、普通に大人でも。
そう言うと、りつこさんは「そうそうそうなんだよ」と笑顔になった。

大人も子どもも。「あなたの気持ち」をていねいに

その幼稚園では、ユニークな教育を実践しているのだという。
基本的に教室は屋外の自然の中。
子どもたちは、自分で呼んでもらいたい名で呼ばれ、今日なにをして過ごすかは毎日自分が好きに決めていい。
そしてなによりも、自分の気持ちをていねいに感じていくことを大切にしている。
子どもたちは、スタッフから毎日自分の気持ちをたずねられる。
その時感じているいろんな気持ちを、そのまま言ってもいいし、言いたくない人は言わなくてもいい。
そしてどんな態度も、評価されない。叱ったり、褒めたりもない。

りつこさんは、2020年の春から、この幼稚園の現場実習生になった。
毎日のミーティングで、毎週のレポートで、大人であるりつこさんにも、先輩スタッフたちはたびたび気持ちを聞いてくれる。

「“どう感じた?”って。
で、話せなかったら話せなくてもいいし。
疑問があったら疑問を返してもいいしって。
“毎日どう?”“心配することはない?”とか言って。
終わってからも“なんかある?”って聞いてくれて。
聞いてもらえるってほんとに大事なことだなって。
自分がホッとするっていうか。
雑談みたいなことを話すだけでも心が落ち着いたりするんだなってことを、ほんとにすごい感じてるかな」

どんな自分でもいい

スタッフに加わって1ヶ月半。
自分の中でなにか変わりましたか?

「どんな自分も自分でいいって思えるシーンが少し増えてきた気がする。
前はテンションを上げなくちゃいけないっていうか、楽しい自分が好きだけど、
それに持っていきたいみたいに、ちょっとがんばる自分がいたんだけど、いやいやそのままでいいんだな、みたいに感じられるようになってきたところもあるかな。
ありのままでいいよって思って、ちょっと楽になってきたっていう感じがする。
日々、なんかできてるわけじゃないけどいいなって思える。
でも嫌な時もあるけどね、プレッシャーに押しつぶされそうになって」

新型ウィルス感染症拡大防止のため、しばらくオンラインのみでの実施だった開園が、時間を短縮して実際の登園に切り替わるにあたり、園児たちとうまく接することができるか改めて不安になったという。
不安な気持ちをレポートに書いたら、先輩スタッフから返信があった。
「“私は心配していないから。りつこはりつこのありのままでいいんだよ。そういう不安な気持ちも大事にしてあげてくださいね”って。ああそうだぁって」

「気持ちにいいも悪いもなくて。
嫌な気持ちだったり悲しい気持ちだったり、どんなことも、気持ちとしてはアリ。
いけないことではないし、思って当然だし」

どんな気持ちであっても、自分の気持ちを味わうことが確保され、意思や好みが尊重された場での子どもたちは、とてもいきいきと過ごせているように感じるそう。

私はどう思ってるんだろう?

そんな子どもたちと同じ時間を過ごすことで、
「自分自身でも、気持ちを感じるっていうのをすごいやろうと意識するようになったかな。
自分の感情って押し殺して今まで生きてきたから。
表現するのは、私あんまり得意じゃないからできなかったりするのもあるけど。
人に合わせたり、いい子ちゃんでいなくちゃとか、自分の気持ちを押さえたりしないといけないシーンが、今まで生きてきた中で、たぶんすごい多かったと思うから。
でも、自分がどう感じているとか、自分のどうしたいと言う気持ちって肝心だなって思ってるから、気持ちを自分が味わいたいなって思ってる。
“私はどう思ってるんだろう?”というのを常に思ってる。
それが嫌なことでもいいしって。
どう思ってるっていうのを感じることが、まずはできたらいいなって」


Vol.1りつこさん(2020年5月)/「はたらく言葉・インタビュー」では、仕事や働き方、生き方にまつわるインタビューを紹介していきます。

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ユッカ
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