【 読書レビュー 】ストーンサークルの殺人
ストーンサークルの殺人 M・W・クレイヴン著/東野さやか訳
古代、儀式を行っていたとされるストーンサークルで、被害者達はまるで生贄のように火炙りにされた無残な状態で発見される。 このことから、犯人は、イモレーション・マンと呼ばれるようになる。イモレーションとは、生贄にして火あぶりにするという意味だ。
停職中のワシントン・ポー(38歳)は、ハードウィック・クロフト(地名)で愛犬のエドガーと暮らす生活に満足している。何よりこの土地が大好きなのだ。
このまま刑事を辞めてもいいや…と思っているところに、狂気的な連続殺人事件のご遺体になぜかポーの名前と「5」という数字が刻まれていて、もしかして5番目の被害者はポーなのか?
元部下で、現在はポーの後釜になったフリン警部(女性)が、ポーの元に駆けつけ、部長刑事として復職となる。
イモレーション・マンの正体と事件の真相を追うポーとティリーのコンビ誕生のプロセスがとてもいい。
ティリーブラッドショーは、ポーの不在中に配属された情報分析官である。
IQ200近い頭脳で、コンピューターと数学が得意で大学の博士号、修士号を取っている天才ではあるが、人とうまく接することができず、職場ではいじめにあっている。
自身も子供の頃にいじめられた体験を持つポーは、ティリーのいじめを知るや瞬く間に解決してしまう。(スカッとジャパンです😄)
事件を追う中で、徐々にポーはティリーへの理解が深まっていくと共に、ティリーもポーへの信頼が強くなる。
ティリーが初めて友達ができた…と、涙ぐむところや、ポーとランチをして大喜びするというエピソードに、しばしば共感する。
ラストに火災に巻き込まれた(自分から飛び込んだのだが)ポーが、どうやって救出されたのかを知ってポーが涙するところは、こちらもホロリとしてしまう。
ハードボイルドで暴力的な刑事の設定が多い中で、ポーのキャラは時としてキレる時はあっても、行き過ぎず、ティリーへの友情、親友への思いや、正義が行われないことに対しても涙を流すことができ、とても感情豊かで熱く魅力的な人物なのだ。
話の展開も分かり易く、事件の悲惨な描写は第三者の視点で淡々と書かれているし、暴力シーンも少な目なのでそれほど読むのは辛くない。(個人差はあると思うが)
ふざけすぎないユーモアのエッセンスも、ほど良く効いている。
シリーズを読むには、主要な登場人物を好きになれるかどうかが大事な要素だが、このシリーズは文句なく好きです!
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