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発刊順:42 NかMか
発刊順:42(1941年) NかMか/深町真理子訳
情報部から秘密裡にナチスの大物スパイ<NかM>の正体をつきとめるよう依頼を受けたトミーは奮い立った。だが、長年おしどり探偵として活躍してきたタペンスにも今度ばかりは打ち明けられない。気の毒とは思いながらも、トミーは南イングランドに赴いた・・・しかし、タペンスとて一筋縄でいく女ではない。得意の機知で夫の行動を探り当て、騙されたふりをしてトミーの任地へ先まわり。なんとか情報部を説得した2人は、かくて大規模なナチス・スパイ網のまっただなかに飛び込んでゆく。ユーモアに溢れる異色冒険スリラー。
トミー&タペンスシリーズの3作目。
初出の「秘密機関」からすると、およそ20年くらい後のお話。
時代は、第2次世界大戦の真っ只中。1939年9月に開戦し、終戦は1945年なので、今作が出版された時は、戦況がどうなっていくのか混迷と不安の中にある世界情勢だったに違いない。
戦時中、中年となったトミー&タペンスは国のために何かをしたいと思っても、若い者にまかせなさいと言われてしまう。(この時代は40代で老いぼれ扱いなんですね・・・)
情報部のグラント氏がある話を持ち込むまでは。
その話とは、イギリス政府内にナチスのスパイがいて、そのコードネームがNとかMであり、リーハンプトンにあるサン・スーシーという下宿の名前も浮かび上がっている。
そこへ隠密でスパイを探しに乗り込むトミー。
タペンスはどうする?
物語の展開の詳しいことは書きませんが、戦時中の執筆ということで、
この物語の中では、戦争について、ナチスについて語る場面が多々ある。
トミーはうなずいて、自分に言わせれば、あのヒトラーとかいうやつは縛り首にされるべきだ、と述べた。狂人ですよ、あれは。そう、まさしく狂人です。
タペンスも、
「あの電撃作戦とやらも、ドイツの最後のあがきにすぎませんよ。なんでも、ドイツ国内での物資の不足は、ひどいものらしいですからね。工場には不満がうずまいているそうですし、そのうちきっとそれが爆発しますわ」
また、若いシーラは
「あたしが嫌いなのは、戦争につきまとうお題目なんです。あのひとりよがりな―いやらしい愛国心なるものなんです」
「愛国心?」トミーは驚いて問い返した。
「そうですわ。なんでもかんでも祖国、祖国、祖国!祖国を裏切るとか―祖国のために死ぬとか―祖国に奉仕するとかね。いったいなぜ人間にとって祖国がたいせつなんでしょう?」
トミーは、キャヴァエル看護婦の言葉を引用する。
「愛国心だけではじゅうぶんではありません…敵にたいして憎悪の念をいだくことがあってもならないのです」
登場人物達の言葉を借りて、クリスティーの戦争を決して許してはいけないという強い思いが伺える。
物語の中盤に、下宿の幼子が誘拐される事件はなぜ起こったのか。
トミーが行方不明になり、タペンスは敵におびき寄せられて、敵地で捉えられる。
探していたスパイの正体がわかった時に、でた言葉は「がぁがぁ、ガチョウのお出ましだ!」
勇敢な2人の冒険スリラーに、ミステリ要素を盛り込んだ傑作!
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2022年10月26日読了