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フィクション怠惰王

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一応創作の顔をしている作文
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記事一覧

銀杏と龍

 東京、という言葉の響きとは裏腹に、誰もが心を安められるようなスポットは、至るところに。…

安原美月
2週間前
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クリスチャン・タイムズ

 雪虫が多いとか、カマキリの卵付きが高いとか、その類。なんて前時代的な!  雪の降り方は…

安原美月
1か月前
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吸血蝙蝠

身を亡ぼすための飛行機に乗った。北への時速は900キロ、極地ですら死を意味しない、いきいき…

安原美月
1か月前
2

虫食い旅行記 第二十八章 「極めて排他的なニワトリの集落」

峠ひとつ越えると何もかもが変わるこの世界では、熱帯雨林の山のてっぺんで尋常でない大風が吹…

安原美月
1か月前
3

パスタソース

夢を見た。その時のそのまんまのようで、しかし体はふたつとも動かないでいて、俺はそれを押し…

安原美月
5か月前
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住み処

「そ……ね、落ち葉の……ら大……虫!す……く…いて…」 トントントントン。女の手元から調…

安原美月
6か月前
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ホームドア

数直線みたいなJR中央線の、三両目に立ちっぱなし。見渡したって楽しそうな人なんか1人もいない。挙動不審な私を咎めすらしない。だって縦軸がないんだもの。 ホームドアなんか作るな。優しさではなくて、冷徹だから。 私はいっかい、見てしまったことがある。現地だったかもしれないし、動画だったかもしれないし、現地で見た動画だったかもしれない。あの子には表情があった。 ホームドアよりいっそ、墓石を建ててしまえばいい。水子地蔵みたいなのでもいい。中央線の駅ごとに立ち並ぶ緩慢な悲しみは、どの

イージーマネー

毎秒毎秒、当たり続ける宝くじのように私を蝕んで幸福は、にっこり笑顔でありがとう!って受け…

安原美月
7か月前
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天使と僕ら

真夜中の空は一面の曇り空  でも星が透けていて、すごく可憐で。  明日も同じ空が欲しいと…

安原美月
1年前
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ノスタルジー航空 ITM⇛CTS

 飛行機の意地悪。  大地の押し合いへし合いに身をよじって、僕らの列島は途中で曲がったの…

安原美月
1年前
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抱擁

「あったかいね」 彼女が声を漏らす。彼らが抱き合い始めてから、もう三度目の言葉。 十分前…

安原美月
2年前
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さいはてヴァンパイア

恋か恋じゃないか、なんて些細なことは皆さんにお任せしよう。とにかく、それはそれは辛い執着…

安原美月
2年前
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アーモンド・過去

アーモンドチョコは嫌いだ。口の中で、ゴリ、ゴリって鳴るごとに歯茎の間がガサガサしてきてそ…

安原美月
2年前
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アビー・ループ

ビートルズが最後に制作した名盤、アビーロードが、タイミングよく終盤に差し掛かる。ゴールデンスランバーの明朗な慰撫では、澱を流し落とせやしないまんまだった。 "Boy, you're gonna carry that weight a long time. " 全くそのとおりだ。時が解決してくれるという言葉をよく聞く。しかしそれは最初から悩むに値しなかった問題について、あぁ大したことなかったな、と気づくための時間を指すのだ。罪、後悔、離別あるいは決意が一定程度の重みを持つものな