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【秋田県横手市】(2/2)4年ぶりの横手でエヴァンゲリオン大博覧会観て、増田で蔵見学し、夜は塩クジラ煮と高清水 2023年7月8日(土)〜9日(日)

横手旅行の記録、その2になります。1/2は次のリンクから。


昭和酒場「朝菊」を見つける。

ホテルにチェックインした直後から、「外が暑かったから少し疲れたなあ」と言っていたムスメは夕食後、「温泉入ってゆっくりする」と言って、すぐに部屋に戻りました。
わたしは一人ホテルを出ました。ムスメからは、「どうせ呑みに行くんでしょ」と言われていました。
15分ほど街中をぶらぶら歩き、横手市役所のあたりで見つけた「朝菊」という年季の入った酒場に入ります。
旅先で見つけた昭和の雰囲気の残る酒場、もしかして、ここは最高の酒場ではないかと期待が高まります。

横手やきそばの店「朝菊」


店先には「横手やきそば」の幟と提灯が見えたました。中を覗くと、食堂のようであり、酒場の雰囲気もあり、うやら食堂兼酒場のようでした。
80過ぎくらいでしょうか、女性店主が小上がりで食事をして休んでいました。
「こんばんは」と声をかけると「いらっしゃい、やきそば?」と聞かれました。どうやら夜でも「横手やきそば」を食べにくる客が多いのでしょう。

「いえ、酒を呑みにきました」と伝えると、「こっちに座って。ゆっくりして」と小上がりに3つあるテーブルのうち、真ん中にあるテーブルに座布団を敷いてくれたので、そこに腰を下ろしました。
なお、女性店主はなかなかの秋田弁(横手だから南部寄りの秋田弁というのだろうか)で、岩手盛岡在住のわたしでも3割ぐらい理解できないところがありました。

そういえば2週間前に弘前市に旅行した際に寄った店でで隣になった男性客は純正の津軽弁で、仙台伊達藩出身・南部盛岡在住のわたしには4〜5割ぐらい理解できず、だいぶ雰囲気で相槌を打っていたのを思い出しました。

よく言う「親戚の家に来たような」店内の雰囲気の中で

最高の席にとおしていただきました
テレビも観ることができます
品書き

背後の壁を見上げると、夜の部の品書きがありました。
「なす焼き」「えご」「お刺身」「麻婆どうふ」「塩くじら煮」「焼魚」などなどがあり、名物「横手やきそば」以外にも相当楽しめそうです。

そうそう、昼に増田町で入ったローカルなスーパーの鮮魚売り場で「塩クジラ」と「えご」が売っていたのでした。
ムスメは「塩クジラ」も「えご」も当然知らないので説明するのに苦労しましたが、「えご」に関してはわたしもよくわからないので、「海藻を寒天みたく固めたものだよ」などと適当に話をしてしまっていました。

こういうのでいいんです

親戚の家に来たかのような、田舎の実家に帰ってきたかのような雰囲気の中で日本酒を注文すると、冷や(常温)のコップ酒が出されましたので、それを一口くぴり。

「コレ、高清水ですか?」と尋ねると「そう、うちは店を始めてからずっと高清水」と女性店主改めお母さん。改めてお顔とお姿を拝見すると、年齢は実家の母親と同じくらいか少し上かといった感じです。
なんにせよ、ご高齢ではあるが、元気に「横手やきそば」を地元客や観光客に提供し続けているのだから頭が下がります。
聞くと、なんでも「横手やきそば」が全国区の知名度になる以前からずっと店で出し続けていたとのことです。元祖というのか老舗というのか。

コップ酒に続き、「これ食べて」と漬物とわらびが出され、酒をちびりちびり。ああ、こういうのがいいのです。地方に旅したときの酒場は、こうやって始まりを迎えてほしいのです。最高の気分です。

「なにか食べたいのある?」
「ええと、ここにある“塩くじら煮”って、今日はできますか?」
「うん大丈夫、できるよ、ちょっと待ってて」

少し腰は曲がっているが、手元はしっかりしているお母さん。厨房に立つと、手際よく調理を始めました。

横手のローカルフード「塩くじら煮」

塩くじら煮

少しして出されたのは、熱々の塩クジラ煮。茄子とミズが入らないとこの味にはならないんだよ、と教えてもらいます。
細切りの茄子、今が旬の山菜であるミズ、豆腐、そして拍子切りの塩クジラ。

ほんの少しクジラの脂が浮いた汁をすすると素晴らしく出汁が効いており、とても美味しいのです。「高清水」ともよく合います。
噛み締めるとじゅわりと旨みが湧いてくるクジラの肉も程よい塩加減でまったく塩っぱくはなかったですね。
そう、この郷土色満載の料理こそ、地方旅に求め続けるものです。同じ地方、お隣秋田の郷土料理でも、まったく存在を知りませんでした。地方旅の醍醐味は、これなのです。

「出汁がとてもいいですねーー!」と、思わず声を上げる。
「そう、出汁がいいの。クジラから味が出るの。塩クジラはブロックで仕入れて、塩抜きの下処理して使ってるんだけど、最近の若い人は調理の仕方がわからないから、塩辛くしてしまってねぇ」
「このあたりでは塩クジラをよく食べるんですか?」
「昔はもうちょっと食べたけど、この頃はね、さっき喋ったように料理できる人がいなくなって。ウチの孫は都会に出てるんだけど、帰ってきて塩クジラ煮を食べさせると、“汁が美味しい、汁が美味しい”と夢中になって懐かしがって食べるよ」

なるほど、それは貴重なものを食べさせてもらった、と思って後から調べてみたら、横手に「みずかやき」という塩クジラを使った郷土料理があることを知った。

満腹になったので会計をすると、ちょうど1,000円とのこと。なんとも良心的な店でした。
お母さんの人情、最高の店の雰囲気、秋田の酒と肴ともに、旅先だからこそ出会える特上のものでした。まさにプライスレス。
これだから地方都市のディープ酒場はたまりません。

〆はオーセンティックバー「絆Bar」で

「塩クジラ煮、ですか。いや、さっぱり食べませんね、若い人は。調理の仕方をしらないんじゃないでしょうかね」

最後の一軒に入った「絆Bar」のマスターはグラスを磨きながらそう話しました。「朝菊」で作ってもらった塩クジラ煮のことを尋ねてみたのですが、料理そのものは知ってはいるものの、進んで食べるものではないかな、という雰囲気でした。

外が蒸し暑く、歩いていたらしっかり汗ばんでいたので、一杯目に作ってもらったジンフィズが、爽やかながらしっかりジンの腰を感じさせて、とても美味しかったです。
2019年にも一度訪ねたこのバーですが、このカクテルの味で勝負しており、ここ横手でも実力派のバーではないでしょうか。

大好きなグラスホッパー

ムスメの体調も心配だったので、この日は早めに切り上げることにしました。

はじめ客はわたし一人だけで、マスターと横手の話などをしていましが、若いカップル客と三人組の客が立て続けに入ってきたのを頃合いにし、グラスホッパーを作ってもらい最後の一杯としました。
「グラスホッパー美味しいですよね。こんな蒸し暑い夜は特に」と、マスターが作ってくれたカクテルで、心も体もすっかり涼んだのでした。

ホテルに戻ると、温泉に入ったムスメがさっぱりとした顔をして、スマートフォンでゲームをしていました。

具合はどう、と訊くと、「良くなった」とのこと。続けて「なんかお腹空いたから、一階でなんか買ってきたい」というので、一緒に売店がある一階まで降りて、ムスメはスナック菓子を、わたしは缶ビールを買いました。

部屋に戻り、缶ビールを空け、歯を磨き、しっかりエアコンを効かせた部屋のベッドに横になると、一瞬にして眠りについたのでした。
(おわり)

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