スイレンの花を見つめながら
夏の盛り、ふと目に入ったスイレンの花。その佇まいには、言葉にできない静けさがありました。水面に浮かび、微かに揺れるその花は、まるで時の流れを超越したかのような存在感を放っていたのです。
スイレンの花言葉には「清純な心」「信頼」といったものがあります。しかし、その言葉の裏にあるものは、ただの美しさや潔白さだけではないように思います。それは、もっと人間らしい苦しみや葛藤を乗り越えた先に見えてくる、一種の境地のようなものではないでしょうか。
泥の中から顔を出し、清らかな花を咲かせるスイレン。その姿は、どこか人間の生き様に似ています。私たちもまた、さまざまな困難や試練を経験しながら、それでもなお、自分なりの美しさや強さを見つけようとするのです。その過程で得られるものは、時に痛みを伴いますが、それが私たちを形作っていくのです。
私自身、これまでの人生で数えきれないほどの失敗や後悔を重ねてきました。それでも、どこかで自分を信じる気持ちを失わずにいられたのは、そんなスイレンのような存在が身近にあったからかもしれません。泥の中に根を張りながらも、決してその汚れに染まらず、静かに美しさを咲かせるスイレン。その姿に、いつも心を癒され、また前に進む力をもらってきたのです。
スイレンの花が教えてくれるのは、清らかであることが何もかもを拒絶することではなく、むしろ、すべてを受け入れたうえで、自分自身の信念を貫くことの大切さです。それは、決して他人と比べたり、競争したりすることではありません。自分の中にある小さな声に耳を傾け、それに忠実であること。その結果として、自然と周りに信頼が生まれ、心の中に静かな強さが根付くのです。
夕方になると、スイレンの花は静かに閉じ始めます。その姿を見送るとき、私はいつも少しだけ寂しさを感じます。しかし、それもまた、次の日の朝に新たな花を咲かせるための準備なのだと思えば、不思議と心が落ち着くのです。
スイレンがそうであるように、私たちもまた、日々を大切に過ごしながら、自分自身の花を咲かせていけたらと願わずにはいられません。