アフリカにおけるサツマイモ茎葉の利用と展望
今回の記事ではサツマイモの葉っぱや茎がアフリカでどのように利用され、どういうメリットがあるのか、普及にはどんな課題があるのかについて先行研究をもとに考察しています。
背景
サツマイモの収穫指数(塊根/全重) は 0.7 程度であり, 主要穀物(イネ, コムギ, トウモロコシな ど)の収穫指数(0.4-0.6)と比べて高い。一方でその茎葉は利用されず、畑に放置されることが多いが、サツマイモの茎葉にはタンパク質、ミネラル、ビタミンが多く含まれていることが分かっており、葉菜や家畜飼料として利用する価値がある。そして茎葉を収穫して利用することで、サツマイモの高い収穫指数をさらに高め、アフリカやアジア地域の飢餓や栄養不良の問題に貢献できる可能性がある。今回の記事では特にサツマイモ茎葉の家畜飼料としての利用に注目し、東アフリカ地域での利用の現状や、茎葉利用が小農の生活に与える効果、家畜の質への影響、導入の障壁などいくつかの側面から考察する。
論文紹介
ウガンダ、ケニア、ルワンダで行われ調査によるとサツマイモの茎葉を飼料として用いることによって家畜の生産にかかるコストを下げることが可能であり、塊根茎葉兼用サツマイモ品種は小農の豚生産にとって特に有益であることが示唆された[1]。
ルワンダで行われた調査では52.2%の農家がサツマイモの茎葉を家畜飼料として利用し、すべての農家が塊根だけでなく塊根・茎葉ともに高い収量を持つ品種を望むと回答した[2]。
エチオピアで行われた調査では乾季の深刻な飼料不足に対してサツマイモの蔓を利用することが有効であり、8割から9割の農家がサツマイモの蔓をそのままあるいはサイレージとして家畜に与えていることが分かった[3]。
ウガンダでは乳牛に与える作物残渣の40%以上をサツマイモの蔓が占めており、重要な役割を担っている。そこでサツマイモの蔓が牛乳生産に与える影響を調べたところサツマイモの茎葉を与えた区で有意に乳量とDMIを向上させたが、一定の割合(10%)を超えて蔓を与えることは費用対効果が悪いことが分かった[4]。
ウガンダの零細豚農家では飼料の中にサツマイモの蔓などの根菜類の残渣が含まれていることが多く、特に雨季ではサツマイモの蔓の利用率が高い。都市周辺部の農家は濃厚飼料をサツマイモの蔓を加えて飼料としている一方で、都市から離れた農村ではサツマイモの蔓だけを飼料として与える傾向がある。サツマイモの蔓の利用に関しては蔓の保存技術に農家がアクセスできていないことが課題だと農家は指摘しており、さらなる利用の拡大にはサイレージ化などの保存技術を合わせて浸透させていく必要がある[5]。
ケニアにおいて塊根茎葉兼用サツマイモ栽培の経済的実行可能性を検証した研究ではヘクタール当たり5トン程度の低い塊根収量であっても、塊根と茎葉の両方からの利益によって大部分の小農が導入するメリットがあると推定されました。また、圃場試験で観測されたヘクタール当たり23トンの塊根収量では導入率は約80%に達すると推定された。最適な収穫指数は 塊根の価格と飼料の価格の比率に依存するが、観測されたデータによると同じ重さでの塊根の価値は茎葉の倍以上であり、塊根収量の高い品種ほど導入率が高まると推測された[6]。
ルワンダで塊根茎葉兼用サツマイモ栽培の導入分析を行った結果、導入率は42%にとどまり、評価できる水準には達していなかった。回答者の性別、主な職業、農場の規模、社会的グループへの所属、農場見学などの要因が、農家の採用意思決定に重要な役割を果たしていることがわかった[7]。
まとめ
これらのことから、サツマイモの塊根茎葉兼用栽培および蔓の飼料利用は東アフリカでは一定の割合で行われており、時期による飼料不足を防ぐ重要な役割を担っていることがわかった。また、兼用栽培によって農家の経済的状況・食糧安全保障は向上するものの導入には障壁が存在することが明らかとなった。今後サツマイモの茎葉の飼料利用を促進していくためには兼用品種の育成だけでなく、採用可能性の高い農家やアプローチ方法を検討することや、サイレージ化や保存の技術を併せて普及していくことが重要であると考えられる。
参考文献
[1] Peters, D. (2008). Assessment of the Potential of Sweetpotato as Livestock Feed in East Africa: Rwanda , Uganda , and Kenya. The International Potato Center (CIP) in Nairobi, July.
[2] Shumbusha, D., Shimelis, H., Laing, M., & Rukundo, P. (2020). Assessment of the roles and farmer-preferred traits of sweetpotato in a crop-livestock farming system in Rwanda: Implications for breeding dual-purpose varieties. Open Agriculture, 5(1), 834–843.
[3] Beyero, N., Tolera, A., Abebe, G. (2010) Livestock production and utilization of sweet potato vines as source of feed in two districts of southern Ethiopia. Ethiopian Journal of Animal Production. 10(1)- 2010: 43-54.
[4] Galla, N. A., Nampija, Z., Lutwama, V., Mayanja, S., Grant, F., Kyalo, G., Kiggundu, M., Zziwa, E., & Nambi-Kasozi, J. (2020). Effects of Inclusion Levels of Sweet Potato Vine Silage on Feed Intake, Milk Production and Profitability of Lactating Crossbred Dairy Cows. Open Journal of Animal Sciences, 10(03), 608–617.
[5] Dione, M. M., Pezo, D., Kyalo, G., Mayega, L., Nadiope, G., & Lukuyu, B. (2015). Perception and practices of farmers on the utilization of sweetpotato, and other root tubers, and banana for pig feeding in smallholder crop-livestock systems in Uganda. Livestock Research for Rural Development, 27(11).
[6] Claessens, L., Stoorvogel, J. J., & Antle, J. M. (2008). Ex ante assessment of dual-purpose sweet potato in the crop-livestock system of western Kenya: A minimum-data approach. Agricultural Systems, 99(1), 13–22.
[7] Danso-Abbeam, G., Baiyegunhi, L. J. S., Laing, M. D., & Shimelis, H. (2021). Adoption of dual-purpose sweetpotato varieties under partial population exposure in Rwanda: Insights from an African plant breeding programme. African Journal of Science, Technology, Innovation and Development, 0(0), 1–10.