就農者を増やすには?【「普通の農家さん」に聞いてみた!後編】
農業の未来のために。就農者を増やし、離農を防ぐには?
昌樹さん:そうだな。それは「体験」の問題だよね。農業には一連の流れってものがあるじゃない。米作りで言えば、耕起・育苗・田植え・草取り・収穫・脱穀……他にもあるけれど。農作業体験は、「田植え」だけ、とか「稲刈り」だけ、とか。断片的な部分しか見せないのだよね。四部作の大作小説の二作目だけ読みました、的な(笑)。
良い所も悪い所も見てもらわないと。農業の様々な面を知ってもらった上で、就農してもらいたいよね。
昌樹さん:だからこそ「マッチング」が大事になってくるのじゃないか、と思っているんだよ。農業やりたい!って人も色々いるわけ。ブドウ作りたい人とか、コメ作りたい人とか。その人の状況によって、農業経営を勉強すべきなのか、栽培方法を勉強すべきなのか、変わってくるよね。
マッチングしづらい“今の制度”
昌樹さん:やっぱり農業経営とか栽培とかのベースは学ばないといけないと思うよ。今の制度だとこんな感じ。
お金(=新規就農に際しての補助金)を渡されて、船に乗せられて出航する(=農家になる)けど、コンパスや地図(=農業経営や栽培についての基本的な知識)を持っていないから目的地(=自分のやりたいこと)に着くことができない、みたいな。農業人フェアのように、企業側と就農したい人をマッチングする場はあるけれど、企業側は1つの労働力として認識しているから、研修を通した経営手腕の向上とかは、また別の話になるのかな。でも、農業は実際にやってみないとわからないことも多いのね。作物との相性とか。
昌樹さん:吉田くんはうまくいった例だよな。
悠斗さん:そうだね。でも、会社に勤めていたときから、週末に小国町に通って、色々な農家さんと会っていた。だから、この町のこの地区で生活しながら農業をやる、というイメージを持つことができた。あとはどんな作物を作りたいか、というのも考えることができたね。
悠斗さん:地域おこし協力隊として小国に移住してからも、色々な農家さんを回ったよ。1年かけて様々な農家さんに会って、自分の実現したい農業のスタイルを考えたことは本当に大きかったと思う。
悠斗さん:うん。
小国町に移住してすごく感じるのは、「自然と一緒に生きることに魅力を感じている農家さんが多い」ことかなー。若いうちから起業して、大きなステージに早い段階で上がるような「太く短く」というライフスタイルももちろんいいと思う。でも、これからの人生100年時代、「細く長く」続けていくことができる農業がすごく魅力的だってことを、小国町の農家さんから勉強させてもらったかな。それに、一次産業は、食べるものを作る、とても尊い仕事だと気づいたよ。
昌樹さん:うん、そうだな。今の農業界、1人の力で突破できるようなものじゃないと思う。それほど簡単な問題じゃないというか。だから、共同戦線を組んで課題に立ち向かって行くのが重要じゃないかな。「一緒に」とか「少しずつ」というような思いで農業に向き合っている人も、小国町には多いように感じるな。
別々のことをやっているけれど、協力する時は連携する。そんなやんわりとした仲間で、少しずつ進んでいければ良いのじゃないかな。
「先を見ることより、自分のこと、子供のこと、明日のこと。
将来のために『いま』が楽しくなくなるのは、オレは嫌だな」
目の前の物事に対峙し、「いま」「この場所」を楽しむ。
「いつか」のために生きるではなく、「いま」のために生きる。
「いま」を生きてゆく先に、「将来」がある。
普通の農家だと語る昌樹さんの「いま」を生きる姿は、とてもかっこいい、と思います。
そして、「いま」を生きることを可能にする農業も、同様にかっこいいライフワークなのではないでしょうか。