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「失敗してもええやないか。」失敗を恐れる若者へ捧ぐ!農家の挑戦者魂〜関西からの現場レポート〜

「大阪に、とにかく会ってほしい生産者さんがいる」

ある先輩からそう言われ、私(編集部 馬場)は、どんなことが学べるんだろうという期待と緊張感を持ちながら、その生産者さんに会いにいきました。

その生産者さんとは、大阪府茨木市で伝統野菜の三島独活(みしまうど)を生産している中井大介さん、優紀さんご夫婦です。

 中井さん夫婦はただ伝統野菜の三島独活をつくっているだけではなく、三島独活を通して、全ての人の暮らしの中に農があること、「独りじゃ活きられない」ということを伝えています。
「今の世の中、失敗が許されないじゃないですか。でも、農業は失敗が許される世界。なぜなら、失敗を繰り返さないと、いいものってできないから」


と、中井さんは言いました。
中井さん夫婦は、 「失敗してもいい。色んな価値観があるからなんでもやってみてほしい」と、学生や地域の人とトライ&エラーを繰り返しながら近くの里山を開墾したり、ティピ(テント)をつくったりしているコミュニティで活動しています。ある学生がお米を炊こうとしてなかなか火を起こせず、結局半生状態のものをみんなで食べることになってしまったことがありました。でも、中井さんはそんな失敗も面白いと思ったそうです。当時のことを、中井さんは「あの米はマズかったわー」と、笑いながら話してくれました。

私はこの生産者である中井さんの言葉を聞いた時、何か救われたような気がしたのです。

農業は自然が相手。台風、地震などの自然災害は、いつ、どのくらい作物に被害が出るのか分からないし、絶対に被害から守れることはない。災害じゃなくても、なんらかの環境変化で上手く作物が育たないこともよくあります。農業、一次産業の現場は、「思いどおりにならない世界」です。

一方現代は、なんでも便利に、わかりやすく出来るようになっています。「これをすれば大丈夫。あとはこうなってくれる」と、受け身で考えなくても生活できる暮らしがある。薬を飲んだら病気が治るとか、ボタンを押したらご飯が炊けるとか、簡単に因果関係で結ぶことができる。そういう考えが当たり前になるとどうなるか。なんでもマニュアル化してしまって融通が利かなくなる。マニュアルから外れた「失敗」が許されなくなる。実際、そんな息苦しい雰囲気が生まれてきています。
私も今まではそういった受け身で考えなくても良い環境で育ってきました。だからあまり失敗することもなく、また失敗しないようにうまく逃れながらのうのうと生きてきました。でもやっと、失敗しないと成長できない、何かを乗り越えて成長があることに気づいてからは、どんどん失敗して成長したいという感情が出てきました。

そんな中で、自然という簡単に因果関係では結べない、どんなことがあるのか予想できないものに対して寛容に受け入れ、ひるまずにコツコツ努力されている中井さんはじめ、生産者の方がいると知った時、生産者の人たちがすごくカッコよくて、羨ましくて、とても魅力的に思えました。

失敗しても、大丈夫。私を一次産業の世界に引きよせたのは、この生産者のチカラなのかもしれません。

なんとなく面白くない、生きづらいと感じられるこの世の中に、農家、生産者の方はどんなことでも受け入れるチカラで、社会を支えているのではないでしょうか。

私はそのチカラを、より多くの人に感じてほしいと思います。

書き手:馬場みなみ

※この記事は2018年に作成されました


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