JVOAD全国フォーラム分科会で、官民連携の好事例を紹介しました!ー「いつも」のつながりが「もしも」に活きるー
過去の学びが活かされず、何十年も同じことが繰り返される被災地の「食と栄養」の問題。
食糧備蓄が足りない、必要な支援物資が届かない、避難所で栄養バランスの偏った食事が続く、被災のストレスで食べられない・・・後回しにされるこうした「食と栄養」の問題は様々な健康被害、ひいては災害関連死を招くリスクを内包しています。心と体の健康をつくるおいしくて温かな食事支援を実現するためには、公助には限界があることを理解して、平時から官と民で顔の見える関係づくりを構築していくことが重要です。そのことを示唆するべく、民間セクターの支援の担い手として期待が高まっている子ども食堂を中心に、地域での官民連携好事例を共有しました。
子ども食堂と食の防災の親和性
はじめに、むすびえ森谷氏より「子ども食堂と食の防災の親和性」をテーマに事例を交えてお話いただきました。子ども食堂には、賑わいづくりや子育て支援、子どもの貧困対策など多様な価値があり、地域交流拠点として地域の課題を包括的に予防するポテンシャルがあります。
平時から多世代交流を可能にし、衛生管理や大量調理ができる場であることから、子ども食堂は地域の防災拠点になり得ます。現在、全国で9千を超える子ども食堂が様々な主体により各地域で運営されており、その規模は年々大きくなっています。子ども食堂が各地域で防災拠点として機能することで、地域の防災力が高まっていく展望について力強く説いていただきました。
愛媛県宇和島市での官民連携ネットワーク
続いて、宇和島市の赤松氏ならびにU.grandma Japan(うわじまグランマ)代表の松島氏から「次の災害に備える官民連携ネットワークを構築するための活動」について発表いただきました。
赤松氏からは、平成30年7月に同市を襲った甚大な豪雨災害を機に、平時から官民連携を行っていくことの重要性を痛感され、外部団体撤退後の被災者支援ニーズへの対応として三者連携を発展させながら中間支援組織(宇和島NPOセンター)を設立されたことを伺いました。現在、その役割は災害支援から、平時の地域課題解決のための支援へとシフトしているそうです。
また、「食の支援」の改善に向けた取り組みとして、愛媛キッチンカー協会と災害協定を締結し、災害時の炊き出し献立による子ども食堂での食の提供など、平時から災害時の食と栄養の大切さを学び考える機会をつくっていることもご説明いただきました。
市政運営の基本方針のひとつに市民と行政との協働のまちづくりを位置づけ、民間の力を活用した災害時の機動的な対応力向上を推進できるようNPO等への支援を継続していくという赤松氏からのバトンを受けた松島氏は、手探りで支援活動を進めるなかで、つながりの希薄化やそれに伴う社会的孤立など地域が抱える課題に気づいたといいます。なによりも子ども達やお年寄りを含め、住民の拠り所となるコミュニティの必要性を感じられたことから、地域食堂としての子ども食堂を仲間と支え合いながら運営されていること、またキッチンカーを利用した子ども食堂運営など、地域の諸団体を巻き込みながら、地域連携が強化されている様子を伺いました。
その他に、災害時の食と栄養を学ぶ研修会「イザ食」や、中間支援できる人づくりの一環で女性防災リーダー育成プログラム等を推進し、フェーズフリーな考えに基づいた取組みを充実させていることを熱量高く発信いただきました。
うわじまグランマは、「いつも」と「もしも」をつなぐ画期的な取組みが評価されて2023年度のフェーズフリーアワードで金賞を受賞しています。まさに「いつも」の食から「もしも」の食を考えていくことの大切さを示唆いただきました。
「いつも」のつながりが「もしも」に活きる
過去の災害からの学びを活かして、「いつも」からすべての人が食事と栄養の重要性を理解し、心と体を整え、あらゆる人が繋がり合える仕組みをつくることで災害に強い社会を築く・・・たべぷろビジョンでも掲げているメッセージですが、「食」は、民間の力を最大限に生かし、地域ならではの仕組みを作りやすい領域です。
「いつも」のつながりが「もしも」に活きるというフェーズフリーの考え方を大切にしながら、「食」を手段に各地域で官民連携が促進されていくことを目指して、これからも発信機会を増やしていきたいと思います!