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集うことを妨げる諸々のバリアたち/近藤銀河(仕事文脈vol.25・特集1どう、集まる?寄稿)

 私が外出する時にはいつも電動車椅子を使っている。常にインフルエンザの最中のような疲労と苦痛を感じ続ける病気である筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群を抱えていて、歩くという運動を続けることができないためだ。

 日本での障害に対する合理的調整の整備はここ数年で大きく進んだ。国連の障害者権利条約を基にした障害者差別解消法は、2024年4月から民間業者にも合理的配慮の努力義務ではなく義務を求めるようになった。東京では駅の改装工事が進み、多くの駅にエレベーターが設置された。

 UDトークなど情報保障にまつわることも進展が多い。障害者差別解消法では情報に関する障害への対処も明記されている。

 バリアは少しずつ減っている。それは一面では事実である。

 しかし障害のある状態で生きていると、バリアと思われていないバリアにあちこちで出会う。そうしていると分かるのは、バリアを無くすというのは単に段差を取り払い、エレベーターをつける、ということだけではない、あるいはバリアとして立ち現れるのは階段だけではない、ということだ。

 一例をあげよう。

 ライターである私はある美術展のレビューを依頼される。その展示は公立の美術館で開催されていて、エレベーターやスロープがあり段差もない。しかし、一部の作品は階段の踊り場に設置されていて観ることができない。私は展示全体を見ていない状態でレビューを書かなければならない。

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