見出し画像

30歳ではじめて失恋したはなし2

失恋のショック

過去に複数の女性と交際した経験があるのになぜ、直近の別れが初めての失恋と言えるのか。

それはその女性に対して熱を上げていて「恋焦がれてる、本当に好きで好きで仕方ない」という感情を抱いた交際関係だったからだ。心の底から本当に好きだと言えた。

いままではもそう思った女性は居たが交際には至らず、そもそもアプローチ自体も行って来なかった。

これまで交際したほかの女性は「なんとなく好きだな、悪くないな」という程度の感情しか描けずいつの間にか別れてしまった。

情けなく、過去の交際相手に申し訳なく思うのだが「僕はこの人の事を心のそこから好きではない、だから『好き』と伝えるのは自分にも相手にも嘘を言う事になる」と考えており一度も「好き」とも「愛してる」とも「可愛い」とも「綺麗」とも言えなかった。

これは色々と歪んでいて、掘り下げる必要があると思うが今の本旨ではないのでスルーする。

それまで交際した女性と別れたとき、寂しさや喪失感は確かにあった。
ショックではあったけれど、ある程度受け止められるような物だった。


けれど今回の別れは違った。

始めは喪失感があった。

「ああ、今回も同じだなそのうち消えるな」

ぜんぜん消えなかった。
心の内にある喪失感は太平洋戦争初期の日本軍のごとくドンドンと進撃をかさね、後悔、寂しさ、つらさ、そういった物であっという間に心を満たされてしまった。

誰も見ていない職場の隅で座りこんだことも一度や二度ではない。

茫然自失とはこういった状態を言うのだろうと思った。


眠れなくなった。

何かを行っているときはそっちに気が向かい、一時的にそのつらさを心の端の方に寄せて置くことができたが、布団に入り「寝るぞ」というタイミングは特にやることもなく、心の端に寄せて置いたつらさと向き合うことになるからだ。

ぼーっと天井を眺めながらいろんなことがフラッシュバックしてきた。

「あの時はうれしかったな」「あの時こうすればよかったな」「もっと相手のことを分かってあげられれば」「もっと自信があれば」「どうして」等々。

「なるほど、後から悔やむから後悔か、良く出来た言葉だ」

このままでは心が壊れると思ったので言葉として発音することにした。
言葉として表に出せば自分の内側に溜め込むよりましだろう、言葉にすることによって整理できるかもしれない。そう考え布団に入りながら真っ暗な天井を見つめてぶつぶつとうわごとに様に思い返した出来事についてつぶやいていた。

とりあえずは眠れた、そんな日が数日続いた。

眠ろうとするのが嫌だった、つらいことに向き合うから。
無理にスマホを弄って数秒ごとにTwitterを更新し、なにか読む物を求めていた。

そんなとき友人から勧められた本があったのを思い出した。

この友人とは古い付き合いでたまに自分の親について話すことがあった。
そのなかでこの本を紹介してもらった事を思い出し購入してみた。
凄く面白くて引き込まれるという読書体験ではなかったが、毒親に関する色々な記述は「まぁなるほどな」と思った。

普段の自分ならこの著者の他の本を探そうとはしなかったろう、けれどもなにか読む物を求めていた自分としては引き続き読む物が欲しく、なんとなくこの本の著者の水島広子さんの他の著作をAmazonで探してみた。

この水島広子さんという人は「対人関係療法」という治療法を専門に行っている先生で、探してみるとなかなかの数の著作があり、そのなかで1冊の本が目についた。

いつもの自分ならこういった自己啓発臭がする本はスルーしているのだが、著者への信頼と慢性的に持っていた自己肯定感の低さ、なにより「失恋のつらさから目を背けるための物がほしい」という理由から珍しくこの手の本に手を伸ばした。

めちゃめちゃ良書だった。

SNSで「自己肯定感を持とう」「自分に自信をもって」「自分の思うように行動しよう」といった「自分を大切にしよう」系情報はよく流れてくる。
そういった情報がバズって流れてくるたび「ああそうだな」と思うが、よくよく考えてみれば「自己肯定感を持つ」というのはどうしたいいのか分からない。

自分の愛し方が分からないのだ。

自己肯定感とはその名のとおり、自分を肯定する感情である。
しかし今までの人生において自信をもって自分を肯定するという機会はあまりなく「ピンポイントでそんなこともあったな」という程度である。
その「ピンポイント」すらあるタイミングで失われ、基本的に自分に関しては否定的な感覚のまま生きてきた。

「自分にはあらゆる能力が不足している、だから自己肯定感を得られない」
「能力が低く他人が認めてくれない、だから自己肯定感を得られない」
「自分は自分の事をダメだと思う、だから自信がない」

そうやって自分を否定しながら生きてきた。

けれど先に挙げた本は「なぜ自己肯定感が得られないのか」「なぜ自信を喪失してしまうのか」「自信を、自己肯定感を得るにはどうしたらよいか」
といった内容のことが書いてあり非常に参考になった。
その中でも特に「自信を喪失するメカニズム」と「自己肯定感を得る方法」については目から鱗だった。

先にも書いたように「自己肯定感を持とう」という情報はよく流れてくる、しかしその方法を具体的に示してくれる情報というのは少ない。
「自己肯定感を高めようと言われても、それができれば苦労はしない」
という状態だ。

端的にいうと「自己肯定感を高める『方法論』」が示されていたのがとても参考になった。

貪るように、翌日の仕事の事も忘れて一気に読んでしまった。

この時は薬でもキめたかのようにハイだった。
自己肯定感を持てない理由が分かり、その対処法が示されたことによってとても希望が持てた。今もその希望は持ち続けることが出来ている。
良い本だと自信をもって勧められる。

失恋後から立ち直るきっかけになったのは間違いなくこの読書体験だった。
交際を振り返ってなぜなぜ分析する際にも役立っている。

この後に失恋のショックがぶり返して躁鬱のように上がり下がりするのだが(ぶっちゃけ今もだ)それはまた別の話。


続きますよ。


俺に幸あれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?