No,86【辛い時こそ笑わなくちゃ 二話】
東日本大震災が起きたのだ。
このとき妹は仙台にいた。
心配などしたことない自分がこのときは異常に心配していた。
4日間連絡が取れなかった。
しかし、祖母とやっと電話が繋がった。
妹も祖母も怪我なく無事であると。
しかし、妹は話をしたがらないと言った。
電話を変わってもらったがその声は別人のように感じた。
僕『無事よかった。大丈夫か?』
妹『・・・・・・・・・え?』
僕『大丈夫?』
妹『・・・・・・・うん。』
確かに電話の向こうに妹はいる。
しかし、全然違う妹になってしまったのがわかった。
すぐに支度をした。
バイトも一週間ほど休むと連絡をいれた。
クビになってもよかった。
それすら考えて居なかったかもしれない・・
とにかく妹に会いに仙台にいった。
祖母の家は山の丘の方にあり、津波などの被害はなかった。
地震の影響で窓ガラスが割れたぐらいだった。
安心した。
しかし妹がいない。
祖母もいつの間にか出かけたと言っていた。
また僕は焦りながら妹を探しに行った。
家から出て100mほど離れた先に妹は立っていた。
妹は一本だけぽつんと立つ木を見ていた。
妹の涙は枯れていた。
目に力はなく、光なんてあるわけない。
何も喋らない妹を抱きしめた。
また悲しい思いをさせてしまった。
僕が泣くわけにはいけない。
守る者は弱くてはいけない。
そのとき妹が言ったんだ。
「人は弱いんだ。神様もいない。笑うことなんか忘れちゃった。」
妹がこうなってしまったことはなんとなく予想できた。
でもあえて聞かなかった。
いや、聞けなかったんだ。
僕も思ったよ。
誰のせいにも出来ないから神様にあたるしかなかった。
「神様なんて嘘だ。なんでここまで残酷なことをするんだ。
これは試練じゃない。残酷すぎる現実だ。」
妹が前見たく笑ってくれるようになるまで、一緒に暮らすことにした。
大阪でしていたバイトやめて、震災の復興のための仕事をして
仙台に妹と一緒に住むことになった。
なんなんだ人生とは・・・
生きている方が辛いじゃないか。
死ぬのは確かに怖いよ。もちろん死にたくないよ。
だけどこんなに苦しいことは誰も望んでいないんだよ。
僕は1人で夜泣いていたんだ。
辛かったよ。我慢できなかったよ。息苦しかった。
それでも僕は毎日を頑張るんだ。
妹のために。
そして、僕のためにも。
そうしている間にあっという間に一年が経った。
妹は前よりは少し回復した。
僕も毎日働いてはいつも妹に寄り添った。
お金なんて使う暇なんかなかった。
妹の学費も溜まりつつあった。
僕はここでまた新たに決意した。
人は足を止めてはいけない。
止まったら泣いてしまいそうで死んでしまいそうで、
笑うことを忘れそうだったから。
妹に言った。
「2人で東京に引っ越そう。」
「違う景色を見よう」
二話 完