未来掲載短歌　2021年3月号

未来2021年3月号掲載（未来広場）

冬支度

ステンレス製の手すりに背を預け待ってたふうに死んでゆきたい
星よりも眩しい夜のステンレス冬は冷たく夏なまぬるく
日が暮れる方向を指す本日の仕事を終えた私の爪先
山茶花がぽつぽつ咲いている道で単語が飛んでくるのを躱す
あたしってそうやんか、って言い続けそうなっていく人の横顔
くたびれた靴なら床に叩きつけ死を確かめてから処分せよ
包みこむように香水瓶を持つ近くあなたに会えると信じ
Amazonであなたの香りは手に入る（丸一日もかからず届く）
明らかにMENと書かれた瓶を置く部屋のいろんなところで試す
この冬で着潰すことを前提に買ったピンクのチェスターコート