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未来掲載短歌 2020年11月号

未来2020年11月号掲載

幕開けの声

バベルシティ・グレイス、常にこの街に鐘は在るのだその中心に
イヤホンを買うときいつも焦ってる戻れないとこまできてるから
だんだんと現実に近づいてゆく私の声を録っておいてね
音割れのないよう録ってでも私いつ叫べるかわからないのよ
眠剤はひとつふたつと細胞がなくなるように効いていきます
ブラウザが応答しないそのあいだ窓を開けたり床を掃いたり
ご焼香ですと言われるタイミング徐々にわかって二十五回忌
父親似らしい私に父親の記憶はないが卒塔婆を担ぐ
田んぼから涼やかな風その奥の墓へと向かう自分の足で
梅雨明けを確信する朝いくつかのやりたい事がやる事となる

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