これまでよりずっと大変で、ずっと楽しい未来に向けて。 #InspireHigh
こんにちは、杉浦太一と申します。
学生時代にCINRA(シンラ)という会社を立ち上げ、メディア運営やクリエイティブエージェンシーとして15年、経営してきました。
そして本日、2020年1月24日、
13〜19歳向けの事業『Inspire High(インスパイア・ハイ)』を新たにスタートしました(!!!)。
スタート初日ということで、なぜこの事業をやるのか。今の社会や教育にどんな課題を感じているのかを書きたいと思います。
私たちが過ごしてきた過去とはまるで違う。若者が生きるこれからの社会
まず、現在13〜19歳の若者が生きる未来が、私たちが過ごしてきた過去とはまるで違う、という話です。
野村総研の調査によれば、10〜20年後には日本の労働人口の49%がAIの発達によって代替されると言われています。
これが本当にそうなるかどうかはさて置き、そもそも現代の仕事のほとんどは、ずいぶん昔に確立されたものがほとんどです。
そんな現代の仕事を、これまでみんながいかに上手にできるようにしてきたかを考えると、やはり教育の話になっていきます。
現在の教育システムの大元は、産業革命時代に設計されています。その設計思想の根底には、工場でより効率的に生産性を発揮できる人間を生み出すという目的がありました。
だからぼくたちはみんな、一緒に整列させられ、同じ教室でまったく同じことを学んできました。
これまでの教育で身につけてきたスキルは、読み書きや計算、暗記に加えて、きちんと集団行動するための規律に従うマインドセット。それはまさに、工場やオフィスで働く上で欠かせないスキルでもあります。
その後マイナーチェンジはありましたが、基本的には産業革命時代の教育システムから劇的な変化はありません。ある種こうしたシステムこそが、これまでの社会に適応できる人材を育成してきた実績があるからこそ、長く続いてきたのかもしれません。
でも、これからは違います。
パターン化された仕事や統計で答えが出せる仕事であれば、AIの方が早く正確に仕事をします。
であれば人間はむしろ、パターン化されえない、多様な一人ひとりの能力が発揮されるべき、という方向に進んでいくはずです。
そういう仕事をこれまでは、個性を発揮すべき仕事として、「クリエイティブな仕事」と呼んで、デザイナーや作家、アーティスト、一部のメディアや広告、エンタメ産業でものづくりをする人、そして新たなカルチャーを作る起業家や商品開発者などに限られた仕事だとされてきたように思います。
それが、劇的に変わる。
今はまだ少しの変化でも、今のティーネージャーが生きる未来では確実に変わります。
すべての仕事が、クリエイティブになる/なれる/ならなくちゃいけない時代が未来なのだと思います。
先日、ちきりんさんもご自身のブログで、こうした人間の労働の歴史を、
「狩猟時代」→「農耕時代」→「工場時代」→「オフィス時代」→「思考時代」として、これまでのオフィス時代は終わり、思考時代がやってくるとおっしゃっていました。
で、次の時代はどうなるのかということで、とりあえず私は「思考時代」と名付けてます。
会社や上司から「言われたこと=支持されたコトを(できるだけ正確に、かつ素早く)やる」時代から、
「なにをやるべきか」=「何をやれば価値があるのか?」「市場は何を求めているのか?」自体を自分で考える必要のある時代へ、という意味で。
「狩猟時代」には力の強い勇敢な人材が、「農耕時代」には長時間の作業にも耐えられる人材が、「工場時代」には字が読めてマニュアルを理解できる人材が、「オフィス時代」には営業力や分析力のある人材が、それぞれ「優秀」とされてきました。
そしてまた、「優秀な人材」の定義がまるで変わってくる。
いい大学に行って、いい企業に入るというのがこれまでの「正解=成功」だとすれば、自分で自分の正解を見つけ、自分なりの成功を定義していける時代がやってきます。
人の数だけ「正解」「成功」がある世界。
想像するだけでワクワクします。
しかし、当然ながらそれはかんたんではありません。
一人ひとりが、自分で自分の正解を見つけていくなんて、ある意味タフすぎです。教科書に書いてあることを丸暗記する方が、ずっとラクかもしれません。
つまり、目の前にある未来は、「これまでよりずっと大変で、ずっと楽しい時代」なのではないかと思います。
日本の若者は未来をどう見ているか?
では、実際の若者は未来をどう見ているのか?
ネット上でも話題になった、日本財団が2019年11月に発表した調査。
「これ意図的では......?」
と疑いたくなるくらい、他の外国諸国と日本の18歳とでは意識にかなりの乖離があるようです。
Q. あなた自身について、お答えください。(各設問「はい」回答者割合)
今まさに急成長を遂げているインドでは「自分で国や社会を変えられると思う」という若者が83.4%であるのに対して、日本はわずか18.3%。
Q. 自分の国の将来についてどう思っていますか?
中国の若者96.2%が「自分の国の将来について良くなる」と答えていますが、日本ではほぼ10分の1の若者しか希望を抱いていないような数字が出ています。
これを見て、「最近の日本の若者はやっぱり...」と嘆いてみたり、「海外に比べると日本は...」など卑下することはかんたんです。
でも、ほとんどがまだ社会に出ていない18歳がこう思っているということは、問題はむしろ大人の方にあるんじゃないかと思います。
いかに大人が、将来への希望や生きる楽しさ、自分が社会を変えられるという感覚を若者に伝達できていないかという結果だと、私は受け止めました。
GDPがやばいとか、国際競争力が落ちたとか、イノベーションがなかなか日本で起きないなとか、そういう議論のずっと前に、人が生きる土壌の前提として、本当に必要な話をぼくたちはずっとしてこなかったんだと思います。
この世界はびっくりするほど多様な人たちがいて、様々な知の領域が広がっていること。
それだけ多様で広大な森羅万象の中で、70億もの人が喜怒哀楽を感じながら今日も自分の人生を必死に生きているという目がくらむような事実と、自分も孤独ではなく、その全体の中の一人であるという「つながり」を感じること。
さらに、一人ひとりに素晴らしい力があり、誰もが変化を生み出す可能性を持っていること。
そんな話を、もっとしたい。
今日スタートした、ティーネージャーに向けた事業『Inspire High』でやりたいことは、まさにそんなことです。
新しいルールの社会で生きていく一人ひとりの若者が、自分らしい生き方を見つけられるサポートをしたいと思っています。
ここでようやく、「で、何するの?」です(前置きの方が長い!)。
13〜19歳のInspire Highメンバーに向けて、アーティストやビジネスリーダー、研究者など、第一線で活躍しながら自分の人生を楽しむ「ガイド」が、自分の生き方や仕事にふれるためのライブ配信セッションを行ないます。最初は、月に2,3回ほど、隔週日曜日に実施します。
現在決まっているガイドは、以下の方々です(順不同、敬称略)。
辻愛沙子 (株式会社arca CEO / クリエイティブディレクター)
松下徹 (SIDE CORE / アーティスト)
谷川俊太郎(詩人)
龍崎翔子(L&G GLOBAL BUSINESS,Inc. 代表 / ホテルプロデューサー)
ゆうこす(モテクリエイター)
新野 俊幸 (EXIT株式会社代表取締役 / 起業家)
篠崎 恵美 (edenworks / フラワークリエイター)
三浦遊(資生堂 クリエイティブディレクター・アートディレクター)
平野 紗季子 (フードエッセイスト)
安部敏樹(一般社団法人リディラバ代表理事 / 社会起業家)
枝優花(映画監督)
市原えつこ(メディアアーティスト)
島津 冬樹 (段ボールアーティスト)
大家雅広(博報堂 プロデューサー)
ほか
年齢も、職業も、性別も、見事バラバラです。
ビジネス、カルチャー、ファッション、エンタメ、就活など、既存のくくりではないラインナップです。
共通するのは、自分の人生を楽しみ、それぞれに世界と豊かなつながりを持っていること。
13〜19歳の若者のためだけに、彼ら/彼女らによる、インスパイアリングな体験をお届けします。(ガイド一覧はこちら)
ガイドのこれまでの人生を曲線グラフにして紹介してみたり、毎回お題を発表して、作品をつくったり、それをレビューしてもらったり、リアルタイムでコメントに答えてもらったり。
盛りだくさんのライブ配信セッションです。
正直、今の時代はInstagramやTwitterでも著名人のライブ配信は見ることができますが、自分の好奇心の「外」にいるゲストも登場することで、「こんな生き方ありなんだ」と、たくさんのロールモデルを知り、インスピレーションを浴びてもらいたい。
受験や就活、現代の教育システムに役立つかはわからないけど、人生に役立つものでありたい。
そういうサービスを目指しています。
なぜ、13〜19歳か?
AI時代に先駆けて、既に個性を発揮しながら新しい仕事を生み出している世代がいます。彼ら/彼女らは、これまでのシステムから早々にはみ出していきます。
たとえば、中学2年生で海外留学を経験し、現在NEWS ZEROでコメンテーターを務める広告プロデューサーの辻愛沙子さん(1995年生まれ)。
小学生の頃からホテル経営者を志し、今は日本各地に話題となるホテルを生み出しながらブティックホテルという概念を浸透させている龍崎翔子さん(1996年生まれ)。
などなど、枚挙にいとまがありません(先述の通り、辻さん、龍崎さんはInspire Highのガイドとしてもご登場いただきます)。
すごいです、たしかにすごい。
でも、そこでふと、不遜にも思うのは、彼ら/彼女らが特別なわけではないのかもしれない、ということです。
本当はそっちがこれからのスタンダードでもおかしくなくて、単純にこれまでの仕組みやマインドセットが「スタートは社会に出てからだ」「やりたいことを見つけられるのは一握りの人だけだ」という観念に縛られてしまっている、という考え方もできると思います。
最近の脳科学の研究によれば、人間の一生の中で、「脳内可塑性(=脳の変化する力)」が最も高いのが思春期である13-19歳だと言われています(年齢の幅には諸説あるようです)。
この時期によい経験をすればその後前向きなマインドセットに、苦しい経験をすると後ろ向きなマインドセットになりやすいそうです。
しかしながら、(私の時代もそうでしたが、)実際の13〜19歳の生活環境は、受験、勉強、部活と、必ずしも新たなきっかけにあふれているとは言えません。
きっかけや機会さえあれば、もっと早く自分の人生が動き出す人はいるでしょうし、たとえ動き出さなかったとしても、「なぜ学ぶのか?」「なぜその道に進むのか?」に対して自分なりの答えを持てさえすれば、大学受験や就職活動への漠然とした違和感や不安も少し解消されるのではないかと思います。
少し脱線しますが、こんな話を続けていると、「教育のことなら学校でやればいいじゃないか」という声もあるかもしれません。
ですが、たとえば既存の高等学校のシステムだと、一人の先生が多くのコマを担当する仕組みで、その中心人物である先生自身も超多忙。
学校現場の先生にもインタビューを重ねてきましたが、正直、先生という仕事があんなにも忙しく、過酷な仕事とは思いませんでした。部活顧問などによる無報酬の休日出勤を当たり前に続けられている先生も本当に多く、主観も混じりますが、あれほど「見返りを求めずにやる」仕事は、この世の中にそうそうないんじゃないかと思います。
既存の学校システムの中で、「社会の中で活躍する人たちから学ぶ時間を作る」というのは不可能ではないでしょうが、どうしても学費の高い私学などに偏りがちです。
「子どもの教育は学校で」と任せっぱなしにしながら「最近の若者は…」と御託を並べるよりも、ぼくら社会の側からもアクションが必要だと思います。(もちろん、協力してくださる教育関係者の方、常に歓迎です! 学校とのコラボプランも用意しているので、お気軽にご連絡ください!)
教育における地域格差
最後に、教育における地域格差の話です。
インターネットがこれだけ普及したとは言え、教育における「地域格差」は依然として大きな問題です。
(画像引用元:https://www.moneypost.jp/604529/2/)
もちろん、首都圏になくて、地域にしかないものもたくさんあります。ただ、上記調査にあるような塾や予備校だけではなく、大型書店がない、美術館がない、イベントごとはだいたい都心、インターンシップに行ける企業がないなど、地域格差による機会の差は、大きな課題です。
Inspire Highの最大の特徴の一つは、インターネットがあり、スマートフォンを持っていれば、どこでも体験できるということです。
サービス開始に先駆けて、2019年は何度かテストで、ライブ配信セッションを実施しました。個人的に驚いたのは、東京の若者以上に、地方の若者の方が、Inspire Highを歓迎してくれたことです。
テスト配信後、愛知県の高校1年生からは「よく『広い視野や考え方を持ったほうがいい』と言われていましたが、ライブ配信に参加してその本当の意味が少しずつ分かってきました!」と、
静岡県の高校3年生からは「同じトピックに対して何一つ同じでない多様な意見があって、それを自由に交換することで、自分の視野や価値観も大きく広がりました!」と、
埼玉県の中学3年生から、「励まされたし、希望を持てたような時間だったなと感じます。親と見てたのですが、親にも私の思っている事をシェアでき、理解してもらえたような気がします。」と、コメントが寄せられました。
Inspire High、完全無料にはできないのですが、月額1500円です。
塾やセミナー、講演会と比べたらリーズナブルですし、タピオカ2杯分(!)、1〜2回の食事分で、人生を変えるきっかけを手にできるかもしれない、そういう価格設定です。
しかも、サービススタート記念ということで、最初の3回のライブ配信(3月14日まで)は無料です!(先述の辻さん、アーティストのSIDE CORE、詩人の谷川俊太郎さんの回!)
↓無料登録ページ
世界中のティーネージャーが、「Inspire Highで人生変わった」と言ってくれる未来に向けて、今日スタートします。初回のライブ配信セッションは2020年2月2日です。
はじまりたてということで、至らない点がたくさんあると思いますし、多くの困難が立ちはだかると思います。お気づきの点や、アドバイスありましたら、なんでもいただけたらうれしいです。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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