詩 マルクスは月を見上げたのだろうか
(『詩人会議』に以前掲載)
マルクスは月を見上げたのだろうか
狭間 孝
旧神戸居留地は街灯が灯り
古いレンガを彩り
並木道とビルの間から上弦の月が見えていた
僕は君からのメールの理由(わけ)を
頭の中で考えながら
「マルクス・エンゲルス」の映画を僕は観た
若き二〇歳代の彼らが生きて
「共産党宣言」を発表するまでの
一八四〇年のヨーロッパ社会の群像だった
どうしてこの映画だったのだろうか
わからないまま 感想をメールで送ったのだが
君は読者の広場の投稿を見たから と返信してきた
映画を観て思い出したのです
若いころ 三年半付き合った彼を
私の複雑な家庭に巻き込み悩ませたくないし
別れる道を選んだ
死の淵を見るほど苦しみ
私は別れた後も彼と同じ道を歩きたいと
遠く離れた町で 暮らしを育み子育てしながら
何事にも前向きに
生きる道を選び 歩いてきたのです ※
何とも素敵な投稿で目が潤み 僕は空を見上げた
マルクスは 月を見上げたのだろうか
夢見る人はロマンティスト
絶望を知る人は 希望を見出して
月に重ね合わせ 心を寄せると 僕は思う
そして 僕も
遠い昔 「さよなら」の
手紙をもらったことを思い出した
※二〇一八年六月十三日赤旗読者の広場
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