見出し画像

Go See!で見つけるプロダクト開発の突破口とその実践法

この記事はTimee Product Advent Calendar 2024の3日目の記事です。

みなさんGo Seeしてますか!
こんにちは!タイミーでプロダクトマネージャーをしている大嶋(@ta0o_o0821)です!

この記事では、つい見過ごされがちな「Go See(現場観察)」が、複雑なプロダクト課題をどのように解決するのかをお伝えします。データやインタビューだけでは見えない突破口を、Go Seeでどのように見つけたのか、その実例をぜひご覧ください!

💡Go Seeアプローチとは何か?
Go Seeとは、現場に足を運び、自ら体験しながら学ぶことです。このアプローチでは、現場観察や顧客との対話を通じて得られるインサイトが、数値データやリモートでの分析では見えてこない課題を明らかにします。


データ分析ではたどり着けない、プロダクト開発の突破口を探る

近年、データを用いた検証や調査は一般的になり、体系化されています。しかし、実際のプロダクト開発では「アナログな現場」や「複雑なオペレーション」といった数値では測りきれない要素に直面することが少なくありません。そして、その結果、プロダクト開発が行き詰まることも多々あります。

今回は、タイミーで実際に向き合った出勤簿プロジェクトを例に挙げながら「Go See」アプローチを活用し、現場での観察と対話を通じて顧客解像度を高め、データでは見えなかった真のニーズを引き出すことで、プロダクト開発を進めた具体的なプロセスを紹介します。

※本記事で取り上げる「出勤簿プロジェクト」は、労働基準法に基づく正式な出勤簿とは異なります。ここで言う「出勤簿」は、労働者の受け入れに関する情報(稼働歴、スキル、持ち物、貸与物など)を提供する機能を指しており、この名称を用いることで、読者にとってイメージしやすくすることを目的としています。

デジタルとアナログの交差点、出勤簿プロジェクト

物流企業をはじめ、ワーカーを大量に受け入れる現場では、誰がどんなスキルや勤務歴を持ち、どのような持ち物や貸与物が必要かといった情報の把握に多くの手間がかかっていました。顧客は管理画面から情報を手作業で吸い上げ、整理する作業に1日30分近くを費やしており、このプロセスを効率化する必要がありました。

しかし、この課題に対し定量的なデータ分析アプローチだけでは、解決策を導くのが難しい状況でした。現場ごとのオペレーションや制約が多様で、例えば管理画面へのアクセス権限がない拠点や、PCを持ち込めない現場もあるため、情報の共有方法や提供形式の最適解が見えなかったのです。また、受け入れ準備のタイミングや必要な情報項目が企業ごとに異なり、標準化が困難な点も課題でした。

Go Seeを取り入れた具体的プロセス

今回のプロジェクトでは、以下の手順でGo Seeを実践しました。

現地訪問を繰り返すことによる課題把握

💡eこのフェーズの目的
顧客の課題を特定し、現場オペレーションの詳細を把握することで、プロダクト開発の方向性を明確化すること。
特に分かっていなかったこととしては、管理画面上で情報を確認すれば良いのか、それとも紙で見える必要があるのか、という点。

Go Seeアプローチで得られたインサイト

  • 担当者が作業をしながら、即座に手書きで追加できる操作性が重要であること(例:臨時の注意事項や体調等の情報)。

  • 特記事項の記載において、その場で自由に特記事項を記載できる紙媒体特有の柔軟さが求められていること。

  • ワーカー自らが出勤時刻を記入している拠点もあるため、現場での自発的な記録方法が可能なこと。

これらのインサイトを基に、プロダクトの具体的な改善策を検討しました。次はPoCフェーズです。

PoCフェーズ

このフェーズでは、機能を提供する企業を少数に絞り込み、利用してもらうことで、小規模ながらも密度の高い検証を行いました。

💡このフェーズの目的
出勤簿の提供方法や情報項目についての学習を進め、利用における不確実性を減らすこと。
・さらに、全体展開に向けた論点を解消し、GTMの準備を進めること。

Go Seeアプローチを通じて得られたインサイト

  • 拠点によっては印刷可能な紙のサイズに制約があり、A4やA3などの異なるサイズに対応する必要があること。

  • 載せる情報が増えると文字の大きさが小さくなり、視認性が低下すること。

  • 出勤簿に記載される不要な列の削除や追加、編集にかかる時間が5分程度であっても、朝の忙しい時間に他のルーティン業務と並行して行う場合は心理的にも大きな負担となり、実際には利用されにくいこと。

これらのインサイトに基づき、PoCフェーズでは実際の使用環境に即した出勤簿の提供方法と情報項目の最適化を行い、全体展開に向けた準備を進めました。

GoToMarketプロセス

💡このフェーズの目的
全体展開後の利用促進、新たな課題の発見、さらなる改善を通じてプロダクト価値を最大化すること。

このフェーズでは、これまでのGo Seeアプローチにより顧客の解像度が十分に高まり、大きな論点についての不確実性が解消できています。そのため、GTMにおいてはフィードバックの量を最大化し、その取得速度を上げることに重点を置きました。

具体的には、定期的にアンケートを実施して顧客満足度や要望をヒアリングするとともに、担当営業からの意見を収集する方法を用いて、フィードバックを獲得していました。リリース後の1〜2週間で4〜50件の要望を収集し、この方法を活用しながら毎週2〜4つの改善を積み重ねました。また、マーケティングツールを活用して顧客へのアプローチを強化し、利用浸透を図っていきました。

このように、多様なフィードバックを素早く収集し、プロダクト改善に反映させることで、全体展開後の利用促進と新たな課題の発見、さらなる改善を通じてプロダクト価値の最大化を目指しました。

小さな一歩で大きな成果を得る

このようにGo Seeが成果を生む理由は、単なる課題発見にとどまらず、「現場の真実」を基点に解決策を構築できるからです。数字やデータでは見落とされがちな「現場の環境・条件」「人の動き」などによって生まれる「言語化されない違和感や不便さ」を直接観察することで、プロダクト開発の盲点を補完します。

さらに、現場で得たインサイトは、関係者との共通理解を深め、意思決定をスムーズにします。結果として、データや仮説だけでは到達できなかった課題解決が、現場とプロダクトをつなぐことで実現するのです。

Go Seeは、目で見て、耳で聞き、自ら体験するというシンプルな行動ですが、この実践がもたらすインサイトは、プロダクト開発における確実な突破口となり得ます。誰もが思いつきながらもつい後回しにしてしまうその一歩こそが、意外なほど大きな変革のきっかけになるかもしれません。

いいなと思ったら応援しよう!

大嶋泰斗
ここまで読んでくださり、ありがとうございます! シェアやコメントでみなさんの感想を聞けると嬉しいです!