建設工事受注動態統計の不正について調べてみた

あまりにも悪質な、そして繰り返される統計不正。まさに「主観的な願望を客観的事実にすり替える」という事例。😢。調べてみたこと、共通点について考えたことを紹介します。

まず記事(日経新聞「建設統計で不適切集計 国交省、データを二重計上」)です。12月15日午前の報道。今の所比較的詳しい方だと思います。時事通信の記事「斉藤国交相、統計データ書き換え認める 岸田首相「遺憾、再発防止を」―衆院予算委」にも簡単な発覚経緯の説明がありました。総合すると、わかったことは以下のとおりです。

建設工事受注動態統計:国の基幹統計の一つ、建設業の毎月の受注実態を示す。全国の約1万2000社を抽出して調べる。調査票を建設業者から集めるのは都道府県。国内総生産(GDP)の算出などにも使われる。

発覚経緯:立憲民主党の階猛氏への答弁。会計検査院の指摘。斉藤鉄夫国土交通相は15日の衆院予算委員会で認めた。(会計検査院の指摘時期、なぜ指摘できた?)

何時のデータ?:2013年~2020年、うち2020年は修正済。それ以前はデータがなく(!?)修正できない。

二重計上:当月に集まらなかったデータ分を回収率から逆算して推定値とした。その後遅れたデータを追加で計上。都道府県に対し、受注実績を実質的に書き換えるよう指示。(結果二重計上となる。)

その他:統計不正(厚生労働省の「毎月勤労統計」)は2018年末にも発覚、政府は他の統計の総点検や再発防止の取り組みを進めていた。

国交省見解:「処理は適切ではなかったが、違法には当たらないと認識している」

岸田首相見解:データ二重計上について「大変遺憾なことだ。統計の信頼回復のために、経緯を確認し、再発防止のためにどういった形でやるべきなのか至急検討し対応を考えたい」


感想。まだあった、またあった、やっぱりあった、が私の感想です。そして2013年から2020年と聞いて、あ、完全に安倍内閣の時だ、と。始まったのが第2次安倍内閣が発足した直後、終わったのが退陣した年。2013年は消費税がまだ5%でした。消費税を上げるためにGDPを良く見せている。当時から、そんなに景気が良いのかと疑問があったけれど、やはり何かが起きていたということです。そして忖度する必要がなくなったら、嘘を戻したいという力が働いて、修正していたのかも知れません。(やっている担当、それに都道府県側も勿論、不正を熟知していたわけですから)

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もう1点。2020年度は修正できたが、それ以前の情報がない?! これ、「デジタル庁」と言っている政権が言えることでしょうか?


共通点:続いて2018年発覚の厚労省毎月勤労統計の不正と、今回の2つの不正で共通することを考えてみます。今回の改竄の情報はまだ十分ではありませんが、推測も含め、4点あると思います。

(1)目的に沿った方向のデータを改竄が行われている
「経済が順調である」と主張したいように見える。結果的に願望に近づく形での改竄になっていた。

(2)「補正」を使う
統計には全数調査と標本調査があります。全数調査は文字通り、全部を調査。標本調査は事前に(偏りなく)選んだ対象のみを調査する方法です。今回の2例は、この調査すべき対象全部の調査をしたいが、実質的にできないという状況から起きたこと。きちんとした統計調査であれば、不足したデータを「補正」することはあるが、それをどう集計するかを2例ともごまかしていた。

(3)外部からの指摘で発覚
今回の事例の発覚詳細は不明なのでわかりませんが、多くの場合、誤魔化しの初めは繕えても、誤魔化しを直す方が発覚しやすいのかも知れません。毎月勤労統計の不正は、統計の専門家が統計データの不自然さに気が付いたことから発覚しています。

(4)安倍晋三の影
毎月勤労統計の不正は2004年に始まったとされるので、小泉政権の時。但し2003~2004年に安倍は自民党幹事長、2006年第1次安倍内閣発足。(この少し前、NHKの番組などにも圧力をかけていたことが知られている。)


もう一度言いたい。実態を正確に把握するデータを使って、政策を決めて欲しい。決して政策(願望)にあわせてデータを作ってはいけない。

  願望にあわせて数字を作ってはいけない
  主観的な願望を客観的事実にすり替えてはいけない

  客観的なデータを大切にしよう!