【LGBT×組織】フェーズ1:「LGBTって何?」の期
■「LGBTって何?」の期
さて、2015年を振り返ると、私が所属していた会社でも、私が営業担当・ダイバーシティ推進担当としてお邪魔する多くの企業でも、「LGBTって何?」という状況が当たり前にあったような気がします。
「なんとなく、最近、耳にすることが増えたけど…、正直、あまりピンとこない」「同性愛者がいる、ってことだと思うけど、自分たちは会ったことがない…」そんな声をよく耳にしました。
LGBTと組織との関係性を考えると、まずはこの「LGBTって何?」というフェーズがあるのではないかと思います。
■私が、ゲイであることを社内にカミングアウトした日のこと
2015年の秋、私は当時所属していた企業で、ゲイであることをカミングアウトしました。親しい同僚や一部の役員は知っていたけれども、全社的には開示していなかったので、驚いた人、衝撃を受けた人もいたかもしれません。
当時は研修事業会社で、新作研修コンテンツ・プログラムを開発する立場だったので、「最近、新作を作りました」と社内で発表会・勉強会を開きました。
そこで、当日、私はこんな感じでマイクを握り、話し始めました。
「今日は、LGBT研修を紹介します。皆さん、LGBTって言葉、聞いたことはありますか? 聞いたことがある人は、手を挙げてください」
さすがは、研修事業会社、ほぼ全員の手が挙がります。
「では、LGBTってどういう人のことを言うかを説明できる人は、そのまま手を挙げていてください」
ちらほらと、手が下がります。でも、まだ挙げている人が多い。
「では、次に、LGBTに会ったことがある人、周りにLGBTがいるよという人は、そのまま手を挙げていてください」
一気に手が下がり始め、挙手している人はわずかになりました。
私は、緊張を隠して、冷静を装って、笑顔を意識して続けました。
「明日、私が同じ質問をしたら、皆さんの手は挙がったままになります。何故なら、私がLGBTの当事者だからです」
それが社内でのカミングアウトでした。おそらく、この日までは、私がいた会社も、「LGBTって何?」という状況だったのではないかと思います。
■「LGBTって何?」から始めよう
2022年1月にこの記事を書いていますが、今でもまだ、「LGBTって何?」「知識は持っているつもりだけど、いまいちピンと来ていない」という組織に出会います。あるいは、私がかつて所属していた会社も、その後、色々な人が入れ替わって、再度同じ質問をしたら(「LGBTに会ったことがある人、周りにLGBTがいるよという人は?」と尋ねたら)、手を挙げない人がいるかもしれません。
私は、「LGBTって何?」と、知識を持っていないことを明らかにすることは悪いことだと思いません。「よく分からないから、教えて」という姿勢こそが、とても大切だと思うんです。知ったかぶりをするよりは、「知りません」と素直に認めてしまうことが大事。だって、ここから知っていけばいいのですから! 「関心もない」「興味もない」よりは、「今はよく分からないけど、知りたいと思う気持ちはある」と言ってくれる組織・人の方が私は好きです。
■「LGBTって何?」を放置しない方が良い理由
さて、「LGBTって何?」という状況においては、おそらくカミングアウトをしたLGBTがいない状況かと思います。ただし、ここで気を付けていただきたいのは、「LGBTがいない」というわけではなく、「カミングアウトしたLGBTがいない」という事実があるだけだ、ということです。
カミングアウトしていないLGBTのこと(人や状況のこと)を、「クローゼット」と言います。もしかしたら、皆さんの周りにも、クローゼットのLGBTがいるかもしれません。
「LGBTはいないよね」と思い込んでいて、例えば、「LGBTって気持ち悪いよね」とか、「うちでは、LGBTに対する施策は不要だよね」とか、そういった発言が飛び交っていたら…、LGBTであることを公にしていない当事者はどう思うでしょうか。
■「35歳までに結婚しない人は、何かがおかしい」と言われた時の話
実は私にも経験があります。まだ20代の頃、当時、所属していた会社の先輩が、ふと雑談の延長戦で、「35歳までに結婚しない人は、何かがおかしいわよ」と言いました。
その会社はベンチャーだったため、社員の平均年齢が若かったですし、未婚の人は皆、20代、30代前半だったのではないかと思います。その発言をした女性は(女性でした)、40代で既婚でしたが、「だって、普通に暮らしていたら、30歳前後で結婚するでしょう?」と真顔で言いました。
ともに話を聞いていた同僚も、「まぁ…、35歳までには、結婚したいですね」とか、「不倫とか、ですかね」とか、「性格に難があるんですかね」とか、話を合わせていましたが、私は何も言えず、顔が熱くなるのを感じながら、下を向いていました。
「私はゲイで、この国では結婚することができないんです」と言う勇気もつもりもなく、黙っていたわけですが、非常に居心地の悪い想いをしました。「35歳までにはこの会社を辞めないとな」と苦笑いしたのも覚えています。そして、その日から、仕事でその女性と話す時にも、若干の緊張を抱いていたように記憶しています。
■「うちにはLGBTはいない」ではなく、「うちにもLGBTがいるかも」を当たり前に
「うちにはLGBTはいない」とそう言い切ってしまう前に、「もしかしたら、いるかもしれない」と思い、「LGBTって何だろう?」と知識を得ようとすることが大切ではないでしょうか。
「いない」と決めつけ、思い込んでしまうと、例えば、前述のような発言があったり、セクシュアルハラスメントやジェンダーハラスメントに該当する発言や対応が生まれてしまうリスクもあります。
見えにくいマイノリティだからこそ、皆が知らないところで、傷つけている可能性もあります。「うちにもLGBTがいるかも」を意識して、当たり前に、前提にすることが大切です。
■ちなみに、LGBTの人口は、全人口の5%~13%くらい?と言われている
ちなみにLGBTがどれくらいの数、いるかどうかは、調査によって結果が異なっています。正式な数値を可視化するような調査が行われているわけではないので、諸説あるのですが、全人口の5%~13%が、LGBTに該当する、という数値結果が出ています。これは、左利きの人数や、AB型の人数と同じくらいだそうです。
いかがでしょう? 意外と少なくないと思いませんか? 皆さんの周りにも、クローゼットなLGBTも含め、当事者がいるかもしれませんよ。
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