介護保険はサービス同士で食い合いをしているのではないか?
介護報酬改定についての議論
令和6年度の介護報酬改定を見ていると、通所系サービスは軒並み介護報酬が上がり、逆に訪問介護で介護報酬が下がることがわかってきました。
表向きは、訪問介護の利益率が高いため、診療報酬を下げたように書かれています。
もちろん、理論的には引き下げの理由にはなるかもしれません。
でももう少し理由があるのではないかと思うようになりました。
サービス単価が上がると、受けられるサービス量が減る?
介護保険は、介護度に応じて支給限度額というものが決められています。
介護保険の支給限度額は、2023年10月時点では、要介護1が16万7,650円、要介護2が19万7,050円、要介護3が27万480円、要介護4が30万9,380円です。利用者は所得などに応じて1~3割を自己負担します。たとえば、要介護4で1割負担の場合、1ヵ月あたりの介護保険サービスへの支払額(上限)は3万938円です。
つまり、支給限度額は決まっているので、1回あたりのサービス単価を上げると、実際の受けられるサービス量が減ってしまうことが起こるのです。
支給限度額を上げずに、サービス単価だけを上げると、自然とサービス同士での食い合いが始まります。
今回の場合は、通所サービスの単価を上げても、訪問介護の回数がなるべく減らないような方向で考えられたのではないかと思います。サービス同士での食い合いを誘発してしまうからです。
介護度が上がってもサービスが減る?
認知症の人は、認知機能低下のため一人では生活できない状態になります。要支援の段階で進行予防としてめいっぱいデイサービスの利用を行っている方だと、進行した場合に、支給限度額に阻まれ、訪問介護の支援を受けることが難しくなってしまいます。
これは区分変更申請をしたとしても、解決しません。なぜなら通所介護や短期入所のサービスは介護度によりサービス単価が上がってしまうためです。
介護度が上がってもサービス量を増やすことができないような現在の介護報酬制度は、医学的にみると少し不可解です。例えば、小規模多機能型居宅介護を利用中に、要介護1から要介護2に上がると、小規模多機能型居宅介護のサービス単価が上がります。そうすると支給限度額の影響で週1回の訪問看護が受けられなくなってしまう場合があるのです。
通所介護と訪問介護のバランスがうまく取れず、十分な在宅介護が受けられず、施設入所を選択される可能性も出てくると思います。
介護サービス量が増やせるような改定を
在宅生活を長く送るためには、少しずつ支援を増やしていく必要があります。本人の病状も大事ですが、それに連動する介護サービスを使いこなすことが、本人の在宅生活延長の肝のように思います。しかしこれがなかなか難しい。
区分変更申請を行う人が毎月いて主治医意見書を書いている私から見ると、介護度が上がっても、サービス単価が上がって、支援の量や種類が増やしにくい現状にはもやもやします。
介護報酬を議論する方々においては、モデルケースをしっかりと見定めて在宅生活を送る利用者さんたちの介護度が上がっても、これまで通りの生活を送り続けられるように、総サービス量が増やせるような制度設計を議論していただきたいと思います🍀
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