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「100日で描く遠距離介護と仕事の両立」Day 7: MRIと脳血流検査

Day 7: MRIと脳血流検査

敏江のMRIと脳血流検査のため、洋子は再び高速バスで帰郷した。検査室に入る前、敏江は「この機械、ちょっと怖そうね…」と不安げな表情を見せた。洋子は「大丈夫、すぐ終わるからね」と声をかけたが、内心では敏江の不安が伝わってきていた。
2つの検査で午前中いっぱいの時間がかかった。検査中、機械音が鳴り響く中で敏江は緊張して体がこわばっていた。「洋子、あの音が大きくて少し怖かったわ…」と、検査後に敏江は呟いた。その疲れた表情に、洋子は胸が締め付けられる思いだった。
洋子にとっても疎遠になっている故郷への高速バスでの移動は心身をすり減らした。検査結果は後日となり、その場では分からないことに苛立ちを覚えつつも、洋子は「正確な診断を得るためには仕方ない」と自分に言い聞かせた。

疾患別の画像検査の特徴

アルツハイマー型認知症では、MRI(磁気共鳴画像)で海馬側頭葉と呼ばれる脳の部分に萎縮(しぼんで小さくなる)が見られます。海馬は記憶を司る重要な場所で、側頭葉は言語や感覚の認知に関わっています。また、脳血流検査では、頭頂葉側頭葉の血流が低下していることがよくあります。これらは記憶や判断力、言語能力が低下するアルツハイマー型認知症の特徴と一致します。
レビー小体型認知症は、MRIで特徴的な変化はほとんど見られませんが、全体的に脳が萎縮していることがあります。この病気は、視覚的な幻覚や運動の困難さが特徴です。脳血流検査では、後頭葉(視覚を処理する場所)の血流が低下していることが見つかることが多いです。これが、レビー小体型認知症の視覚症状と関連しています。
血管性認知症では、MRIで脳梗塞脳出血の痕跡が見つかることが一般的です。脳梗塞とは、脳の血管が詰まって血液が届かなくなり、脳の一部がダメージを受けることを言います。脳血流検査では、特定の脳の部分で血流が低下していることがわかります。血管性認知症は、脳の血管の問題が原因で、認知機能の低下が起こる病気です。
前頭側頭型認知症では、MRIで前頭葉側頭葉の萎縮が特に顕著に見られます。前頭葉は感情や行動の制御、計画などを担当する部分で、側頭葉は言語と感覚を処理します。脳血流検査でも、前頭葉側頭葉で血流が低下していることが確認されます。この病気は、特に人格や行動の変化が初期から目立つことが特徴です。
混合型認知症は、複数の認知症疾患が合併している状態です。アルツハイマー型認知症血管性認知症の特徴を併せ持つものが多いです。MRIでは、それぞれの病気の特徴が混在して見られ、例えば海馬の萎縮や脳梗塞の痕跡が同時に確認されることがあります。脳血流検査では、複数の部位で血流が低下していることがわかります。
アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症が合併する場合もあります。このように、複数の要因が重なり合って認知機能の低下が引き起こされるのが混合型認知症です。
正常圧水頭症(NPH)は、脳の中にある脳脊髄液という液体が異常にたまって脳を圧迫することで、歩行障害、尿失禁、認知機能の低下が起こる病気です。MRIでは、脳室という脳の中心にある液体がたまる場所が大きく広がっているのが特徴です。特に、側脳室の拡大が顕著に見られます。脳血流検査では、特に特徴的な所見はありませんが、脳全体の血流が低下していることがある場合があります。正常圧水頭症は、脳脊髄液の排出を助けるシャント手術が効果的な場合があり、早期発見と治療が重要です。
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は、急速に進行する認知機能の低下を伴う稀な神経変性疾患です。異常なプリオンタンパクが脳内に蓄積されることで発症します。MRIでは、脳の一部、特に大脳皮質基底核において、高信号領域(DWIやFLAIRという特殊な画像で異常が見える)が見られることが特徴です。これが「皮質リボン状」と呼ばれる独特のパターンで現れることがあります。脳血流検査では、脳全体または特定の領域での血流低下が確認されることがあります。CJDは進行が非常に早く、通常は数ヶ月から1年以内に致死的な結末を迎えることが多いため、迅速な診断が必要です。
多発性硬化症(MS)は、免疫系が誤って脳や脊髄の神経を攻撃することで、神経機能に障害が生じる疾患です。進行すると認知機能の低下を引き起こすことがあります。MRIでは、脳や脊髄に複数の病変(白斑)が見られ、特に脳の白質に散在する小さな病変が特徴的です。脳血流検査では、通常特異的な所見はありませんが、病変が集中している部位での血流低下が確認されることがあります。多発性硬化症の治療は、病気の進行を抑える免疫抑制薬などが用いられます。
慢性硬膜下血腫は、頭部外傷後に硬膜下にゆっくりと出血が起こり、数週間から数ヶ月かけて血液が溜まることで脳を圧迫し、認知機能の低下を引き起こすことがあります。MRIでは、脳の表面にある硬膜下腔に血液が溜まっている様子が確認されます。これは、薄い膜に囲まれた液体のように見えることがあります。脳血流検査では、血腫による圧迫のために血流が低下している部分が確認されることがあります。この病気は外科的に血腫を除去することで、症状が劇的に改善することが多いです。
これらの病気は、認知症と似た症状を引き起こすことがありますが、原因や治療法が異なります。そのため、正確な診断が非常に重要であり、適切な画像検査を通じて疾患を特定することが重要です。

  • 脳の画像検査でわかる認知症の種類。MRIや脳血流検査で正確な診断を受けましょう!

次回: Day 8 - 認知症の診断ひつじ先生から、ついに診断結果が告げられます。続きが気になる方は、スキ・フォローして次回をお楽しみに!



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