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両立支援物語まとめDay 1~10 敏江が認知症?「100日で描く遠距離介護と仕事の両立」

題名をクリックすると、その日のちょっとした関連知識を得ることができます。よろしければストーリーと合わせてお楽しみください。

認知症となった敏江と遠距離介護をする洋子の物語のDay1~10のまとめを作りました。
できるだけ現実に起こりうることに忠実に物語を作っています。今回は、この物語をまとめて読めるようにしました。

もしなにか聞きたいこと、情報として付け加えた方が良いのではないかと思うことがありましたら、コメント欄に書き込んでいただけましたらできるだけお答えします。
それでは物語スタートです!


物語「100日で描く遠距離介護と仕事の両立」

Day 1: 叔母の異変に気づく

洋子は、久しぶりに叔母の敏江と電話で話をしていた。敏江は88歳、独り暮らしを続けている。両親が他界した今、連絡を取っている唯一の親戚だ。電話口での元気な様子が洋子にとっての安心材料だった。しかし、この日の会話は少し違った。「洋子、今日は何曜日だったかしら?」敏江の声には焦りが混じっていた。これまでも小さな物忘れはあったが、今回の質問はいつもの敏江らしくない。洋子は笑いながら軽く受け流したが、その夜、胸の中に漠然とした不安が広がった。
次の日、敏江に電話をかけると、彼女は昨日の話を全く覚えていなかった。さらに、「家の鍵を見つけられない」と言い、いつも通りの明るさが感じられなかった。この異変は偶然ではないかもしれない。洋子は、叔母が認知症かもしれないという疑念を初めて抱いたが、同時にその現実を受け入れることに抵抗を感じた。
敏江はふと呟いた。「昔はこんなことなかったのにね。歳をとるって、こういうことなのかしら…。」洋子は電話越しに、敏江の声に微かな寂しさを感じ取った。

Day 2: 叔母の忘れ物が増える

洋子は不安を抱えつつも、敏江との連絡を続けた。ある日、敏江は「洋子、私、また財布をどこに置いたか忘れてしまったの」と言った。この数週間、同じようなことが何度も起きていることに気づいた。財布、鍵、眼鏡、さらには買い物リストまで、何度も同じものを探しては失くしている。
「洋子、どうしてこんなに忘れるんだろう。私、もうダメかもしれないね。」敏江は冗談めかして言ったが、その裏には本気で心配している様子が見え隠れしていた。洋子は「大丈夫だよ、きっと疲れてるだけだよ」と励ますが、自分の中の不安は消えない。
「でもね、洋子。この間も、スーパーで何を買うか忘れちゃって、どうしようかと思ったの。いつもならそんなことないのに…。」敏江の声は、弱々しく揺れていた。

Day 3: 遠距離介護の戸惑い

洋子は、敏江の状況をどうやって支えるべきか悩み始めた。自分は都市部に住み、仕事も忙しい。頻繁に実家に帰ることは難しい。それでも、何かしなければいけないという思いが強くなる。洋子はインターネットで「遠距離介護」を検索し、どう支援すべきかの情報を集め始めた。
「洋子、あなたがこんなに気を使ってくれるのは嬉しいけれど、私はまだ大丈夫だからね。」敏江は電話で強がるが、その声にはどこか不安が隠れているようだった。洋子はそんな敏江の言葉に安心したい気持ちもあったが、現実はそう甘くないことを痛感していた。
「遠くからどうすればいいのかしら…。もっと近くに住んでいれば…。」洋子は自分を責める気持ちを抱えながらも、最善の方法を模索していた。

Day 4: 初めての病院付き添い

洋子は、ついに決心して敏江を病院に連れて行くことにした。遠距離ではあるが、仕事の合間を縫って高速バスで敏江のもとへ向かった。
敏江の家に着くと、知っている叔母の姿とは異なっていた。家の中を見渡すと、整理されていない場所が目立ち、敏江が本当に助けを必要としていることが明らかだった。洋子は、敏江に悟られないように小さくため息をついた。「さあ今日は病院に来ましょう」というと、敏江は黙ってうなずいた。
病院の待合室で、敏江は少し不安げな表情をしていた。「病院なんて、行く必要ないわよ。大丈夫だから」と敏江は言うが、洋子は優しく手を握り、「念のためだから、一度診てもらいましょう」と微笑んで答えた。
診察室に入ると、温かみのある笑顔を見せる医師、ひつじ先生が待っていた。優しい口調で敏江に話しかけ、洋子の不安を和らげるように丁寧に説明をしてくれる。ひつじ先生は、敏江のことをじっくりと聞き、これまでの経過を踏まえて慎重に判断する姿勢を見せた。
診察が始まると、医師は丁寧に敏江の話を聞き、まず血圧測定と問診を行った。敏江の血圧はやや高めで、ひつじ先生は「最近、物忘れが増えたということですが、これまでの健康状態はいかがですか?」と尋ねた。敏江は少し戸惑いながらも、「特に問題はないと思いますが…」と答えたが、その言葉には自信がなかった。

Day 5: ひつじ先生との出会い

ひつじ先生は「では、診察室を歩いてください」といった。敏江は、昔よりすり足で小幅になった自分の歩き方に落胆していた。
「先生、私、これからどうなるんでしょうか?」敏江は少し不安げに尋ねた。「敏江さん、心配しすぎる必要はありませんが、認知症の可能性がないか確認しています。しっかりと検査をしましょう」と、ひつじ先生は優しく応じた。洋子は、敏江がこの先生に任せられるかもしれないという安心感を得た。
その後、ひつじ先生は簡単な認知機能検査をはじめた。日付や場所を尋ねられると、敏江は一瞬答えに詰まり、少し焦りを見せた。「あれ?今日は何日だったかしら…?」洋子はその様子を見て、胸の中に不安がさらに広がるのを感じた。

Day 6: 長谷川式認知機能検査

ひつじ先生は、敏江に長谷川式認知機能検査をした。検査室に入ると、敏江は少し緊張しながらも、先生の質問に答え始めた。しかし、簡単な質問にさえ答えられない場面が増え、洋子の心は次第に重くなっていった。
「敏江さん、今日は何曜日ですか?」という質問に、敏江は額にシワを寄せ、しばらく考え込んだ末に「木曜日…かしら?」と不確かな声で答えた。しかし、実際は月曜日だった。洋子は、これがただの物忘れではないことを痛感し、心の中で動揺を隠せなかった。
「洋子、これ、どうしても思い出せないの…。私、こんなに忘れっぽくなっちゃったのかしら。」敏江は額に手を当て、焦りを隠せない様子だった。洋子は「大丈夫、無理しないでね。」と声をかけたが、内心では心配が募るばかりだった。
検査結果は、正常より低いスコアだった。ひつじ先生は慎重に言葉を選びながら、「この結果を見ると、認知症の可能性が高いです。次に脳の画像検査を行いましょう」と話す。洋子がまた付き添える1か月後に行うこととなった。

Day 7: MRIと脳血流検査

敏江のMRIと脳血流検査のため、洋子は再び高速バスで帰郷した。検査室に入る前、敏江は「この機械、ちょっと怖そうね…」と不安げな表情を見せた。洋子は「大丈夫、すぐ終わるからね」と声をかけたが、内心では敏江の不安が伝わってきていた。
2つの検査で午前中いっぱいの時間がかかった。検査中、機械音が鳴り響く中で敏江は緊張して体がこわばっていた。「洋子、あの音が大きくて少し怖かったわ…」と、検査後に敏江は呟いた。その疲れた表情に、洋子は胸が締め付けられる思いだった。
洋子にとっても疎遠になっている故郷への高速バスでの移動は心身をすり減らした。検査結果は後日となり、その場では分からないことに苛立ちを覚えつつも、洋子は「正確な診断を得るためには仕方ない」と自分に言い聞かせた。

Day 8: 混合型認知症の診断と採血結果

検査結果を聞く日がやってきた。診察室で、ひつじ先生は洋子と敏江に向き合い、慎重な言葉で結果を伝えた。「敏江さん、MRIと脳血流検査の結果から、アルツハイマー型認知症と血管性認知症が合わさった混合型認知症の診断が下りました。」その言葉は、まるで静かな波が押し寄せるように洋子の心に響いた。
混合型認知症…?それって、治るんでしょうか?」敏江の問いに、ひつじ先生は「完全に治すことは難しいですが、進行を遅らせるために、脂質異常や、高血圧などの合併症の治療をしましょう」と優しく応じた。洋子は、ここからが本当のスタートだと感じた。
敏江は少し考え込んだ後、「洋子、私はこれからどうなるの?忘れてしまうのが怖いわ…。」その言葉に洋子は胸が締め付けられながらも、「一緒に頑張ろうね。私もなるべく来るようにするから。」と優しく答えた。洋子はそのように答えながらも、今抱えている仕事のことが頭によぎったことを敏江に悟られないようにするのに精いっぱいだった。

Day 9: 認知症の種類

洋子は、ひつじ先生の勧めで、認知症の種類について学ぶことにした。アルツハイマー型、レビー小体型、血管性認知症など、それぞれの特徴と進行の違いを理解することが大切だという。特に敏江の場合、混合型認知症の可能性が高いことが分かり、さらにこれに対する適切なケアが求められていた。
「敏江さんの場合、記憶障害が主な症状ですが、これから他の症状も出てくるかもしれません。その際には、対応を考えましょう」とひつじ先生が説明する。洋子は、この情報を元に今後の介護方針を考え始めた。
敏江はこれを聞きながら、「他の認知症って、どんな風になるのかしら…。私もそうなるのかな…」と不安げに尋ねた。洋子は「まだ分からないけど、一緒にできる限りのことをしようね」と答え、徐々に認知症に対する理解を深めることの重要性を感じていた。

Day 10: 遠距離介護と仕事の両立

洋子は、敏江の診断を受け入れ、いよいよ本格的な介護に向き合う決意を固めた。遠距離からのサポートをどのように行うか、仕事との両立は可能か、自分に何ができるのかを冷静に考える時が来た。
洋子は、率直に「敏江さん、一人で生活できる?」と聞いた。その言葉に敏江は内心腹立たしく思いながら、「大丈夫よ。あなたには迷惑をかけないわ」といい、なるべく目線を合わせないようにした。
洋子は、その言葉を聞きながら、敏江の将来について考えるも、受け入れたはいいが、何から手を付けていったらよいかわからないまま、帰りの新幹線に乗った。



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