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「100日で描く遠距離介護と仕事の両立」Day 9: 認知症の種類

Day 9: 認知症の種類

洋子は、ひつじ先生の勧めで、認知症の種類について学ぶことにした。アルツハイマー型、レビー小体型、血管性認知症など、それぞれの特徴と進行の違いを理解することが大切だという。特に敏江の場合、混合型認知症の可能性が高いことが分かり、さらにこれに対する適切なケアが求められていた。
「敏江さんの場合、記憶障害が主な症状ですが、これから他の症状も出てくるかもしれません。その際には、対応を考えましょう」とひつじ先生が説明する。洋子は、この情報を元に今後の介護方針を考え始めた。
敏江はこれを聞きながら、「他の認知症って、どんな風になるのかしら…。私もそうなるのかな…」と不安げに尋ねた。洋子は「まだ分からないけど、一緒にできる限りのことをしようね」と答え、徐々に認知症に対する理解を深めることの重要性を感じていた。(続く)


この物語はフィクションです。


医療・介護の知識: 認知症の種類ごとの進行の違いと治療法


1. アルツハイマー型認知症 (Alzheimer's disease)

疾患の特徴:

アルツハイマー型認知症は、記憶障害が初期段階で最も顕著に現れるのが特徴です。特に、最近の出来事を思い出せないといった短期記憶の障害が初期症状として現れます。進行は比較的緩やかで、数年から十数年かけて徐々に進んでいきます。進行に伴い、言語障害や判断力の低下、最終的には日常生活におけるすべての活動に支障をきたすようになります。

診断方法:

  • 問診と神経学的検査: 記憶や判断力、言語能力などの認知機能を評価します。

  • 画像検査: MRIやCTスキャンで脳の萎縮や異常を確認します。また、アミロイドPETスキャンを用いてアミロイドβの蓄積を確認することもあります。

  • 血液検査: 他の疾患との鑑別を行います。

治療法:

  • 抗認知症薬: ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害薬や、メマンチンなどが使用されます。ごく初期の場合、新規治療としてレカネマブが登用される場合があります。これらの薬は、症状の進行を遅らせる効果がありますが、治癒には至りません。

  • 非薬物療法: 認知リハビリテーションや運動療法、日常生活での活動を促進する環境整備が行われる場合があります。

予後:

進行は緩やかですが、脳神経細胞内に徐々に沈着物質が増えてきますので、最終的には全介助になることが多いです。平均的な生存期間は、診断後8~10年程度ですが、20年以上になる場合もあります。


2. レビー小体型認知症 (Lewy body dementia)

疾患の特徴:

レビー小体型認知症は、幻視(現実には存在しないものを視覚的に見る)やパーキンソン症状(動きが遅くなる、筋肉のこわばり、震えなど)が特徴的です。症状は日によって変動することがあり、認知機能が一時的に改善することもあります。また、REM睡眠行動障害(夢の中の動作を実際に行う)が見られることもあります。
認知機能としては、注意や視覚認知障害が主に見られます。

診断方法:

  • 問診と神経学的検査: 特に幻視やパーキンソン症状の有無を確認します。

  • 画像検査: MRIやSPECT、DaTSCANなどを用いて、脳内のドーパミン伝達系の異常を確認します。

  • 認知機能検査: MMSEや時計描画テストなどで認知機能を評価します。

治療法:

  • 抗認知症薬: ドネペジルが使用されます。アルツハイマー型認知症よりも注意障害の改善や幻視の軽減、日内変動の低減などに効果がある場合があります。

  • 抗パーキンソン薬: レボドパなどが使用されますが、過剰投与により幻覚や妄想が悪化する可能性があるため、慎重に投与します。

  • 非薬物療法: 生活環境の調整やリハビリテーションも重要です。

予後:

個人差はありますが、進行は比較的早く、診断から5~7年で運動機能の障害が現れることが多いです。パーキンソン病と同様に全介助が必要になることが一般的です。


3. 血管性認知症 (Vascular dementia)

疾患の特徴:

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などによる脳の血流障害が原因で発症します。段階的に進行するのが特徴で、新たな脳血管障害が発生するたびに症状が悪化します。記憶障害に加え、注意力や判断力の低下、感情のコントロールが難しくなることが多いです。

診断方法:

  • 画像検査: MRIやCTスキャンで脳の血管障害の有無を確認します。

  • 神経学的検査: 脳血管障害による神経学的な欠損(片麻痺や感覚障害など)を評価します。

  • 認知機能検査: MMSEやMoCAで認知機能を評価します。

治療法:

  • 血管リスク管理: 高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理や、抗血栓薬の使用が中心です。

  • 抗認知症薬: 血管性認知症でもドネペジルなどが使用されることがありますが、効果は限定的です。

  • リハビリテーション: 脳梗塞と同様、機能回復を目的としたリハビリテーションは効果的です。

予後:

血管性認知症は個々の脳血管障害の頻度や重症度により予後が異なります。多くの場合、数年で進行し、介護が必要になりますが、適切な血管リスク管理により進行をかなり遅らせることが可能です。適切な管理を行うことで20年以上進行が止まったようになる方もいます。


4. 前頭側頭型認知症 (Frontotemporal dementia)

疾患の特徴:

前頭側頭型認知症は、人格や行動の変化が顕著に現れるのが特徴です。初期には記憶障害が目立たないことが多く、社会的に不適切な行動や感情の平坦化、自己中心的な行動が見られます。言語の障害を伴うことが多く、伝えたいことがうまく出てこなかったり、物品の名前を思い出すことができなくなったりします。進行はほかの認知症を引き起こす病気に比べて比較的速いことが多いです。

診断方法:

  • 問診と神経学的検査: 特に行動や人格の変化を確認します。

  • 画像検査: MRIやCTスキャンで前頭葉や側頭葉の萎縮を確認します。

  • 神経心理検査: 特に社会的な認知や実行機能の評価が重要です。

治療法:

  • 非薬物療法: 行動療法や環境調整が重視されます。薬物治療は効果が限定的で、副作用のリスクもあります。

  • 薬物治療: 抗精神病薬や抗うつ薬が用いられることもありますが、効果は限定的です。

予後:

進行は速く、5~8年で認知機能障害が進行します。失語症を伴うことが多く、発話ができなくなったり聞き取りにくくなります。

結論

各タイプの認知症には異なる進行パターンや治療法があり、診断や治療には専門的な知識と経験が求められます。治療の目的は、進行を遅らせ、生活の質を維持することです。予後はタイプや治療介入のタイミング、患者個々の状況により異なりますが、早期発見・早期治療が重要です。


認知症の種類によって、進行や治療法が異なります。それぞれの特徴を知って適切な対応を。


次回: Day 10 - 遠距離介護と仕事の両立
洋子が現実を受け入れ、叔母の介護に向き合う決意をします。続きが気になる方は、フォローして次回をお楽しみに!




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