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出版前夜(いったん、こんまり本をトレースするところから始まった)

桃虚の本が12月4日に発売になる。

題名は、「神様と暮らす12カ月  運のいい人が四季折々にしていること」。
幻冬舎の編集者、袖山満一子さんが考えた。
彼女は森見登美彦や西野亮廣の本を担当しているプロフェッショナルだ。

私はもう20年も神社で神職をしているから、神の采配的な出来事が普通にあるし、毎日、墨をすって筆で文字を書いているし、龍笛を吹いてチルアウトもする。

社務所の床にごろんとすれば、天神さんゆかりの梅の木に実が成っていたりもする。

法螺貝の男が突然尋ねてきて「ここで吹いていいか」と言うし、神童がふらっと現れて鋭い質問を投げかけてきたりもする。

袖山さんの目には、それが「神様と暮らしている」というふうに映ったらしい。

私が日々あったことや旅に出たことを忘れないように記録しているこの noteの中でも、袖山さんに特に響いたのが季節にまつわることだった。


編集部作成のポップ

季節を五感で楽しむのは、人間として当たり前のことだと思っていたから、その方法を誰かにお伝えして面白がってもらえるものだとは、思っていなかった。

それに、「もっと、普通の生活をしている多くの人が経験することや、一般的な季節のしきたりと、神々とのつながりを、わかりやすく教えてあげるような形で、書いてみて下さい」と言われたので、すこし困惑した。

私の身の回りで起こる「おもしろエピソード」や「神社小ネタ集」は封印して、もっと普遍的で、一般的なことがらを、桃虚の視点で書いてほしいと言う。

エピソードトーク無し…。

迷走しながら書いてみた原稿は、何回もボツになった。「もっと読者に寄り添って」と言われたが、意味がよくわからなかった。

何回もボツになり、「ちょっと、無理かもしれないです」と挫折しかかった時、袖山さんから「ためしに、売れている本をトレースしてみてはどうか」との提案があった。

この場合のトレースというのは、書写ではなく、文体や構成をほぼ真似して、別のテーマを書いてみるという意味らしかった。

これは、考えるよりも体を動かすことを優先させる神社神道のやり方、すでにある型を「稽古」して体にフィットさせるという日本古来の伝統にも通ずるから、「いけるかも」という気がした。

どうせなら、桁違いの人数の人に寄り添ったベストセラー、近藤麻理恵さんの「人生がときめく片付けの魔法」をトレースすることにした。

このやり方はとても面白くて気に入った。何より文体や構成をトレースしていると、自分の中の別人格が書いているような気がする。なんのストレスもなくするする書けた。あ、私の中にもこんまりがいる! それは不思議で楽しい発見だった。私はこの、「ベストセラーをトレースする」という文章の稽古にはまった。

出来上がったものを袖山さんに送ると、「すごくいい! トレースしても、これは紛れもない桃虚の文章! 桃虚の視点!」と褒められた。

芯にあるものが唯一無二なら、どんな型にはめたとしても、それは唯一無二、ということなのかもしれない。

そこから1年をかけて、枕草子や源氏物語など超有名な古典をトレースしながら、「神様と暮らす12カ月」を書いたのだった。

読み返してみると、思った以上に内容が濃かった。それもそのはず、日本人が1500年積み上げてきた文化がここに詰まっているのだから。

幻冬舎plusの桃虚コーナーはこちら

https://www.gentosha.jp/article/26594/












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