DXは人を育て、組織を変革する手段
確かに、ある程度の規模を持つ組織では、リソースや影響力を活用して、成功や失敗をコントロールすることができました。例えばDXを始める前に実現可能な「成功」を定義し、成功体験を積ませることが可能です。 私が事業運営してた頃は「無能」も「有能」も組織が作り出すものと捉えていました。
例えば野球も監督によってチームがガラリと変わります。つまり、マネジメントの能力次第で「無能」も「有能」もコントロール可能です。マネジメントがどのように人材を評価・配置・育成し、組織の目的に沿った行動を促すかによって、個々のメンバーの能力が発揮されるかどうかが大きく左右されます。
2軍だったオリックス・ブルーウェーブ時代のイチロー選手に、仰木監督が従来のコーチ陣が否定的だったイチローの「振り子打法」を認め、その独自のスタイルを伸ばすサポートを行いました。この経験がプレースタイルやメンタリティに深い影響を与え、メジャーリーガーとしての道を切り開きました。
つまり、「無能」から「有能」にすることがマネジメント能力であり、仰木彬監督に求められたことだったと私は考えます。
DXは人を育て、組織を変革する手段
DXのリスクや損な役回りというイメージに対して最も早く反応するのが、組織で「有能」とされるタイプの人間です。彼らは即座にスケジュールを埋めてしまいます。 よって、「有能」とされる人間よりも、これから「有能」とすべき人間にチャンスを与えるのです。
これから「有能」とすべき人間に「チャンスを与えているんだ」という意思表示を行うことで、「有能」とされる人間も積極的にサポートしてくれます。 僅かなことでもDXにおける成功体験を作ります。
次にDXのデジタライズを本格的に始めるのは、こうした土壌ができてからです。
うまくいけば「有能」とされる人間から、次は自分がDXに取り組みたいと提案があるかもしれません。その時はスケジュールもうまく調整できるでしょう。
その時初めて、DXのデジタライズを本格的に始めるのです。DXの目的や期待される成果について、全てのステークホルダー間で共通理解を得ることが必要です。定量的なKPI(Key Performance Indicators)やKGI(Key Goal Indicators)を設定します。例えば、「業務プロセスの効率化」「コスト削減率」「顧客満足度の向上」など、具体的かつ数値化可能な目標を明確にすることで、成果が客観的に評価されやすくなります。適切なソリューションの導入と、それに見合った大規模な体制と予算を確保します。
このように「有能」とすべき人間にチャンスを与え続けることで、組織は生まれ変わります。
つまり「無能」も「有能」も組織が作り出すものなのです。