内池陽奈|Hina Uchiike

エッセイを書きます。たまに書くショートショートはマガジンにまとめています。 Conta…

内池陽奈|Hina Uchiike

エッセイを書きます。たまに書くショートショートはマガジンにまとめています。 Contact:Twitter(@t_n_wm)のDMまたはhinauchiike@gmail.comまで。

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  • ショートショート集

    不定期でショートショートを発信します。ジャンルは幅広く、文字数も作品によってまちまち。10分で読める不思議な世界を、どうぞ。

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【お知らせ】note始めました

時に沈黙は美しい。能ある鷹は爪を隠す。手札を全て見せるのは愚者の行い。自分をさらけ出すのは、品がない。そう考え生きている。 でも実際それは、実は自己顕示欲にまみれている、隙あらば目立とうとしてしまう承認欲求の強い自分への自らの戒めでありかつ、つまらない自分を把握されてしまうのが怖いと思う一見矛盾した気持ちを抱えた私の、無意識な自己防衛から創り出された思想なのだろうと思う。 頼りない、でも無いと困る、哀れで脆い支木のようなモットーなのだ。 人生ってなんだろう。恋ってなんだろ

    • 【ショートショート】ごめん、ありがとう、ごめん

      「お誕生日おめでとうございまーす!」  突然暗くなった店内。耳をつんざくような音楽が鳴って、バチバチと音を立てるケーキのプレートが運ばれてきた。  困惑したまま正面に座る海斗を見ると、いたずらっ子のような顔で笑っている。  店内中の拍手が鳴り止み、私たちに集まっていた視線が外れていく。そうして、私たちカップルのことから周囲の関心が薄れていくのを感じた。 「美里、びっくりした?」  満面の笑みをたたえる海斗。店内にはガヤガヤと雑多な活気が戻っている。 「うん、そりゃあね」  緊

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      • 【エッセイ】人生のどこからやり直したい?

        「人生がやり直せるとしたら、どこからやり直したい?」 先日、友人と他愛もない会話を楽しんでいる時にこんな話題が上がった。 私は、うーん、と少しばかり考えこんでしまって、その時ははっきりと答えられなかった。 やり直す必要がないほど今まで選んできた人生の選択に誇りを持っているけれど、まったく戻りたくないと言えば嘘になる。 その話題が楽しい空気の中に溶けていって、やがて歓談が終わり友人と解散した後も、私はずっと頭の隅で自分に問いかけていた。 私は、人生のどこに後悔を置いてきたの

        • 【ショートショート】しあわせ貯金

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        【お知らせ】note始めました

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        • ショートショート集
          4本
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          【ショートショート】記憶ディスク

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          【ショートショート】記憶ディスク

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          【お知らせ】処女作『結び目』Kindleにて再販売開始

          ごきげんよう。内池陽奈です。 サイト上のバグで購入が出来なくなっていた『結び目』が、URLを新しくし購入できるようになりました。 『結び目』は、私が大学の卒業制作を機に執筆した処女作です。 東京・御茶ノ水の地を舞台に、 人生の動機が見つからない浪人生・湊人、夢と現実のギャップにぶち当たる就活生・裕貴、パターン化された日常を消費していく老人・幸子、弟を亡くしたことを忘れられない店長・すず、人を本気で愛せない広告マン・旭たち5人が、少しずつ絡まり、縁が結ばれていく話です。

          【お知らせ】処女作『結び目』Kindleにて再販売開始

          【試し読み】発売中『結び目』より湊人の一節

           朝の授業前。机上に乗った成績表を見て、湊人は一人、絶句していた。  〈志望校判定〉と印刷された紙に書かれた値を見て、頭が痛くなっていくのを感じる。現役時代だった去年と何ら、成長していない。  努力をしなかったわけではない。勉強において、去年より理解が進んだ実感もある。なのにどうして、判定結果が伸びないのか。湊人はため息をつき、予備校の硬い椅子に深く沈み込んだ。  湊人は要領が良い方ではない。それは自分でも自覚していて、この予備校の高卒コースに入ってからは特に、がむしゃ

          【試し読み】発売中『結び目』より湊人の一節

          【ショートショート】お姉さんの恋人さんへ

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          【エッセイ】自由を爪に宿して

          大学生になった頃だろうか。 自分でお金を稼ぐようになって、ようやく自我が芽生えた気がする。 それまでは、自我が芽生えたふりの優等生だった。 「母や祖母の気に入る言葉」を「自分の意見」として発信して、かわいがられていたように思う。 今でもそれはあまり変わらない。それが私なりの気遣いの仕方だからだ。 でも、自分でお金を稼ぐようになって、メイクや服選び…ことにファッションに関しては自由にお金を使うようになった。 自分のお金だから、母や祖母の意見を聞かなくてもあんまり後ろめたくない。

          【エッセイ】自由を爪に宿して

          【エッセイ】そうして出来上がったまずいチーズリゾットを食べながら

          えらい早起きをすることがある。 今日もそうだった。日付を跨いだくらいに眠りに落ちて、午前3時にすっきりと目が覚めてしまった。 覚める──そういえば、小学生の時に赤川次郎の『夢から醒めた夢』を愛読してたから同訓異義語のテストで「夢からサメル」の答えを頑なに「醒める」にしてたな。正解は「覚める」なのに。イキってたな。 というか「覚醒剤」って「さめるさめる剤」ってこと?やべえ薬だなやっぱ。 いや、そんなことは置いといて。 ロングスリーパーの私が3時間そこらの睡眠ですっきり起き

          【エッセイ】そうして出来上がったまずいチーズリゾットを食べながら

          【エッセイ】そうして私は、ホットペッパービューティーを開いた。

          美容院で、髪を切ってもらうのが好きだ。 耳元で小気味よいリズムを奏でながら動くハサミ。シャンプーの時にゆっくりとされるマッサージ。徐々に頭が軽くなっていくあの感覚。すべてが、本当に気持ちいい。太陽のような美容師さんに照らされて、暗い私の内情を根掘り葉掘り聞かれるイベントは正直苦手だが、総合して「やっぱりお金を払った甲斐があったな」と思うくらいには髪を切られることが好きだ。 「髪の毛に血が通ってなくて良かった。もし通っていたら女は失恋で失血死している」 …なんて言ってたのは

          【エッセイ】そうして私は、ホットペッパービューティーを開いた。

          【エッセイ】おぼしきこと言わぬは

          巷には「女のさしすせそ」なるものがある。 「さ=さすが」「し=知らなかった」「す=すごい」「せ=センスいいですね」「そ=そうなんだ」。 相手の殿方の立ち位置を上げるために、へりくだったりよいしょしたりと大忙しの言葉たちだ。 この「さしすせそ」が世の中に流れているのを知った時、私は冷ややかな目でそれを傍観していたが、実際、女(性別に限らず、場の年少者など)として生きているうちで、この言葉に頼ったことは数知れない。 「ねえ、知ってた?」 会話の切り口にたびたび登場するこの言葉。

          【エッセイ】おぼしきこと言わぬは

          【エッセイ】人生をごはんに例えると

          私の人生、仕事、生き様をごはんに例えると何だろう。 常々考えている。私は、私の人生をどんなおいしいものにしようかと。 そう考え始めたのは中学一年生の時。中学受験の末、大妻中学高等学校に進学した際、創立者・大妻コタカ先生の自叙伝『ごもくめし』を手に取った時だった。はしがきに、タイトルである『ごもくめし』の由来が示されていた。 その表現に私は痺れた。 コタカ先生が生きていたのは1884年~1970年。 その当時、ごもくめし(文章から察するに、今で言う「ちらし寿司」が近いだろう

          【エッセイ】人生をごはんに例えると

          【エッセイ】結局、カラオケの正解ってなんなの?

          世の中がこんな状態になって、嫌なことばっかりだ。 もう3年目になるというのに、ウイルスは猛威をふるい続け、変異株が続々と誕生している。 口元を不織布で覆って過ごす日常に、辟易することにもすっかり慣れて、私たちは今日も生きている。 そんな中で、こんな世の中になってよかったな、と思うことが、 私にはひとつ、ある。 それは、カラオケを日常から排除できたことだ。 もちろんカラオケ店はもうとっくに営業を再開しているし、 一部の人々は再び日常にカラオケを取り込んで生きている。 それでも

          【エッセイ】結局、カラオケの正解ってなんなの?

          【エッセイ】生まれて初めて小説を書いた。

          生まれて初めて小説を書いた。 事の発端は、大学の卒業制作。 私の通っている大学──デジタルハリウッド大学──はクリエイティブな大学なので、 卒業論文より卒業制作で単位を得る生徒が多い。 私の所属するコミュニケーションデザインゼミも、例にもれず全員が卒業制作に取り掛かっていた。 コミュニケーションデザインゼミは、「オリジナルで課題解決せよ」というミッションを達成すれば、 手段は何でもいい、という、学内でも珍しいゼミだ。 例えば、3DCG映像制作ゼミやアニメーションゼミでは、「

          【エッセイ】生まれて初めて小説を書いた。

          【エッセイ】貰ったブランド品をSNSにアップする女が嫌いだ

          男運が、壊滅的に、無い。 それは血筋なのかもしれない。 思い返せば、 ひいばあちゃんの旦那さんは、生前ボケて暴れて大変だったというし(良いところもあったって言うけど)、 ばあちゃんの旦那さんは、一人でろくにお湯を湧かせない&その日着る服を自分で選べないくらい生活力が無いし(良いところもあるって言うけど)、 母ちゃんの旦那さんは、絵に描いたようなモラハラ夫だ(良いところは私を大学まで行かせてくれたとこくらい)。 先祖代々、男運が悪い。 そういえば、母ちゃんのいとこの女たちか

          【エッセイ】貰ったブランド品をSNSにアップする女が嫌いだ