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ギャンブル障害とダークトライアドの関係についての研究

ギャンブルは多くの人にとって楽しみの一つですが、中にはギャンブルに依存してしまう人もいます。
ギャンブル障害とは、ギャンブルをやめることができず、金銭的・社会的・心理的な問題を引き起こす状態です。
ギャンブル障害は、薬物依存や犯罪経験などの反社会的行動と関連することが知られています。

反社会的行動と関連するもう一つの要因として、ダークトライアドという概念があります。
ダークトライアドとは、マキャヴェリズム、ナルシシズム、サイコパシー傾向の3つの特性で構成されるもので、これらは社会的に嫌われやすい性格とされています。
ダークトライアドの特性を持つ人は、他人を利用したり、自分の利益を優先したり、感情的に冷淡だったりする傾向があります。

ギャンブル障害とダークトライアドの関係については、これまでにいくつかの研究が行われていますが、その結果は一致していません。
また、ほとんどの研究は西洋圏の人を対象としており、非西洋圏の人を対象とした研究は少ないです。
そこで、本研究では、日本人ギャンブラーを対象として、ギャンブル障害傾向とダークトライアドとの関連について調査しました。

方法

本研究では、過去一年で何らかのギャンブルをした20歳から64歳の日本人360名(男性180名、女性180名)を対象としました。
調査会社が保有するモニターから無作為に選ばれた人にWEBで質問紙を回答してもらいました。
質問紙では、以下の項目を測定しました。

  • ギャンブル障害傾向:修正日本語版South Oaks Gambling Screen(SOGS)と日本語版Problem Gambling Severity Index(PGSI)を用いました。これらはギャンブルに関する問題や苦痛を評価する尺度です。

  • ダークトライアド:日本語版Short Dark Triad(SD3)を用いました。これはマキャヴェリズム、ナルシシズム、サイコパシー傾向を測定する尺度です。

  • デモグラフィック変数:性別、年齢などについて回答しました。

結果

調査協力者の平均年齢は44.05歳でした。
SOGSの得点の平均値は8.41点(カットオフ点15点以上でギャンブル障害と診断される)、PGSIの得点の平均値は1.71点(カットオフ点8点以上でギャンブル障害と診断される)でした。
SOGSでは74名(20.56%)、PGSIでは28名(7.78%)がギャンブル障害と診断される基準を満たしていました。

性別による差を検討したところ、男性は女性よりもギャンブル障害傾向、ナルシシズム、サイコパシー傾向が高いことが分かりました。
マキャヴェリズムには性別による差は見られませんでした。

ギャンブル障害傾向とダークトライアドの関連を検討したところ、サイコパシー傾向は男女ともにギャンブル障害傾向と正の関連があることが分かりました。
マキャヴェリズムとナルシシズムは男性において一部で正の関連が見られましたが、女性では有意な関連は見られませんでした

考察

本研究では、日本人ギャンブラーにおけるギャンブル障害傾向とダークトライアドとの関連を調査しました。
その結果、サイコパシー傾向は男女ともにギャンブル障害傾向と正の関連があることが示されました。
これは、サイコパシー傾向を持つ人は衝動性や感情的な冷淡さなどの特徴を持ち、ギャンブルに対する抑制や自制が効かない可能性があることを示唆しています。
また、マキャヴェリズムとナルシシズムは男性において一部で正の関連が見られましたが、女性では有意な関連は見られませんでした。
これは、男性の方が女性よりもギャンブル障害傾向やダークトライアドの特性が高いことや、男女間でギャンブルの動機や目的が異なることなどが影響している可能性があります。

本研究は、日本人ギャンブラーにおけるギャンブル障害傾向とダークトライアドとの関連を明らかにした点で一定の意義があります。しかし、本研究には以下のような限界もあります。

  • サンプル数が少なく、年齢層やギャンブルの種類も偏っている可能性があります。若年層や臨床群を対象とした検討も必要です。

  • ギャンブル障害傾向やダークトライアドの特性以外の要因(例えば家族歴やストレスレベルなど)を考慮していません。これらの要因もギャンブル障害に影響する可能性があります。

  • WEBでの質問紙調査であるため、回答者の正直さや信頼性に疑問が残ります。面接や実験などの他の方法で補完する必要があります。

今後は、これらの限界を克服し、より精密な検討を行っていくことが望まれます。
ギャンブル障害に対して適切な治療や予防を行っていくためには、ダークトライアドのような反社会的行動と関連する特性を理解することが重要です。


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