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3枚でマンガ感想文『銀のアンカー』

 私はほとんど就職活動をしたことがない。中学生で将来は小説家と決めてしまっており、大学では就活に励む友人を尻目に、フリーターへの道を迷わずに進んでいた。
 しかし、望んでいるだけでは小説家になれない。大学に入ってからようやく書き始めた小説も難航し、最初の長編一作を完成させるのに、結局卒業後までかかってしまった。その時「あ、向いてないんだ」と気づき、ようやく就職しようと思ったのだ。
 この漫画に描かれている学生たちからすれば、どうしようもないクズにしか見えないだろう。
 学生たちは悩み、苦しみながらも、指導者の助言を受け努力し、成長する。そして「立派に」就活に挑むのである。
 そう、学生の時点でもう「立派」なのだ。
 立派な人は、仕事をしながら成長し、立派になったのではなかった。
 立派だから、仕事をしながら成長し、立派な人になれるのだ。
 だから私は、今の職場に就職して15年も経つのに、未だに立派ではない。どこか仕事に対し冷めていて、本気になれない。出世したくないし、余計なことには巻き込まれたくない。
 就活だけではない。人生には「本気になる」チャンスがいくらでもあったはずなのに、私は悉くそれをスルーしてきてしまった。その時は「それなりに」頑張るものの、決して完璧を目指さず、まあ「それなりに」評価されるくらいのところで落ち着いてしまう。
 だから私は職場からの評価は悪くはないが「難題を任せてもあいつならなんとかしてくれるだろう」とはならない。それはとても楽で、心地よい。
 それも仕事だからなんとかその状態でいられるが、仕事以外、つまり未だに諦められない小説に関しては、そこそこの努力すらせずに「退職後になんとかなるくらいで……」などと言って人生を浪費している。我ながら目も当てられない。
 この漫画を読んで、私の心は確かに動いた。出世は様々な要素が関わることだし、別に望まない。だが、少なくとも「立派」な社会人になりたい。そして、その後は「立派」な作家志望者となり、いつかは「立派」な作家になりたい。
 書いてしまった以上は、できる限りの努力をしよう。
 漫画の中で、学生たちの指導者はこう語る。
「小説家になりたければ365日1日も欠かさず20時間書き続ければ小説家になれる。
(中略)
 本気になるとはこういうことだ」
 さすがに現実には不可能だが、それぐらいの気持ちでやれということだろう。とりあえず私は、1日1時間書くところから始めている。

 何かの雑誌ではないが、この漫画はすごい。
 こんなクズに、小さくとも何かしらのアクションを起こさせている。
 2009年に完結した作品であり、現代の就活事情とは大きく異なっているかもしれないが、それでも充分参考になるだろう。
 もちろん学生だけではなく、迷える社会人や、夢を追っている人、諦めてしまった人、何かを始めようとしている人など、多くの人に読んで欲しい良作だ。


本文は1200字。つまり3枚。

『銀のアンカー』全8巻
 三田紀房/原作 関達也・三田/作画 集英社

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