半径1kmの旅:大洗駅
二度目の「半径1kmの旅」。今回は大洗駅周辺を歩いてみたい。
初回の常陸青柳駅周辺の旅が思ったより楽しかったので、早く旅に出たくてウズウズしていた。が、私はそんな時に決まって体調を崩す人なのだ。まんまと風邪をひいてしまい、1週おあずけとなった。
その1週の影響は目的地さえも変えた。本当は、牛久市のひたちのうしく駅に行くつもりだったのだが、風邪で寝込んでいるうちに、私は髪の毛を切らなければならないことに思い当たった。
行きつけの床屋はひたちなか市なので、牛久とは遠く離れている。髪を切ってから牛久に行くのはちょっと厳しい。もちろん逆もしかりだ。
かと言って、髪を切るのを来週に延ばすと、私の癖っ毛が猛威を振るい始めることは目に見えていた。仕方なく、ひたちのうしく駅は次回の旅に回すこととなった。癖っ毛猛々しいとはまさにこのことだ。
じゃあひたちなか市の駅にしたらいいと思うだろう。私もそう思う。だが、私がつい調べてしまったのは、大洗駅だったのだからしょうがない。
それに、ひたちなか市にはけっこう行くので、わりと詳しいのだ。勝田駅周辺も、けっこう前だが散歩したことがある。
その点大洗は車で市場に行ったりするくらい。駅周辺なんてさっぱりわからない。新しい発見がありそうなのは、断然大洗なのだ。
前置きが長くなったが、早速始めよう。今回も車で大洗駅に向かい、駅前の駐車場に停めた。1時間無料。その後1時間ごとに100円という、このご時世に涙が出るほど良心的なお値段。しかも、駅チカどころの話ではない。駅なのだ。
世知辛い世の中に一石を投じている。これだけで大洗駅が大好きになってしまった。
なぜか無性に古墳が見たい
私は歴史好きでもないし、骨董品などにも興味がない。なのになぜか、昔から古墳に惹かれる。
大洗駅からほぼ真東に古墳群があるということで、まずはそこを目指すことにした。
その前に駅舎に寄る。まあガルパン(『ガールズアンドパンツァー』)である。
私はガルパンには疎いが、大洗を舞台にした美少女ミリタリーアニメだということはわかる。駅舎内では大きなガルパンのパネルがお出迎えしてくれるので、お好きな方はぜひ行ってみてください。
売店に行って、駅弁を探す。昔この駅の「たこめし」と「はまぐりめし」を食べたことがあって、とても美味しかったのだ。だが、並んでいなかった。時刻は10時45分。入荷していてもよさそうだが、まさか人気すぎて売り切れてしまったのだろうか。
自他ともに認めるコミュ障の私だが、ここは店員さんに聞くしかない。
「あの……たこめしは売り切れですか?」
レジのおばちゃんはなにやら書類にペンでメモを書いている最中だったが「ああ、今お弁当は土日祝日しか入らないの。ごめんね」と優しく教えてくれた。
残念。いきなり出鼻を挫かれてしまったが、気を取り直して古墳を見に行こう。
駅前の大きな通りを北東に向かう。日差しは温かいが、風が強くて冷たい。海に近いからかもしれない。
少し進むと、早速面白い看板を発見した。
「大洗そのお眼科」という眼科専門のクリニックのようだが、看板に描かれているチョウチンアンコウの提灯がCの形になっている。
茨城名物の海の幸アンコウと視力検査のマークを合わせたユニークな看板だ。しかし、たしかチョウチンアンコウって食べられないんじゃなかったか。まあ、細かいことは置いておこう。
道なりに進むと「アライッペ」という奇妙な生物が描かれた看板があった。大洗のゆるキャラだろうか。初めて見た。
その上の電光掲示板に古墳群の情報の流れていたが、すぐに企業のCMに変わってしまった。ちょっと待ってみたが、なかなか流れないので先に進むことにした。
国指定史跡・磯浜古墳群ののぼりも立っている。盛り上がってきた。
が、のぼりはその周辺だけだった。道も盛り上がって、上り坂になった。古墳だから多少高い所にあることは覚悟していたので、大丈夫だ。
登り切って少し進むと、古墳群案内看板が立っていた。その先はさらなる上り坂だが、思ったよりも緩やか……に見えたが、運動不足のヘタレにはわりとキツい。
道の両側には民家がこれでもかと密集している。ごりごりの住宅街である。海が近いから、少しでも高い場所に建てたかったのだろうか。誰かのお墓の近く、なんて気にしていられないのだろう。
道はどんどん細くなり、車がすれ違えないくらいになってくる。おばあちゃんが自転車を押して歩いてくる。
「こんちは!」
と急に言われたので驚いたが、すぐそこの家の人に挨拶しただけだった。
しばらく進んだところに、一つ目の古墳が現れた。「車塚古墳」である。説明書きを見ると、大型の円墳であること、そして、やっぱり古墳の一部(周濠)は人家の下になっていることがわかった。
残念ながら入れなかったが、石段のようなものもあるので、入れる時もあるのかもしれない。一見ただの「こんもりした丘」だが、その周りの斜面に伸びる樹々が異様な存在感を放ち、ただごとではないことを知らせてくる。
車塚古墳からすぐの所に「姫塚古墳」があった。名前のイメージ通り、小さくて可愛らしい。こんな小さい前方後円墳があるのか。しかし、古墳群の中では一番古いらしい。一番偉い、のかはわからないが、ナメるべからずである。
ちなみに、この古墳の隣に家が建っている。「庭に古墳」状態のようで面白い。
そのままちょっと進んだところに「坊主山古墳」があったが、私有地の看板があったので、入るのをやめておいた。
さて、残るは大きな前方後円墳「日下ケ塚古墳」だが、どう行っていいのかわからない。古墳群の駐車場があったので行ってみたが、アパートがあるだけで、古墳の方向には道がない。
下る途中に道があるものと予想して、坊主山古墳入口まで戻り、急な坂道を下っていくと、そのまま商店街に出てしまった。「永町商店街」という昔ながらの商店街だ。
本当なら古墳を見て、休憩がてらこの商店街で団子を食べるはずだったが、仕方ない。先に団子をいただこう。
長方形の民家に、小さく「味の店たかはし」と書かれている。壁の一部がオレンジ色の瓦になっていて、なんとも不思議な感じ。ここの名物は「みつだんご」。1本70円だ。
タイミングが悪く爺さま三人組の後ろに並ぶことになってしまい、たった1本のためにずいぶん待った。爺さまたちは10本ずつとか買うので、団子が無くなるのではと心配になった。
ようやく順番が来て、1本頼む。電子ジャーの中にとろとろのみつがあるらしく、1本ずつ丁寧に纏わせてくれる。仕上げにきなこ。
今風のプラスチック皿に、昔ながらのみつだんご。なんかいい。店先のベンチに座って食べる。とろとろの甘辛い蜜ともちもち団子のハーモニー。きなこのアクセントも効いている。軽く三本は食べられそうだが、昼食の予定もあるので、やめておく。
さて、残る古墳を求めて、店の横から伸びる細い道を丘に向かって進むと、三匹の猫が集まっていた。かなり人馴れしていて、カメラを向けても逃げない。耳の後ろなんか掻いちゃって、余裕だ。
これからまた坂を登ることに少々テンションが落ちていたが、そんな猫たちに元気をもらった。
しかし、予想以上の激坂! 先ほど下ってきた道と比べものにならないくらいの斜度だ。雪が降ったら完全にアウト。雨でも危険だ。
ゆっくりゆっくり登ると、開けた場所に出た。古墳群の看板がある。パンフレットもあった。やっぱりここがメインだ。諦めなくて良かった。
左手には、目的の日下ケ塚古墳が鎮座していた。離れていてもはっきりわかる前方後円墳。四角の部分は大分削られてしまっているらしいが、それでも立派だ。
円墳部分を見上げると、石碑のようなものが見えた。登ってもいいのかもしれないが、はっきりした道がなさそうだったので、やめておいた。
古き良き商店街を歩く
古墳を背に、急すぎる下り坂をゆっくりゆっくり慎重に下る。転んだらどこまでも転がってお陀仏だ。日常生活では味わうことのない緊張感。旅の醍醐味かもしれないが、この齢でスリルはあまり有難くない。
ようやく商店街まで戻ってきた。古き良き商店街を眺めながら歩く。バルコニーに船が乗っている店や、東京堂というお洒落な雰囲気の店があったが、休みだった。
後から調べたら、船が乗っているのはヴィンテージのバーとのこと。東京堂は宝飾品や眼鏡などを扱っていたらしいが、閉店したそうだ。
閉まっている店も多いが、元気に営業している店もある。町の商店街としては、まだ活気があるほうかもしれない。まあ私は商店街に詳しいわけではないので、イメージだが。
そんな中、昔ながらのおもちゃ屋を見つけたので、つい入ってしまった。「ジョイショップ タグチ」外観は洋風でオシャレだが、中は完全に昭和のごちゃごちゃしたおもちゃ屋さん。商品は「ワニの歯を抜くやつ」など懐かしいものから、ボードゲーム、鬼滅やちいかわという最近のものまで幅広い。一応Switchや3DSのソフトも少し売られていた。
店の外には、これまた懐かしい100円のガチャガチャ。それが10台もある! と喜んでいたら、2台は200円だった。100円のはどれも微妙なおもちゃ。でも子どもの頃は、こういうのが欲しくてたまらなかったんだよなあ。
商店街ももうすぐ終わり、という時に、気になる店を見つけた。「Barberカリコミ」という床屋さんだ。名前がすごい。刈り込む気満々だ。
商店街を抜けて、少し大きな通りに出た。ここからは海に向かって歩く。するとすぐに「ゆっくら健康館」があった。名前は聞いていたが、こんな所にあったのか。
町営の温浴施設で、食堂もあって、名前のとおりゆっくらできるらしい。ちょっと心惹かれるものがあるが、そもそも私は公衆浴場の類が苦手なので、スルーした。もっと本格的な旅先だったら入ったかもしれない。
昔から知っているシンボルタワーに初めて登る
膝にやさしい勾配の道を海に向かって下っていくと、大洗のシンボル、マリンタワーが見えた。ここも今回の目的地の一つだ。
何度も近くを通っているのに、登ったことがない。いや、あるのかもしれないが、記憶にはないので、今回せっかくだから登ってみたいと思ったのだ。
マリンタワーの手前には芝生の公園が広がっていた。子犬と走ったら気持ちが良さそうだ、と猫派の私でもそう思う。
芝生の中にけっこう大きなきのこが生えていてびっくり。毒があるかはわからないが、子どもが触ったり、犬が食べちゃったらと思うと、怖い。
マリンタワーの一階はお土産売り場で、二階がガルパンカフェらしい。二階以上に上がるエレベーターに乗るには、チケットが必要とのこと。大人340円。高いような安いような。
しかしこのタワー、ずっと昔からあるような気がする。券売機もすっかり古ぼけて、お土産売り場もなんだか暗い雰囲気だ。調べてみると、1988年開業とのこと。36年前だ。大丈夫だろうか。大丈夫なんだろうな。こんなものを作る人間はすごい。
とりあえず展望台へ登ってみると、予想以上に絶景。この日は晴れていたので、海がきれいだった。巨大な船はフェリーだろうか。フェリーなんて、高校生の頃の修学旅行で1回乗ったことがあるくらいだ。その時は、たしか九州だった。大洗からは北海道の苫小牧までフェリーで行けるが、18時間くらいかかるし、宿泊料も含んでいるのでけっこう高い。一生に一度くらいは乗ってみたい気もするが、ちょっと尻込みする。
タワーを降りて、決めていた昼食場所へ向かう。ガルパンカフェのある2階には一応降りてみたが、カフェに入る勇気はなかった。
昔の「大洗アウトレット」の横を通って、海沿いを西へ。このアウトレット、今は「大洗シーサイドステーション」に名前が変わっていた。できた当初は賑わっていたが、すっかり寂れてしまっている。悲しくなりそうなので、モール内には入らず裏を歩いた。
地元名物を使った大迫力のパスタ
そこを抜ければ、目的地はすぐだ。「トラットリアJマリーナ」というイタリアンのお店。サラダビュッフェ付きのランチをやっている。小ぢんまりとしたホテルのような外観の「大洗マリーナ」の二階にあるレストランだ。
店に入ってみると、なんと「予約優先」の張り紙が。もちろん予約なんてしていない。せっかく歩いてきたのに、入れなかったらガッカリだ。
店員に聞いてみたら、1名なら大丈夫とのことで、ほっとした。窓際のカウンター席に案内される。海は見えないが、ギリギリ先ほどのフェリーが見える。テラス席もあって気持ちよさそうだったが、予約なしなので贅沢は言わない。
メニューを見ると、パスタ、ピザを中心に華やかなイタリアンが並ぶ。流石に魚介を使ったものが多い。ムール貝を使った漁師風のトマトソースパスタにも惹かれたが、ひと際目を引いたのは、茨城名物のアンコウを使ったトマトスープパスタ。
写真では、アンコウの身がゴロゴロ入っているし、あん肝も入っているらしい。なんかすごそうなので、あまり迷うことなく、それに決めた。
パスタだけで2,000円を超えたので、正直飲み物は水で良かったのだが、カッコつけてウーロン茶を注文した。
注文を終えて一息ついたので、早速ビュッフェコーナーへ向かう。ライスにカレー、スープ、生野菜に野菜の総菜が並ぶ。名前は忘れたけど、ウインナーくらいのサイズの小さな揚げパンがあって、塩パンと砂糖パンがあった。
まずは生野菜サラダからいただく。見るからに新鮮。食べたらやっぱり新鮮。野菜は意識しないと摂れないので嬉しい。シェフおススメのフレンチドレッシングも美味しかった。
続いてお総菜三種と、ワカメとコーン。マカロニサラダ、ゴボウサラダ、そしてキャベツをどうにかしたもの。ワカメもシャキシャキでとても美味しい。スープもワカメがたっぷりだ。
塩パンと砂糖パンも一つずつ試してみた。トースターがあったが面倒なのでそのまま持ってきてしまったが、焼けば良かったと後悔。もっちもちのドーナツのような食感。これは腹に溜まる危険なやつだ。
お待ちかねのアンコウパスタが届いたが、その巨大さにびっくり。大ぶりのラーメンどんぶりのような器に並々とトマトスープが注がれ、たっぷりのアンコウと野菜が泳いでいる。
あまりの迫力に気圧されながら食べてみると、とろみがあってしっかりと麺に絡まるスープがまず美味しい。野菜もきのこもたっぷり食べられて嬉しくなる。おそらく生パスタの麺は重量感があって、最初の数口で終盤の苦戦が想像できた。
そしてアンコウ。身はプリップリで切り身が大きい。長らく茨城県民をやっているが、こんなでかいアンコウの身を食べたのは初めてかもしれない。肝も濃厚で旨いが、火の通し方の違いなのか、鍋のようなトロッと溶けるような食感ではなく、どちらかと言えばこちらもプリプリ。
しばし夢中でアンコウパスタと格闘した。予想に反して、中盤からもうキツイ。ビュッフェのカレーはちょっとだけでも必ず食べたい私でも、流石に諦めることを決意した。デザートも無理かもしれない。
なんとか麺とアンコウを平らげたが、少しの野菜とスープは断念せざるを得なかった。ウーロン茶を飲みながら、腹が落ち着くのを待つ。カレーは絶対に無理だ。だが、ワンチャンデザートはいけるかもしれない。席を立って、ビュッフェコーナーへ向かう。
二種類のデザートがあったが、かなり迷った。コーヒーゼリーとパンナコッタだった。前者はサッパリしていて良さそうだが、なんだか一切れがでかい。後者はちょっと重そうだったが「お一人二個まで」と書かれている。書くほど旨いということか。
結局二種類とも皿に取って、席に戻った。まずはコーヒーゼリー。固めで、あまり甘くないのが逆にいい。パンナコッタは思ったより重くなく、これはたしかにもう一個食べたくなる。やめておいたけど。
時刻は1時を回っていた。この腹を抱えて歩くのは憂鬱だが、ずっとここにいるわけにもいかない。あまり早く動かないように気を付けながら、会計を済ませ、店を後にした。良い食事だった。
このレストランがある「大洗マリーナ」がなんなのか、外から見てもわからなかった。ホテルにしては小さい。帰ってから調べてみると、海釣りなどの船を貸したりしてくれる施設のようだ。なるほど、レストランにもお金持ちそうな客が多かった気がする。
寂れたショッピングモールを歩く
帰りは、大洗シーサイドステーションの中を通ってみた。予想していた通りの寂しさ。ほぼ人がいない。他の客とすれ違うより、警備員とすれ違うほうが多い。全部見たわけではないが、店は開いていたりいなかったり。二階のガルパンショップは数名の客がいて、やっぱり大洗はガルパンなんだと思い知った。
私も店に入り、ガルパンギャラリーやグッズを見たが、やっぱり興味を持つことができなかった。昔は立派なアニメ・声優オタクだったのに、衰えたものだ。もうあの頃のようなトキメキを感じることができなくなってしまったのだろうか。いや、単にミリタリーにも興味がないので、テーマ次第だと信じたい。
二階をふらふら歩いていたら、いかにも大洗な海鮮丼中心のお店があった。めちゃくちゃウマそうに見えたが、今は絶対食べられない。
モールには人がいないわけではなく、極端に少ないだけで、たまに客の姿を見かける。かなり厳しいだろうが、まだ諦めていない。次はお腹を空かせて来て、くまなく歩いて味わって、その生命力を感じたい。
マリンタワーの交差点まで戻り、駅方面に向かう。通りの名前が「きらめき通り」だった。駅からこの通りを歩いて行きつくのが、きらめきを失ってしまったショッピングモールというのがまた悲しい。いやいや、まだまだだ。私もまだまだ、頑張れる。ごく緩い上り坂を、重くなった体で一歩ずつ歩いていく。
駅から真っ直ぐな最高の道。この通りにならきらめきがあるはずだ。が、最初に見つけたのは綺麗なマンホールの蓋。ひらがなで「おすい」と書いてある。かわいく書いても「おすい」は「おすい」。ちょっと面白い。
駅まであと三分の一くらいの所に、ベンチがある小さな小さな公園があった。大洗町の案内板と手を伸ばす女性の像がある。女性の足元の台座には「邁進」の二文字。
真っ直ぐに突き進むことができなかった。負けて、折れて、裏切って、妥協して、誤魔化して、生きてきた。そんなヘタレには、あまりにも眩しい。でもまだ諦められない。諦めない。
さらに上ると、絶対美味しいであろうパン屋さんもあったが、この日は休みだった。
大洗駅に戻り、駅前のカジキ像を鑑賞。タクシーが三、四台いるのを見て、ここが観光地なのだと思い出した。タクシーに乗って、市場や大洗磯前神社や水族館などの人気スポットに行くのだろう。
確かに、そこに行けばステキなものに沢山出会えるだろう。それがわかっているのでタイパも良いし、結局はコスパもいいのだろう。
だが、たまには自分だけのきらめきを探して歩くのも楽しいものだ。
遥かな時を超えて住宅地に溶け込んだ史跡に。
ちいさなだんごやの琥珀色の蜜に。
古いおもちゃ屋さんの店先に。
寂れたショッピングモールを訪れる人々の眼差しに。
空に手を伸ばす像に。
それらに触れた、自分の心に。
旅に出よう。