子供の習い事は慎重に
上記は、私が強いられてきた習い事の数々だ。フルートと高校時代の英語に関しては、私が自らお願いしたものだが、残りは母が一方的に選んできて入会させられた。中には、私自身もそれなりの達成感を感じ、最終的には納得して通ったものもある。ただ、幼少期のピアノは完全に母の押し付けであり、あの時の恨みは今でも忘れていない。私は従順な子供だったが、隠れた反発心をずっと持っていた。やりたくないことはやりたくない!だから、後々塾に入れられた時も、全く勉強しなかった。結局、上記の習い事のほとんどは、親子関係を悪化させ、父が稼いだお金を無駄にした。
母と母の実家は、「ピアノは一般教養!弾けないなんて恥ずかしい!」という考えの家だった。なので、私も3歳から強制的に習わされていた。初めはお遊びだったけど、5歳くらいの時点で、すっかり嫌になってしまった。毎日、母にとんでもなく怒られながら、泣きながら練習していた。祖父母宅に行くともっと酷かった。私以外の子供を知らない独身の伯母と大正時代のしつけを良しとする厳しい祖母に、ピアノ部屋に2時間とか軟禁された。これは休憩できるまでの時間なので、休憩後また2時間とか閉じ込められた。「できるようになるまで絶対に他のことをしちゃダメ!」と言われていた。本当に恨みしかない。私はピアノが大嫌いになった。それなのに母は私にいつもこう言った。
「あなたがやりたいって言ったのよ!」
3歳になってすぐの、言葉もよくわかっていないような幼児に「やりたいでしょ?」と聞いて、よくわかぬまま「うん、やる」と言った私の言葉を人質に、「あなたがやるって言ったのに!」と毎日ギャーギャー怒る母。「そうよ!お母さんの言うことは絶対に正しいのよ!ちゃんと言うことを聞かないとダメでしょ?」と母をサポートする祖母と伯母。地獄でしかなかった。辞めたくて辞めたくて、何度も母に訴えた。その度に「大人になって後悔するわよ!」と脅された。「ピアノも弾けないなんて、ちゃんとした家の子供だと思われなくなる!」と。。。おかしな話だが母たちは、こういう価値観の人たちだった。最終的に10歳の時、どうにか辞めさせてもらえることになった。お陰様で、私はピアノが全く弾けない大人に育った。でも全く後悔していない。後悔すべきなのは、私から幼少期の貴重な時間と、音楽の楽しさを奪った母、伯母、祖母であり、私ではない。
次に塾。過去にも書いたが、私は勉強ができない子供だったので、小4くらいから個人学習塾みたいなのに無理やり入れられていた。母の迷走に巻き込まれ、中学受験をしないのに進学塾に行かされたりもした。私は考えた。家でうるさい母に怒られながら過ごすくらいなら、塾でぼーっとしていた方が楽かもしれないと。だから文句を言わずに通うことにした。ただし、文字通りぼーっとして過ごした。授業は全く聞いていなかったし、宿題も全部答えを写していた。当然、私がちゃんと答えられる訳がないので、半分は間違えて、半分だけ正解にした。更に、答えを書き写すだけだとバレるので、何度も書いては消して、苦戦して答えたかのように細工するような子だった。そんな細工をするくらいなら真面目に宿題をした方が速いのに。でも私は勉強が本当に嫌だった。塾では当然、いつも一番下のクラスだ。母は頭を抱えた。「なんでこんなに勉強ができないのかしら」と。
ちなみに中高時代も、色んな塾を経験してきたが、私はそこでも何一つ学んでいない。まさに「行っているだけ」。でも罪悪感なんてなかった。幼い頃から過干渉で支配的で、なんでもかんでも禁止してきた母に、後ろめたさを感じる必要なんてない。私は一見真面目で大人しい子だった。非行に走ることもなかった。でも、自分が納得できないことは絶対に従わないと決めていた。勉強ができないと困るのは自分なのに、落ちこぼれの娘になることで、母に反抗した。あの頃の私の本心を、母は今も知らない。
私の時代も、塾の夏期講習や特別講習、勉強合宿などの課金コースはもちろんあった。確か中3の時に、合宿に参加した。暇だから。ただ友達と外泊したかっただけ。朝から晩まで勉強する合宿なのに、私には勉強した記憶が全くない。なんか元僧侶の名物教師みたいな人がいたのは覚えている。勉強の合間合間に話すネタみたいなのがあって、面白おかしく話してくれた、勉強に何の役にもたたない、彼のくだらない話を微かに覚えている程度だ。あの合宿一体幾ら掛かったのだろう。。。
「うちの子は、塾で一所懸命頑張っているのに、イマイチ伸びない。量が足りないのかも。」というお母さんを見て思うことがある。残念ながら、お子さんは、きっと全く勉強していないと思うよ。。。量、云々ではない。そもそも授業を絶対に聞いていないはずだ。子供を侮ってはいけない。私も頑張って勉強しているフリをするのは非常に上手い子供だった。
子供のためにと、無理やり習い事をさせる親御さんたちに言いたいことがある。あなたが、子供のためにと思うことは子供のためにはなりません。子供が嫌がる事を強制したら、恨まれるだけ。従順な子供は特に要注意です。うるさいあなたを一時的に黙られるために、ありとあらゆる手で怠けてますよ。「失礼な、うちの子供はあなたみたいな怠け者じゃないわ!」という声が聞こえてきます。でもね、私は一度だって怠け者だと思われたことが無いんですよ。要領は悪いけど真面目で一生懸命頑張っている子、コツコツ努力をしている健気な子だと思われていました。そういう子供たくさんいますよね?勿論そういう子たちのみんながみんな、私みたいな子供だとは思ってません。でも中には、昔の私みたいに、ただただ無気力な子供が紛れています。その子たちにあなたの間違った熱意や正論は通じません。だって幼い頃から過干渉でうるさかったあなたから、本来自分で道を切り開くための力を吸い取られているから。
過干渉は子供の可能性を潰します。親が子供にできることは、子供の将来を心配することではありません。子供に衣食住を与え、毎日安全に清潔に過ごせる環境を用意すること。子供が家でリラックスできる居場所を確保すること。親子でなんでも話せる信頼関係を作ることが最優先です。
愛する子供が、何かに失敗して苦しむ姿を見たくない気持ちはわかります。でもだからといって、これから起こるかもしれないし、起こらないかもしれない出来事への不安から、保険のつもりで塾や習い事を子供に押し付けるのはおかしいよ!押し付けがましくて過干渉なあなたが、本来心配すべきは子供ではなくて、自分自身の不安や恐怖をコントロールできない、その心だと思います。