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再誕の物語 [DE:]Fanastasis 感想

こちらは探索RPG「[DE:]Fanastasis」の感想記事です。
後半に行くほどネタバレ満載ですので、未プレイの方はご注意ください。
これを書いてる人は

  • ベータ版はクリア済み

  • その後のバージョンアップで追加されたシナリオは未プレイ

  • しばらく経ってDE(有料)版をプレイ

という変則的なプレイをしています。
ベータ版からかなり日が空いて(3年くらい)プレイしたのでわりと新鮮な気分で楽しめました。

まずは軽くゲーム紹介

この記事を見てる方はプレイ済みがほとんどだと思われるが、一応ゲームのおおまかな内容について触れておく。

・・・と言いつつ

なんだかんだ公式の紹介文が一番わかりやすい。
この作品のコンセプトや特徴はすべて書かれているので、興味を持った方はまず公式の紹介文を読んでほしい。

それを踏まえた上での紹介

ゲーム開始時点では主人公は記憶を失った状態であり、自分が何者なのか、この世界で一体何が起きたのか……などは一切わからない。

主人公を待っていたと語る謎の少女(定番)エメルダ

冒頭で目的は示されるが、基本的にプレイヤーは自分の足で情報を集めに行く必要がある。そうして世界中に散らばった断片的な情報からこの世界の全体像を掴んでいくのが本作の主な流れ。

拠点となるマップ(牢獄の間)ではガイド役のエメルダから助言を貰えるので、進行に迷ったときは頼りにするといい。最初のダンジョンはほぼ一本道に近い構成なので、いきなり迷う事はないだろう。

隠し扉

ゲーム紹介にある通り、この作品にはとにかく隠し扉が多い。
序盤の隠し扉は不自然な窪みや亀裂などわかりやすいが、後半になると地形を注意深く観察する必要がある。

逆に言うと「なんかここおかしいな?」と思う場所は高確率で隠し扉が存在するので、このゲームの作りこみの凄さに驚く。

後半のダンジョンを抜けた先が一度訪れたマップに繋がっていることもあり「ここに繋がってたのか!」といった新しい発見が楽しめるのもこのゲームの醍醐味である。

残留思念から隠し扉のヒントが貰えることも

たまに意地悪な隠し扉も存在するので、すべてを網羅するのは至難。
幸い、隠し扉が見つけられなくて進められないということはなく、重要なアイテムは必ずゲーム中に情報が示されているので、ノーヒントという訳ではない(逆に言えばヒントを見逃すとどうしようもないが…)。

重要な情報はこまめにチェックしよう

DE版では重要な情報や鍵のかかった扉の情報は逐一記録されるので、非常に遊びやすくなっている。特に鍵の扉の場所はすぐ忘れてしまいがちなので、このようなサポート機能は非常にありがたい。

戦闘

本作のバトルはオーソドックスなコマンド式。複雑なシステムもなく、RPGツクールに触れた方なら特に迷う事もないだろう。

強いて言うなら状態異常の数がかなり多い。装備品だけですべて賄うのは厳しいので、回復アイテムや治療できる仲間の確保は必須。
逆に言えば対策を立てることで、ボス相手でも安定して勝てるバランスとなっている。

ボスはなんかしゃべる

このようにボス攻略には戦術の構築が必要ではあるが、レベルを上げてゴリ押しするという手段も残されてるので、ボスが強すぎて進めないというケースは少ない。

場合によってはボス敵もスルー出来たり、逆に探索が面倒ならボスを撃破して突破するなど、ゲーム攻略の方法がいくつか用意されてるのがすばらしい。


このように攻略の自由度の高さが本作の魅力である。
事実として、この自由度の高さはプレイングが雑な自分にも非常にマッチしていた。

「探索ゲーってちょっと苦手なんだけど…」と敬遠してしまっている方にもぜひプレイして頂きたい作品である。

ちなみに本作は有料版([DE:])とフリー版が存在しており、この記事は有料版を元に書いている。両者の細かな違いは公式の紹介を見る方が早いが、やはり遊びやすさ情報量が充実した有料版をおススメしたい。
(フリー版のセーブデータは引き継げるそうなので、軽くフリー版を触れてから移行するのもいいと思う)

しかし公称プレイ時間が50時間越えということもあり、膨大な探索要素が苦痛に感じる時もある。程々に休憩を取りつつ、心身ともに負担にならない程度でプレイしよう(自分は一気にプレイしたが…)。

そんなわけでゲーム紹介は程々に、本作をプレイした感想を書いていく。
ここから先はネタバレしかありません。




ゲーム全体の所感

正直語ることが多すぎて何から書こうか悩むのだが、まずはプレイを終えた率直な感想を語っていこうと思う。

クッソ面白かったですわ~~~!!!

思わずお嬢様口調が飛び出るほどの面白さ。
ベータ版プレイの経験から作品の面白さは事前にわかっている状態でプレイした訳だが、それでもなお面白いと断言できる満足度だった。

このFanastasisという作品はダークファンタジーに分類されるジャンルだが、その陰惨たる世界観はとにかく群を抜いている

本作の舞台となる「カノン王国」はゲーム開始時点で既に崩壊しかかっており、生きている人間にはほとんど出会えない。それどころか、あらゆる場所で魔物や悪魔が闊歩する暗黒の世界である。

そんな闇に覆われた王国を旅するのはメンタル的にもきつく、ダンジョン攻略の難易度も相まってプレイヤーの神経は徐々に削られていくだろう。

本作を象徴するようなダンジョン(一例)

それでもなおプレイするモチベーションが保てたのはやはりストーリーが非常に面白かったからに他ならない。断片的な情報から世界観を掴んでいく体験は非常に面白く、プレイ後は長編小説を読み終えたような読了感があった。

複雑な世界観かつ様々な情報を一つの作品に収めたのはお見事。
類似するジャンルの作品はいくつかあるが、本作はそういった作品の中でもひとつの完成形であると思う。

ダンジョン語り

やはりこの作品の肝は探索である。
特に印象的だったダンジョンについて語っていく。

メゼスタ湿地帯

シンプルにきつかったダンジョン。
敵を回避するには蓮の上を通る必要があり見た目に以上に進行しづらい。単純に広い上、似たような風景が並ぶので非常に迷いやすくかなり苦労するマップ。

パット見だと歩ける場所が視認しづらい

重要アイテムの存在やマップ自体が様々なダンジョンと隣接しているため、何度か往復する必要がある。敵が出現するギミックも相まって、このマップでメンタルを折られた人も多いのではないだろうか。

本作随一の鬼畜ギミック

ストーリー上重要な場所という訳ではないのだが、二度と来たくないダンジョンという意味では非常に記憶に残った場所である。

カノンの柩

みんな大好きFanastasisのテーマパーク
大半のプレイヤーはこの場所に至るまで死体と墓の山(ダーカス墓地)を越えてきている筈だが、本当の地獄はこれからである。

なぜ墓場の奥にこんな建物が? 妙だな……

名目上は罪人の収容所だが、実際は王国の実験場(それも非人道的な)。
その様子は残留思念という形で垣間見える。この拷問描写が非常に丁寧で、単に肉体的に痛めつけるだけでなく、後半に行くほど精神的に追い詰めるようなやり方が見られるようになる。

この仕事ぶりは間違いなくプロのやり口なので、このダンジョンを作った方は非常に研究なさったのではないかと想像します。

我々の業界でも拷問です

ダンジョンの難易度は本作の中でも上位。
プレイヤーを追い掛け回す番犬や悪魔、炎と鈍足トラップなど殺意の高いギミックも相まって、多くのプレイヤーの印象に残るダンジョンではないかと思う。

セナの魔術学院

前半部の終盤で訪れるダンジョン。かつてあった悲劇を想起させるような物悲しいBGMが印象的。

帝国の襲撃をダイレクトに受けた場所であるためか、戦の爪痕が数多く見られる。そのためダンジョンのギミックよりも残留思念たちが印象に残る。

特にこれまでの残留思念は火事場泥棒みたいな奴のほうが多かったので、ひたむきに魔術に打ち込む学徒たちの様子を見た時は心が痛んだ。

教授と生徒のやり取りは涙を禁じ得ない

主人公や仲間たち(サーシャとクレスト)のかつての学び舎でもあるため、ストーリー的にも重要な場所。第三者視点で語られる仲間の描写は当時の学生生活の様子がなんとなく察せられる。

モブの容赦ないセリフは妙にリアリティがある

建物が複数存在するのでマップは思ったよりも広い。
マップ構造はそこまで複雑ではないが、実は色んなダンジョンと繋がっており、ゲーム攻略中は何度か訪れた場所だったので、けっこう印象に残ったダンジョン。

悪魔街

表ストーリークリア後に訪れるであろうマップ。
本作では貴重な街(悪魔しかいないけど)で敵も出現しないが、探索に苦労したマップトップ5くらいに入る

カノン王国リスペクトかと言わんばかりの隠し扉

一見小さい建物が乱立してるだけのマップに見えるが、構成の複雑さと隠し通路の多さの詰め込み具合がおかしい。建物の中に入ると自分が何処にいるのかわからなくなるレベルで、自分は小一時間ぐらい彷徨うハメになった。

実際はショートカットもあるのでスルーしても問題ないが、住人から本作の世界観に関する情報が沢山聞ける。わりと重要そうな設定が盛りだくさんなので、ストーリー重視派は目を通しておきたい場所である。

人間との取引のため、せっせと食料を備蓄してたりする(なんかかわいい)

悪魔たちの態度は皆紳士的で、対価さえ払えばプレイヤーにも益となる取引が行える。

「魔界って怖い所かと思ってたけど意外とそうでもないじゃーん」と初見ではそんな感想を抱いたが、物語終盤で衝撃の事実が明かされるので、やはり悪魔はどこまで行っても悪魔であることが思い知らされる……。

王国防衛協会

アズラン撃破後、魔術学院を越えて最初に訪れたマップ。
防衛協会と名の付く通り、あらゆる場所で屈強な戦士たちが待ち構えている。

敵の視界に入ると猛スピードで追いかけてくるので真正面から突破するのは骨が折れるが、背後から接近すると戦闘をスキップして敵を倒すことができる。

初回プレイは全員背後から〇しました

これまでのダンジョンは避けゲーを強いられる作りばかりだったが、このダンジョンは能動的に敵を撃破していく面白さがあり、追加シナリオの中でも特に楽しめたマップだった。

別に三兄弟とかではない

ダンジョン奥で待ち構えるボスは今作屈指の難敵。
とにかく攻撃が激しく、対策を万全にしても苦労した(一応スルーできるがワイは戦闘狂なので倒したぜ)。

ミルトン河

カノン王国を縦断する河。川に流れる清流はカノン王国の発展に寄与しているなど、設定上でも重要な場所。この川を中心にミルトンやほかの街などが建てられているので多くのマップに隣接している。

イカダを入手した時はミルトン河経由で様々なマップに移動できたので探索ゲーのプリミティブな面白さが味わえた。

イカダを手に入れた時の解放感!

ミルトン河は上流・中流・下流とマップが分かれているので本作でもけっこう広い方。
(おそらく)マップはカノン王国の地形全体を意識して作られているので、それぞれのマップがどの場所に位置しているのか想像してみるのも面白い。

罪人の血すらも浄化する

河を中心に文明が発達するというのが歴史の定番だが、河の清流が処刑人たちの清掃場として利用されているあたり、この国の終末感をよく表している。

しかも処刑人の街は河の上流なので、下流に住む貧民街の人間は割を食っている気がしないでもない。とことん弱者は虐げられる世界観である……。

奉竜殿(伏龍殿)

カノンの柩よりヤバい所なんてもう来ないやろ……と思ってたところに叩きつけられるダンジョン。

竜を崇めるため火山の中に建てられた神殿。
このゲームは氷ダンジョンや炎のダンジョンなど、ファンタジーの定番どころは押さえてあるのがいいですね。

溶岩の中でも敵は容赦なく追いかけてくる

難易度は間違いなく本作トップ。事実上本作のラストダンジョンと言って差し支えない。
単純な広さだけでなく、進行ルートも複数存在するので非常に迷いやすい。

火山の中なので当然マップの大部分が溶岩地帯になっている。ちょっと手元が狂うだけでマグマにダイブしてしまうのが恐ろしい。

まさかのカノンの柩の再来

極めつけはこの奉龍殿でも非人道的なことが行われていた形跡があり、強制的に竜化させられた残留思念たちが見られる。その残忍さ・悲惨さはカノンの柩を思い出した人は多いだろう。

しかもこの場所、カノンの柩とマップが接続している。洞窟がつながってしまったのは偶然だと思われるが、巡り回ってこの伏竜殿に出てきてしまうのはなんとも因果なものである……。

カノン王国全体

地図職人の理智を入手することでカノン王国の全体マップを見ることができる。探索が便利になる等の効果はないが、それぞれのマップの位置関係が判明するので出来れば取得しておきたい。

牢獄の間のワープポイントの位置は現実世界とリンクしていそうだが実際は全く異なる。特にマージベルクやイシュトールの位置は北の方ではなく南東に位置するのでわりと勘違いしやすい。

地理を頭に入れておくとカノン王国の歴史が理解しやすくなる。
個人的にはかなり重要な理智だと思うのだが、わかりにくい場所に落ちてるので(雪原の端っこ)できればもう少しわかりやすい所に欲しかった……。

仲間キャラクター

よく使用したキャラ

本作の仲間は17人おりRPGにしては多め。
そのためスタメンはほぼ固定で、ボスによってたまに編成を変えて(もしくは気分で)ゲームは進めた。

控えメンバーは経験値が入らないのでレベル差が開いてしまうが、主人公のレベル近くまで上昇させるアイテムが沢山手に入るのでその点は問題ない。

前半部の主力メンバー

だいたいの敵は魔法3属性に弱点を持っているので、魔法系のキャラは使いやすい。そのためアイーシャ・ルピ・クレストは安定して強いアタッカーだった。

たまに状態異常をバラまいてくるボスがいたので、そのような場合には耐性スキルを持つナオミが重宝した。ボスによってはナオミがいるだけでほぼ完封できる。

攻撃の激しいボスに対してはタンク役のバクホリが非常に心強い。
他にもタンク系のキャラはいたが、自分の場合は耐性を固めたバクホリだけで解決した。

仲間キャラ雑感

さすがに全キャラは使い込めなかったので印象に残ったキャラだけ。

ルピ

雷使いのケモミミ魔術師。かわいい。
敏捷が高いスピード系のアタッカーで雑魚・ボス戦問わず活躍した。最初に加入した魔法使いポジションだったので付き合いが長く、わりと思い入れ深いキャラ。

盗賊団の頭兼ケモミミ魔法少女という本作にしては珍しいキャラ付けで、初プレイ時は「吸血鬼とかいるしそういう奴もいるやろ…」とあまり気にしなかったが、彼女の出生の謎はちゃんと後半で明かされる。

記憶の間の語りでは盗賊団時代の話しかしないので、自分の能力についてどのように思っているのか謎だったが、とあるボスの撃破後の台詞を見る限りあえて考えないようにしていたと思われる。

ルピが好きなら見ておきたい台詞

盗賊団の面々はケモミミのお頭についてどう思ってたのか若干気になるが、残留思念の台詞を見るとサプライズパーティーとか企画しているぐらいだったのでおそらく慕われていたのだろう。かわいいからね。

アイーシャ

炎の魔術師(処刑人)。
この世界は例によってゾンビだらけなので炎属性アタッカーというだけでアドバンテージがある。火力も純粋に高いので扱いやすいキャラクター。

わりと序盤から仲間にできる位置にいるのだが、自分がプレイした時普通にスルーしてしまったので仲間にしたのはかなり後半だった。

ちょうどシレンスに入った時は炎弱点の敵が多かったので、後半ではルピに代わりアイーシャがスタメンになった。

記憶の間のマップは現実世界と全く同じ構成

処刑人の村という特殊な環境で育った子だが、故郷の家にはアクセサリーやスイーツなどが残っていた所を見ると等身大の少女であったと思わされる。

とはいえ人の死に関わる仕事を淡々とこなしつつも、真っ当な感性を保ち続けていたのはある意味異常なのかもしれない。事実、他の村人からは異端児として扱われていた。

処刑人の翡翠が彼女の家には無かったのも一族から認められてなかった可能性がある(死亡扱いとされて取り上げられた後なのかもしれないが)。

仕事をこなしているだけなのにあんまりな物言いである

親友思いな面や周囲の環境にめげずに処刑人の誇りを全うしようとするなど、なかなかロックな生き様なキャラクターだなという印象を受けた。

ベータ版プレイ時はほとんど使わずあまり記憶に残ってないキャラだったが、追加ストーリーで彼女の故郷が登場し掘り下げが進み、様々な一面が見れて好きになったキャラクターである。

バクホリ

男気溢れるナイスガイ。バクホリという名前はあだ名だが彼の特徴と非常にマッチしている。

戦闘訓練を受けたことはないので、彼の戦闘スタイルは完全にフィジカルだけを活かした戦い方である。
「盾になるくらいは出来るぜ」と言い放つのはストレートにカッコいい。

モブキャラ臭が漂うグラフィックだが、実際、特別な出自などなく完全な一般人である。特殊な生まれや悪魔と取引した者など訳アリな仲間が多い中、単なる鉱山夫という立ち位置は逆に異彩を放っている

バクホリバスターとは一体なんなのか
我々オータス調査隊はミルトン河の奥地へと向かった…

比較的序盤から仲間になるタンク役でそれなりに長くお世話になったキャラ。耐性を持つ装備を整えれば大抵の攻撃には耐えられる。特に食いしばり系スキルなどは要所で役に立った。

勘は働く方で、王国のキナ臭い秘密を避けるように行動していたが、仲間思いな性格が災いして知ってはいけない秘密を知り、結果的に命を奪われることになってしまう。完全な被害者である。

つよい

因縁のあるボスに対しては相手の事情を察しつつも、気持ちの良い言葉を放ってくれる。

仲間キャラはだいたい拗れた奴ばかりなので、竹を割ったようなさっぱりとした性格は本作の清涼剤のようなポジションだった。

ロザリンド

狙撃手の老兵というなかなか渋いキャラクター。バックボーンも薄暗く、彼女の人生は挫折と苦難に満ちている。

狙撃手らしく自身に対するターゲッティングを逸らす技に長けているが、被弾するとあっさり落ちるなど脆さが非常に目立つ。

アイーシャ同様ベータ版ではまったく使わなかったキャラだが、実際に使ってみると頼れる物理アタッカーだった。耐久力は低いのでそのあたりはタンク役でカバーしよう。

人の心とかないんか?

カノン王国の闇の犠牲になったキャラクター。
優れた能力を持ちながらも他者の嫉妬と悪意によって人生を歪められ、仕舞いには王国の道具として利用されるというのはあまりにも報われない。

彼女が所属していた暗殺部隊の隊長はカノン王国の要人だったらしいので、国の根深い所まで闇に染まっていたことが伺える。

かつての上司に対して「こんな国滅んで正解だったんじゃね」という旨のコメントをしてるが同意せざるを得ない。

マカブレ

毒の扱いに長けた錬金術師。
でかい鎌を持った仮面ローブというものすごく怪しいビジュアルだが、中身はいたって真っ当な人物。まあ錬金術師の局長も同じような風貌だったので錬金術師はみんなそんな感じなんだろう。たぶん。

デバフとスリップダメージ特化という癖のある性能だが、デバフはボスでも有効なので特性を理解すれば頼りになる。防御面も並以上かつバステに対する耐性持ちなので、状態異常をバラまく敵が多い本作では安定して戦えるのが魅力的。
ついでに言うと筆者はデバフ大好きマンなのでスタメン採用率が高かった。

やだ…かっこいい…

生い立ちの話を見ると人付き合いは苦手だが、生真面目で向上心のある性格であることが伺える。軟弱な身体では錬金術の研究などできん! という事でわざわざ身体を鍛えていたそうなので、意外とHPが高いのはそのせいなのかもしれない。
ついでに毒の研究のため自分の身体で実験しまくってたそうなので、なんだかんだ狂人寄りの人ではある。

わりと黒幕サイドの人間だと疑っていたのだが、まったくそんなことはなく最期まで正義感で動いていた人格者。いろいろ疑ってすみませんでした。

サーシャ

支援特化の魔術師の女性。
歴戦の猛者みたいな風貌の女性が多い中、神秘的な雰囲気を纏ったビジュアルをしている。

味方に強力なバフをかけられるが、自分は対象にできないという弱点を抱えている。攻撃スキルは自力で覚えないが、理智アイテムや装備でカバーできるので運用次第では十分使える性能。

大魔術師バルロックの娘という設定的にはかなり重要そうなポジションだが背景はいまいちパッとせず、挫折で酒に逃避してしまうなど妙に人間臭いところが魅力。

めっちゃ感情込めて喋ってそう

特に記憶の間では学院時代のいけ好かない男クレストに対してボロクソに言いまくっており、自身の挫折の切っ掛けになったことは今でも根に持ってそうではある(別に彼に非はないのだが…)。
このへん仲間になった後はどんな会話をしているのか気になる。

おそらく偉大な親を持ったプレッシャーと自分の血(竜)に振り回されて本来の力を発揮できなかったのだと思われる。

自身の血を受け入れられるのは物語終盤

しばらく道を見失いかけていたが、バルロックの言葉によって自身の役割を見つけ支援術師として自警団に入団。最後は自身の命を燃やしつくすまで支援魔法を使い続けた。

寿命が尽きるまで研究に没頭した父の最期を考えると、使命感が強い所は似た親子であると思わされる。

クレスト

氷属性の魔術師。真面目そうな性格だが謎の仮面を付けるなどファッションセンスが独特。
海底トンネルの奥まった場所で倒れてるので、地味に見つけ辛い位置にいる。役割はアタッカーだがフロスト状態限定の状態異常や強化解除など、ほかの魔法使いポジションよりもやれることが多い。

本作の黒幕アズランの息子かつエメルダの兄というかなり重要なポジション。だが実際はアズランとほぼ無関係の状態で育ったので、本作の黒幕サイドとは遠い位置にいる(アズラン自身、別れた妻と子は関わらせるつもりがなかったのかもしれない)。

しかしクレストは母と自身を捨てた父を恨み、手掛かりを探すため魔術学院に入学する。
国の権威ある学院に入学しサラッと首席を取っているあたり、かなり頭脳明晰であることが伺える。そのせいでサーシャが自信を失ってグレるのだが、当の本人はその事に触れてないあたり、彼女のことはまったく眼中になかった可能性がある。なんという罪な男。

学生時代の思い出(セリフ2行)

しかし生前の行動はわりとぶっ飛んでおり、妹の消息を追うために海底トンネルの穴に単身でダイブして命を落とすなど、他キャラとは別ベクトルでロックな生き様をしている(まあ本人もヤバいことをしてる自覚はあったようだが)。

本作の仲間キャラはだいたい何かしらの理由で命を奪われてることが多いのだが、クレストの場合単なる自滅なので死に様も異彩を放っている。
彼を突き動かす衝動はすべて家族によるものなので、良くも悪くも肉親に対する情が強いのかもしれない。

彼の魔術のルーツが判明するのは嬉しかった

ちなみに彼の代名詞である氷の魔術はアズランも得意としており、細かい所で血筋を感じられる(実際ボスとして使ってくるスキルも似通っている)。
カノン王国でも氷の魔術は珍しいらしく、そのルーツを辿ると王国の閉ざされた歴史が垣間見える。

こうして振り返ってみるとさまざまな重要キャラクターと結びついており、なかなか味わい深いキャラクターだった。

バルロック

王国を代表する大魔術師。
本作でも特に重要なキャラクターで、王国の発展から暗部まで様々な所に影響を与えている。クレストを遥かに凌ぐ天才だが物忘れが激しく、探すのがめんどくさいという理由で魔法鍵を勝手に増やすなどどこか抜けている。

このように仲間になる前から情報が多い人物で、実際に仲間になった時はおおっ! となるが、ネズミ姿で登場するせいでプレイヤーは情報量の多さに混乱する

意味深なセリフと共に仲間になるネズミ男

耐久力が壊滅的な代わりにMPと魔力は凄まじく、本作では貴重な全体魔法が扱えるなど、まさしく大魔術師にふさわしい性能。しかし魔術の行使にはSPが必要であるため、雑魚戦ではやや扱いにくい。
この小回りの利かない性能はしっかりと娘にも受け継がれている

作中でもかなり真っ当な人物で、王国の未来のために尽力する人格者。
…なのだが作中の実績はあまり芳くなく、彼の才能が悪い方面で活かされてしまっている。

本作の元凶とまではいかずとも放魔のシステムを作った張本人なので、評価が難しいキャラクター。せめて帝国の襲撃前に国民を安全な場所に避難させる方法はなかったのか…など色々考えさせられる(一応新王都のアルカムは守護されているっぽいが)。

自ら王国を滅ぼすことになってしまった彼の心境は如何に

色々なヤバい発明を沢山しているあたり、人格者である前に研究者の側面が強かったのだろう。現実でも科学の発展と倫理は常に危ういバランスで成り立っている。本編で描写されるバルロックの姿はあくまで彼の善性の一側面にすぎないのかもしれない。

欲を言うと関係が深かったアズランや娘のサーシャに対するコメントをもう少し見てみたかったなーと思ったり。

色々と取り留めない語りになってしまったが、それだけ考察し甲斐のあるキャラクターである。

その他重要人物

エメルダ

本作のキーキャラクター。
ヒロインのような立ち位置だが実際は黒幕サイドの人間で本作の元凶アズランの娘。父の野望を成就すべく「聖人」を復活させるためだけに行動している。アレフレッドの母を暗殺した張本人なので主人公にとっては仇となる。

彼女の日記には悲痛な思いが綴られている

しかし内面は年相応の少女であることが彼女の日誌を読むとわかる。
アズランの教育で自らの使命は理解していたと思うが、マージベルクの生活を通して生きたいという原始的な欲求が芽生えたのかもしれない。

その境遇からなんとかスピリットとして復活させたかった気持ちもあるが、ストーリーを考えると彼女を救済する展開は難しかったのかなと思う。

アズラン

本作の黒幕。カノン王国復興のため様々な策謀を巡らせる。

さまざまな手記と日誌から読み取れる人物像は、非情さを持ち合わせつつも、行動力・政治力が高く忠義に篤い家臣といった感じだが、やってることは倫理的に色々アウトなのであまり擁護できない。
せめてその忠誠心をもう少し身内に分けてやれなかったのか…

アズラン撃破後にこの手記が出てくるのもまたニクイ

高い権力を持った人間が誤った方向に力を振りかざすとロクなことにならないという典型例。帝国の襲撃に対抗するためにやむを得ず放魔を行ったとのことだが、そもそも原因を作ったのはこいつ自身なのでわりと自業自得である。

プレイヤー目線だと諸悪の根源にしか見えないが、アズランに従う者や協力者が多かったところを見るに、人を惹きつける能力は高かったのだろう。やり方はともかく、前妻(クレストの母)やバルロックは彼の意思に賛同してたっぽいし。

カーミラ曰くいけ好かない男
この血筋はそう呼ばれる運命にでもあるのか

アズランと手を組んだ異種カーミラは古いしきたりに縛られる一族を嫌って行動を起こしていた。彼も王家という枠に囚われずに国を存続させる方向で動いていれば違った未来もあったかもしれない……。

バビロン

本作のトリックスター的な存在。
チュートリアル系のキャラかと思いきや、実際はアレフレッドにも関わりの深いキャラだった。こういうプレイヤーの予想を裏切ってくる展開はいいですね。

元人間の悪魔であり、その行動原理は自分の知識欲がすべて。悪魔になった後ヒャッハーしてるあたり、たぶんこの暗黒の世界を一番謳歌している人物ではないかと思う。

アレフレッドが聖人になる切っ掛けを作ったキャラだと判明した時は非常に驚いた。学校のロッカー室の奥で少年に言い寄るオッサン(同世代)という構図は色々とアブナい。見方を変えれば悪魔の誘惑と言うべきなのかもしれないが。

この面でアレフレッドと年が近いってマ?

バビロン自身も異種のハーフらしいが、そうなると一体親は誰なのかという疑問が残る。アレフレッドと近い世代なので、王国が異種狩りをやめた時期になんか色々あったのかもしれない。

アレフレッド

本作を語る上で欠かせない人物。
主人公と言っていいのか判断が難しいので、あえて仲間キャラではなくこちらに項目に持ってきた。

作中でもたびたび言われているが狂人という表現が一番似合う。しかし、それに至るまでの過程を考えると同情する余地はある。

ベータ版時点では描写が少なく人物像が見えにくかったが、「心の奥」の描写やアイテムとして入手できる「アレフレッドの心」を見てかなり印象が変わったキャラクターだった。

ここのアレフレッドくんかわいい

プライドが高く野心家だが、本来は情のある人物だったのだろうと想像する。家庭内の不和や学院でのいじめ、異種のハーフであることの疎外感が彼の性格を捻じ曲げてしまったのだろう。

やり方を間違ってしまったが「母の記憶」や「無口な男の記憶」の彼の発言から、その行動の根底には自分の居場所を作りたいという気持ちがあったのだと思う。

バルロックの事は先生と慕っていたので、周囲とうまく関係を築くことができれば……と思ってしまう。娘のサーシャとか話が合いそうな気がするけど、生まれた時期が違いそうだしな……。
せめて彼と向き合ってくれる者が偏執狂以外にいてくれればよかったのだが。

異種との混血児なんて間違いなく周囲と軋轢を生む原因になるだろうに、父親ももう少しフォローしてやれなかったのか。まあ仕事第一の人っぽい雰囲気だったしね…。

……とまあ、救われる道がなかったのかと色々想像してしまうキャラクターでした。

聖人アマタ

ようやく主人公について語れる。
アレフレッドの項目で語るのは違う気がしたので別枠にした。物語の前半部でアレフレッドの魂と同化するが、肉体の主導権は聖人側にありそう。

本作の貴重なヒーラー枠だが、RPGでは定番の「ヒール」が彼しか使えないのは聖人の力を持っているからだろう。この辺の設定は非常に巧いと思った。

記憶のオーブで覗ける過去を見ると、正義感に満ちたキャラクターに見えるが、アレフレッドの心から見れる評価は偽善と自己欺瞞など散々である。

まあ実際プレイヤーすら欺くのはタチが悪い…

聖人の心の内は直接的な描写が少ないが、アイテム欄の説明文などで色々想像できる。心の変化が「XXの心」という明確な形でアイテム欄へ現れる演出は面白かった。
終盤、アイテム欄にアレフレッドの心が現れたのは、聖人が初めてアレフレッドに近づけたのではないかと思う。

作中のやらかしが大きかったせいか、度々ストーリー中で「自〇END」が登場する。いくら記憶を作り変えてしまうとはいえ、良心の呵責に耐えられなかったのだろう。

そう考えると、本作の行動できる範囲が死体だらけの場所だったのは、単にゲーム的な都合だけでなく、アマタが生者と向き合うことを恐れていたからなのかもしれない。

本当は結界など存在しない

そんな聖人アマタの心が救われるには、自身に宿るもう一つの魂アレフレッドの心が必要である。

この演出には鳥肌が立った

様々な罪を重ねることになってしまった聖人アマタ。
そんな彼が過去の清算を終え、最後に辿り着いた場所がいにしえの都イシュトールというのは、物語としても非常に美しい流れだった。

レジテニーヌ卍

本作のかわいそうな人ぶっちぎりNo.1
描写はだいぶマイルドにされてるが、繁殖池は本作屈指の鬼畜ゾーン。登場シーンはわずかだが、無間地獄に囚われていた姿は多くのプレイヤーの印象に残したであろう。

聖人の末路の姿を見てアレフレッドは何を思うだろうか。やっぱり悪魔と取引なんてするもんじゃないね!

なんだこれは…たまげたなぁ…

聖人になる前の人物像があまり出てこないので、生前はどんな人物だったのか色々と想像の余地がある。

作中の描写から同情心を誘うが、本作の人間はだいたい何かやらかしてるのでこの人はこの人で何かやってそうな気もする。

さいごに

クッソ長い記事になりましたが、これでも語りたい内容は半分にも満たない気がします。それだけ濃厚で魅力的な世界観でした。

本作の好きなところは真の黒幕(ラズィア)を倒して終わるのではなく、その後世界各地を歩き、自分の落ち着ける場所を探して物語が終了するところです。

あえてエンドロールが存在しないのは、この旅を終えるのはあくまでプレイヤー自身であるというのがこの作品のメッセージなのではないかと想像します。


冗長な語りはこれくらいにして、最後に本作の一番好きな場面を貼って終わろうと思います。

「私の故郷と同じ あの海を見ると 心が落ち着いてくる
波の音 潮風の香り どこまでも広がる青い空
そのすべてが 今は懐かしい」

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